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2017年10月3日
「eMAXIS Slim」2ファンドが信託報酬を引き下げ―ついに既存ファンドの信託報酬引き下げが当たり前になる時代に
三菱UFJ国際投信の低コストインデックスファンドシリーズ「eMAXIS Slim」の先進国株式インデックスファンドと国内株式インデックスファンドの信託報酬が10月2日からそれぞれ引き下げられました。
「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」約款変更のお知らせ(三菱UFJ国際投信)
「eMAXIS Slim 国内株式インデックス」約款変更のお知らせ(同)
これにより信託報酬(税抜)は先進国株式インデックスが0.19%以内(変更前0.2%以内)に、国内株式インデックスは0.17%以内(同0.18%以内)となります。「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続けるファンド」という「eMAXIS Slim」のコンセプトの本領が発揮されたことになります。同時に私は、ある種の感慨を覚えました。それは、ついに既存ファンドの信託報酬引き下げが当たり前になる時代になったという思いを強くしたからです。
従来、日本では投資信託の信託報酬が引き下げられるということはめったにありませんでした。このため低コスト競争も、もっぱらより低コストなファンドが新規設定されるという形態をとってきた。しかし、そうしたやり方は既存ファンドの受益者の存在を無視することですから、やはり競争の方法としては本筋ではないということをブログでも常々、批判してきたのです。
そうした中、ごく例外的に信託報酬を引き下げるファンドが存在しました。かつては「eMAXIS」と「SMT(旧STAM)」の両シリーズが互いに信託報酬を引き下げて競争するということがあったのです。だからこそ両ファンドは世の中のインデックスファンドから熱い支持を集めました。しかしその後、一時的に低コスト競争は停滞します。
その停滞を破ったのがニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>シリーズ」です。2度にわたって断続的に信託報酬を引き下げるという英断は、やはりインデックス投資家の圧倒的な支持を集めた。だからこそ「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」は一般販売されている先進国株式インデックスファンドの中で純資産残高の面で頂点に立てたのです。
しかし、こうした動きに追随する運用会社は少なかった。あいかわらず低コスト競争はファンドの新規設定によって行われることになります。ある意味で「eMAXIS Slim」の登場というのは、既存の「eMAXIS」を切り捨てる形で始まったともいえるわけで、古いやり方での低コスト競争を象徴する商品でもあったのです。だから既存の「eMAXIS」シリーズの受益者は複雑な感情を持ったものです。
しかし、やはり「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」という「eMAXIS Slim」の登場は、別の意味でインデックスファンドの時代の変化を象徴していたのです。それは、ファンドの新規設定ではなく既存ファンドの信託報酬を引き下げることで低コスト競争を戦う時代の幕開けを逆説的に象徴していた。そして、そういった決断を三菱UFJ国際投信にさせたのは、やはり「<購入・換金手数料なし>シリーズ」の存在であり、アセットマネジメントOneの「たわらノーロード」や三井住友アセットマネジメントの「三井住友・DC(現三井住友・DCつみたてNISA)」シリーズ、大和証券投資信託委託の「iFree」といった新時代の低コストインデックスファンドシリーズの登場だったはずです。
そしてもうひとつ大きな状況の変化は、来年から始まる「つみたてNISA」の存在です。「つみたてNISA」対象商品となるためには、金融庁への届出が必要です。このため、従来のように安易に新しいファンドを設定して低コスト競争を戦うという手法が事実上、封印されました。これが時代の変化のスピードを加速させた。
まず最初に動いたのは三井住友AMでした。「三井住友・DC」シリーズを「三井住友・DCつみたてNISA」シリーズへと改称し、国内株式インデックスファンドの信託報酬を引き下げました。こうした動きに続いたのが「たわらノーロード」と「iFree」であり、いずれも大胆に信託報酬の引き下げに踏み切ったのです。そして今回、「eMAXIS Slim」も信託報酬を引き下げた。
明らかに時代が変わったのです。いまやインデックスファンドは、「<購入・換金手数料なし>」「たわらノーロード」「三井住友・DCついたてNISA」「iFree」、そして「eMAXIS Slim」といった代表的なファンドシリーズが、既存ファンドの信託報酬を引き下げる形で低コスト競争を戦うことがあたり前になったのです。まさに、これこそが多くのインデックス投資家が望んでいた本来の低コスト競争の在り方のはずです。だから、本当の意味でインデックスファンドの低コスト競争がいまから始まったのだと思うのです。
この流れが続けば、日本におけるインデックスファンドの存在は、もっともっと素晴らしいものになっていくはず。だから、ぜひ運用会社や販売会社には、いまの努力を続けて欲しいと強く願うのです。
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