2018年11月16日

「iFree」シリーズ2ファンドの信託報酬が引き下げへ―2強体制に“待った!”をかけることができるか



すでにTwitterやブログでも話題になっていますが、大和証券投資信託委託が低コストインデックスファンドシリーズ「iFree」の2ファンドの運用管理費用(信託報酬)を引き下げると発表しました。

運用管理費用(信託報酬率)の引き下げについて(大和証券投資信託委託)

インデックスファンドの低コスト競争は、いち早く自律的に信託報酬を引き下げ続けるニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>」シリーズと、それを追いかける三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」シリーズの2強体制となる気配だったのですが、大和証券投資信託委託も「iFree」を擁して競争から撤退しないという意思を見せたと言えそうです。はたして2強体制に“待った!”をかけることができることができるでしょうか。

プレスリリースにあるように今回、信託報酬が引き下げられるインデックスファンドと、引き下げ後の信託報酬(税抜)は以下の通りです。

「iFree 日経225インデックス」(信託報酬:0.159%)
「iFree TOPIXインデックス」(信託報酬:0.159%)

日経平均とTOPIXに投資するインデックスファンドとしては、いずれも国内最安値の水準となります。「iFree」シリーズはネット証券だけでなく店頭販売中心の大手証券・中堅証券、そして地方銀行でも幅広く販売されていますから、そういた販路でも最低水準の信託報酬となるインデックスファンドを購入できるようになる意味は非常に大きいと言えそうです。

幅広い販路を持つインデックスファンドが最低水準のコストを追求することには、もうひとつ意味があります。現在、インデックスファンドの競争を牽引している「<購入・換金手数料なし>」シリーズと「eMAXIS Slim」シリーズは、いずれもネット証券を主要販路としています。ここに店頭での豊富な販路を持つ「iFree」が加わることで、2強体制に割って入る可能性があるのではないでしょうか。

インデックスファンドやETFというのはある種の装置産業ですから、規模の経済が働きやすい金融商品です。このため基本的に寡占が進みやすい。実際に米国のETF市場などは、ブラックロック、バンガード、ステート・ストリートの3強体制となっています。恐らくインデックスファンドやETFの市場で一定規模以上のシェアを持って生き残ることができるのは3社程度が限界なのでしょう。そう考えると、米国よりもさらに規模に小さい日本のインデックスファンド・ETF市場で3つ以上の商品シリーズが生き残ることができるとは思えません。

つまり、現在行われているインデックスファンドの低コスト競争というのは、そういった限られた椅子の取り合いなのです。そして、どうやら2つは埋まりそうな気配です。問題は、3つ目の椅子に誰が座るのか。今回の信託報酬引き下げで、「iFree」もまだまだ競争からは撤退しないし、3つ目の椅子を果敢に狙っていくという姿勢を見せたことは注目に値するでしょう。そして、店頭を含めた販路の多さというのは、十分にそのポテンシャルを秘めているのです。

また、2強体制でなく3強体制となることは受益者にとってもメリットがあるでしょう。2強体制というのは寡占の最終形態であり、限りなく独占に近づきます。独占となれは、おそらく競争も終焉する。一方、3社体制というのは規模の経済を維持しつつ、競争も継続されやすい形態です。諸葛孔明の「天下三分の計」ではないですが、安定と発展を両立しやすいのです(だからかもしれませんが、国も通信などインフラ分野では3社体制による競争に誘導する場合が多い)。

こうしたことを考えても「iFree」の信託報酬引き下げというのは、非常に好ましい動きだと感じました。その上で敢えて注文を付けるとすると、ぜひコスト引き下げを今回の2ファンドだけで終わらせてほしくない。とくに「iFree」シリーズ全体の純資産残高増加を牽引しているのは「iFree NYダウ・インデックス」「iFree S&P500インデックス」「iFree 8資産バランス」などです。ですから、こうした人気商品も含めて、シリーズ全体での低コスト化にも挑戦してほしいと思います。

関連コンテンツ