2017年12月18日

政治家は全員、iDeCoに加入しなさい



少し前のニュースですが、地方議員に対する年金制度復活が検討されているそうです。

地方議員も厚生年金加入 通常国会に法案提出へ(毎日新聞)

趣旨は理解できるのですが、釈然としないものもあります。というのも、そもそも代議士・政治家は「職員(労働者)」ですか? 逆に公権力の行使を決定する究極の「使用者」の立場だと思うのですが。とはいえ、政治家も老後に向けた経済的基盤は必要でしょう。そこで一計ですが、地方議員に限らず全ての政治家は、個人事業主として堂々と個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入すればいいのではと思うのです。

毎日新聞の記事にもあるように、かつて国会議員や地方議員には独自の年金制度があったのですが、国民年金や厚生年金と比較して優遇されているという批判が高まり、2006に国会議員互助年金(議員年金に相当)、2011年に地方議員年金が廃止されています。このため、新たに議員になる人は兼業などがない限りは事実上、国民年金のみ加入の個人事業主ということになります。

このため将来の経済的不安から地方議員のなり手が不足するようになったというのが自民党や公明党の主張。そこで地方議員も自治体の「職員」と見なして、公務員と同じ厚生年金に加入できるようにしようというのが今回の議員年金復活案です。

ただ、こうしたやり方は筋が悪いと思う。地方議員が厚生年金に加入するとなると、掛金の拠出は労使折半負担ですから、半分は自治体が負担する必要がある。東京都のような大都市では地方議員といえども報酬は高額ですから、厚生年金保険料も高額です。その半分を自治体が負担する、すなわち税金を投入するということに国民の理解が得られるでしょうか。

そもそも政治家は「労働者」ではありません。それどころか、公権力の行使の決定を担う究極の「使用者」のはず。それを年金制度だけ通常の公益労働者(一般の公務員)と同じ扱いを求めるというのは、虫の良い話だと批判されても仕方がないでしょう。

とはいえ、政治家といえども老後に向けた経済的基盤作りが必要だという指摘には同意します。なぜなら、それがなければ老後の心配などしなくてもよい超お金持ちだけが政治家になることになり、一般庶民との遊離が進むことを危惧するから。また、実際に地方では経済的不安定さから地方議員のなり手が不足しているのも事実だからです。

そこでひとつのアイデアですが、地方議員に限らず国会議員も含めて政治家は全員、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入すればいいのでは。議員報酬から専業なら個人事業主として年81万6000円を、兼業の人も年27万6000円~14万4000円まで積み立てることができます。長年、議員を続ける人ならかなりの金額が積み上がるでしょうし、落選して失業しても既に拠出した掛金にポータビリティーがあって安心のはず。もちろん所得控除による税制優遇措置もあります(それぐらいの優遇措置は政治家も国民の1人なのですから認めるべき)。

そもそも世の中の個人事業主やサラリーマンは、こうやって老後に向けた自助努力をしているのですよ。そして、そういった自助努力が求められる社会構造を作ってきた責任の一端は政治家にあるはず。だったら、政治家こそ自分の老後に向けて自助努力する姿を見せて、国民に範を示すべきでしょう。政治家が安易に公的保護を求めるのは、それこそお手盛り批判を受けて当然なのです。

また、政治家がiDeCoに加入することで、政治的な効果も期待できるでしょう。政治家もiDeCoで自分の年金資産を運用することで、運用とは何かということを実際に学ぶことができるはず。そうすれば「株価が上がっても庶民には関係ない。利益を得るのは一部の金持ちだけ」といったトンデモ論を吐くような政治家も減るのでは。そして、政治家の最も重要な仕事は「国民を食べさせること」、すなわち経済を活性化することだという当たり前のことを我が身のこととして実感できるはずです。

現在、政府は「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」の掛け声の下、国民に対して投資の促進を働き掛けています。それは現在の日本が置かれた経済構造上、已む得ないことですが、少なくとも国民に投資を推奨する以上は、政治家もまた自らが実践して範を示すべきです。

もっとも、政治家は市場に対して様々な影響力を行使できますから、インサイダー取引を防がなければなりません。だから、政治家が投資をする場合、アクティブ運用は一切禁止。だからこそiDeCoを通じてインデックス運用をやればいい。そして、市場全体が盛り上がるような経済政策を我が身のこととして考えるようになればと思うのです。

注:実際に特別公務員たる政治家がiDeCoに加入できるのかは確認していません。この点に関して厚生労働省の見解を聞きたいものです。

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