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2018年9月16日

セゾン投信の信託報酬は高くない―投資信託における付加価値について



自分が購入しているわけではないけれども、なぜか応援したくなる投資信託や運用会社というものがあります。セゾン投信もそのひとつ。そのセゾン投信がこのほど運用管理費用(信託報酬)を引き下げました。

「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」運用管理費用(信託報酬)引き下げのお知らせ(セゾン投信)

9月11日から「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」の運用管理費が従来の年0.68%±0.03%(税込/概算)から年0.60%±0.02%(同)に引き下げられました。このコスト水準をどのように考えるか。最近では、もっと低コストな類似ファンドが登場していますから。しかし、あえて言いたい。私はセゾン投信の信託報酬は高くないと思う。なぜなら、類似の投資信託と比較して、受益者に提供される付加価値の次元がまったく異なるからです。

「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」は、バンガードのミューチュアルファンドにファンド・オブ・ファンズ形式で投資するバランス型インデックスファンドです。プレスリリースによると今回の運用管理費用引き下げは、預かり資産が増加したことで投資対象をより低コストなファンドに変更することで実現したとのことです。ファンドの成長による運用効率化の成果をきちんと受益者に還元する姿勢は、やはりセゾン投信らしい良心的なものです。

ところで、最近では「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」よりも低コストな類似ファンドが登場してきました。インデックスファンドはコストの安さが最大の付加価値ですから、今後はセゾン投信も苦戦するのではないかという見方があります。しかし、私はそうは思いません。というのも、私が知る限り、セゾン投信のコストが高いと文句を言っている受益者は、ほとんどいないからです。逆に「身の丈にあった経営ができていて、コスト水準も十分に頑張っているレベル」といった好意的な見方が多い。

こうした見方は、ある意味で正しいと思う。実際にセゾン投信は企業として可能な限りの努力によって現在のコスト水準を実現しているからです。それは同社の財務状況を見れば一目瞭然です。例えば決算公告によると2018年3月期の業績は営業収益8億6100万円、営業利益2億1400万円、純利益1億9100万円。はっきりいって中小企業です。にもかかわらず、17年3月には自社の取り分である信託報酬を引き下げました。そして今回は手間を惜しまずに投資対象ファンドを変更することで、さらなるコスト引き下げを実現した。身を削り、手間を惜しまずに努力した結果が現在のコスト水準であり、ほとんどの受益者はその努力を高く評価しているわけです。

しかもセゾン投信は他の大手運用会社が提供する低コストインデックスファンドと異なり、情報発信など受益者へのアフターフォローの量と密度がケタ違いに多い。これはコストとは別の付加価値を提供しているということです。そういった付加価値が受益者の間で評価されているからこそ、受益者が他の低コストファンドに乗り換えることなく、セゾン投信のファンドは純資産残高を増やし続けているのでしょう。

そういったファンドと受益者のリレーションシップを「宗教だ」といって批判することは簡単です。しかし、セゾン投信が受益者に提供している付加価値は、イワシの頭ではないと思う。もっと質的な何かがある。この点については、以前にこのブログでも少し書いたことがあります(関連記事:セゾン投信の“強さ”の秘密)。

例えると、こういうことでしょう。大手運用会社が提供する低コストインデックスファンドというのは、いわば牛丼チェーンの牛丼です。これは素晴らしい商品ですが、味に大差がないため、吉野家に入るのか、すき屋に行くのか、なか卯か松屋で食べるのかを選ぶときに、値段の安さが最大の決め手になる。そうやって店を選ぶ客の行動は合理的なものです。

一方、セゾン投信は同じ牛丼屋でもチェーン店ではなく、地元の親父さんがやってる個人経営の店のようなもの。味は大手チェーン店と大差ありませんが、値段はちょっとだけ高い(それでも頑張ってワンコインの値段にしている)。そのかわり、顔なじみの親父さんと楽しく会話しながら食べることができる。席だっていつもの場所が用意されている。そいう店を信頼して、値段は少しだけ高いけれども、あえてその店の牛丼を贔屓にするというのも決して間違いではない。それは価格以外の付加価値を認めるということです。

また、チェーン店は自分がどんなに贔屓にしていても本部の意向である日突然、行きつけの店舗が閉鎖される場合だってある。その点、地元の親父さんがやっている店は安心です。それこそ廃業しない限りは、いつだって店は開いている。そういう安心感もまたひとつの付加価値なのです。

こうしたことを考えると、セゾン投信というのは小規模な運用会社が生き残るためのひとつの方法論を示唆していると思う。それは受益者に対して付加価値を提供するとが、いったいどういったことなのかということです。そしてこれは強調しておかなければならないことですが、“安さ”以外の付加価値を提供するというのは簡単なことではありません。それこそ茨の道であって、決して“楽に儲ける”ことではないのです。セゾン投信は、まさにそういった厳しく、しかし正しい道を進んでいるのだと思います。

【ご参考】
セゾン投信のファンドを直販で買う場合、ネットから無料で口座を開設することができます。⇒セゾン投信

また、セゾン投信の2ファンドは、楽天証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)プランにもラインアップされています。⇒楽天証券確定拠出年金プラン

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