2018年2月5日

投資で「世代間闘争」や「階級闘争」を戦うなら正しい方法で戦おう



日本人は何のために「投資」をしているのだろう。ふと、そんなことを考えました。もちろん、普通は老後資金の準備だったり、余裕資金を運用で殖やして日々のキャッシュフローを豊かにするとか、あるいは既に持っている資産をインフレから守るためといった理由が考えられるのですが、どうも日本ではそれだけではないような気がします。とくに一部の若者にとって「投資」は、一種の「世代間闘争」や「階級闘争」になっているのでは。「投資」を「闘争」の手段と考えれば、そこでは目的の達成すなわち「いかに早く、大きく儲ける」ということが求められるのは人情としてありがちなことです。そこに日本で「投資」よりも「投機」が容易に普及してしまう理由があるのかもしれません。でも、はたして「投機」で「世代間闘争」や「階級闘争」に勝てるのでしょうか。私は「世代間闘争」や「階級闘争」を戦うからこそ、正しい「投資」の方法で戦わないと勝てないと思うのです。

日本の一部の若者にとって「投資(実際は投機)」が一種の「世代間闘争」や「階級闘争」になっているのではと感じたのは、最近話題の仮想通貨にまつわるあるニュース記事を読んだことがきっかけです。

コインチェック流出:30歳契約社員は「生活にゆとり欲しかった」と貯金200万を投資していた(Business Insider Japan)

ここに登場する若者の発言には突っ込みどころ満載なのは承知の上です。とくに「正社員になっても年収は600万円くらいでたかが知れている」という発言は、世間をなめていると批判されても仕方がないと思うのですが、それでもこの若者が抱える「閉塞感」のようなものを無視することができませんでした。それは「株は市場がすでに出来上がっていて自分が勝てる可能性が低い」という誤解を含んだ発言にもうかがえます。

もうひとつ私の心をザワつかせるニュースが韓国からもたらされました。韓国では日本以上に仮想通貨への関心が高く、大学生や高校生までもが取引にのめり込んでいます。そこで韓国政府が規制しようしたところ、若者から大きな反対の声が寄せられました。その理由は「最後の希望を奪うな」という驚くべきものです。しかし、やはり偽りの希望の先には破滅が待っていました。

【朝鮮日報】「仮想通貨が最後の希望」という韓国20-30代の叫び(THE 社説一覧)
仮想通貨への投資に失敗で20代大学休学生が自殺…韓国で初事例(「中央日報」)

韓国の若者は本当に可哀想です。韓国は若者の失業率も高く、おまけに経済は財閥支配が強固なので就職できたとしても大企業と中小企業で給料の格差が酷い。そんな閉塞感の中で若者が仮想通貨取引に「最後の希望」を見出すという悲劇。そして、ついには取引で大きな損失を被って自殺する者まで出てきてしまった。

日本にしても韓国にしても、なぜ若者が「投機」に走るのかがなんとなくわかったような気がします。彼らは世の中が既にある一定の秩序や階層に固定されていると感じていて、通常の方法ではその軛を抜け出すことができないと考えているのです。それは一種の「世代間闘争」であり「階級闘争」だと言えます。

そもそも「投資」で「世代間闘争」や「階級闘争」を戦おうとすること自体が間違いだという考え方もあります。しかし、既に多くの資産を持っている人や、十分な収入に恵まれている人が、そういった正論を唱えたところで彼らの心には響かないでしょう。なぜなら、それはしょせん「持てる者」「勝ち組」の大人の賢しらにすぎないと解釈されてしまうからです。

そして私も「投機」に「最後の希望」を見出してしまう若者を単純にバカだと言って切り捨てる気にはなれない。なぜなら、彼らが感じている閉塞感や絶望感といったものを、やはり「失われた世代」の1人である私は無視することができないからです。私もまた「投資」に「世代間闘争」や「階級闘争」を見出してしまう一人です。

しかし、だからこそ「投機」にのめり込む若者に対して声を大にして言いたいのは「『世代間闘争』や『階級闘争』を戦うなら、正しい方法で戦わなければ勝てない」ということです。間違った方法でも生き残る人はいるでしょうが、それは特殊な能力を持っていたり、あるいは単に運は良かっただけであり、普遍性はない。そのほかの多くの人は屍をさらすことになる。

ふと、坂本龍馬のことを思い浮かべました。龍馬の偉かった点は、幕府の政策に反対して尊王攘夷をやろうとしたときに他の同志たちのように「天誅!」と叫んで街で刃を振るのではなく、逆に幕臣の勝海舟に弟子入りして幕府の軍艦操練所で勉強し始めたことです。これこそが革命闘争に勝つための正しい方法論です。闘争に勝つためには、たとえ遠回りに思えても、地道に正しい技術を修得する必要がある。

投資だって同じです。たとえ遠回りに思えても勝てる方法を学ばなければ「世代間闘争」にも「階級闘争」にも勝てません。いや、「世代間闘争」や「階級闘争」を戦うからこそ、それが絶対に必要なのです。なぜなら、私たちのような「持たざる者」にとっては、それは決して負けることが許されない戦いだからです。

だから、現在置かれれている経済状態に閉塞感や絶望感を持っている若者には、ぜひ「投機」ではなく正しい「投資」について学んで欲しいし、自分ができる範囲でいいから、それに挑戦して欲しい。例えばそれは個人型確定拠出年金(iDeCo)や「つみたてNISA」を活用してコツコツ投資を実践することでしょう。コツコツ投資では間に合わないと感じるかもしれませんが、そんなことは決してない。少なくとも投機にのめり込むよりは、20年後、30年後には闘争に「勝っている」可能性が高いと思う。

たしかに若者の閉塞感や絶望感を放置する政府の政策はクソです。しかし、政府のやることが信用できないからといって自暴自棄になって、例えば仮想通貨による投機に走るのは短絡というもの。政府だって政府ななりにできる範囲のことでやっている。それこそiDeCoや「つみたてNISA」というのは投資における軍艦操練所のようなものです。だから現代の若者が大人のやり方に対抗するためにも、それこそ龍馬のように、大人が用意した制度を利用しつくすべきです。それが闘争を勝ち抜くための正しい方法に違いありません。私は、そういう考え方にいたる同志が増えることを願ってやみません。
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