2018年9月30日

「投資」と「投機」の違いを見分けるポイント



投資について考える場合、よく「投資」と「投機」の違いが話題になります。何が「投資」で何が「投機」なのかというのは難しい問題で、人によって諸説あります。そんなとき、「投資」と「投機」の違いを見分けるポイントとして有力な考え方に「期待値」というものがあります。基本的に期待値がプラスのものにお金を投じて利益を出そうとするのが「投資」、逆に期待値がゼロもしくはマイナスのものにお金を投じて、そこから利益を得ようと考えるのが「投機」というわけです。

「期待値」というのは、確率変数の実現値を加重平均した値です。こう書くとなんのことか分かりにくいのですが、ピクテ投信投資顧問のサイトに非常に簡便で分かりやすい解説があります。

実践的基礎知識 役に立つ平均編(6)<期待値>(ピクテ投信投資顧問)

この期待値という概念を理解すると、「投資」と「投機」を見極めるポイントも分かってきます。ピクテの解説では次のようにまとめています。
投資とギャンブルの最大の違いは、投資は「期待値」が投資額よりもプラスになると考えられるものにお金を投じるものであり、ギャンブルは「期待値」が賭け金よりマイナスになると考えられるものに お金を投じるものであるという点です。
だから例示されているように、宝くじはギャンブルです。同じように主催者が徴収するテラ銭が発生するパチンコや競馬も期待値が掛金よりもマイナスになるのですから、ギャンブルです。もしかりに主催者の手違いで期待値がプラスになるような宝くじが発売されたら、それを買うのはギャンブルではななく、立派な「投資」となる(それを本当にやったのが、かの有名なヴォルテールでした)。

このように「期待値」ということを考えると、「投資」と「投機」を見分けるポイントも見えてくるでしょう。投じた元本に対して期待値がプラスになるものに資金を投じるのが「投資」、逆に期待値がマイナスになるにもかかわらず、ボラティリティのタイミングで利ザヤを得ようとするのが「投機」となるわけです。ただ現実の投資・投機の場面では、宝くじやパチンコと違って、資金を投じる対象の期待値がプラスなのかマイナスなのかが確定しているものは少ない。そこに「投資」と「投機」を見分ける難しさがあります。結局、理論や過去のデータに基づいて期待値を想定するしかありません。

例えば株式はどうでしょうか。これは理論上も過去のデータからも、いまのところ株式市場全体では期待値はプラスで推移しています。ですから株式に資金を投じることは、それが長期だろうが短期だろうが「投資」だと考えてよさそう。債券は高格付けになるほど明確に期待値はプラスとなります。不動産も利用価値のある土地は期待値がプラスとなるはずです。

一方、FXはどうでしょうか。これも諸説あるのですが、理論的には異なる通貨の交換というのは等価交換が原則となっていますから期待値はゼロです。そしてFXなどの場合、手数料の分だけ期待値はマイナスとなる。このためFXのように為替で利益を得ようとする行為は投機と考えることができます。仮想通貨にいたっては、はたして等価交換が行われているのかすら疑わしい。そうなると期待値は想定不可能であり、もしかするととんでもなくマイナスの期待値となっているかもしれません。

もちろん、投機やギャンブルが悪いというわけではありません。それは人間社会が生み出した素晴らしい遊びであって、文化です。だから、やりたい人は大いに楽しめばいい。ただ、気をつけなければいけないのは、「投機」を「投資」と誤解させて投資家を誘い込み、手数料やテラ銭を掠め取ろうとする業者の存在でしょう。ですから、儲け話があったときは、常に期待値というものを考える癖をつけるのは大切なことです。それはできれば、それこそ真面目に「投資」して、楽しく「投機」もできるようになるのではないでしょうか。

【関連記事】
ヴォルテールに学ぶ頭の良い人の儲け方

関連コンテンツ