サイト内検索
2017年8月25日
「三井住友・DC日本株式インデックスファンドS」が信託報酬を引き下げる―「つみたてNISA」に向けて低コスト競争が再加速
どういうわけか海外出張に行くと、その間に日本でインデックスファンドに関する大きなニュースが入ってくるのが不思議です。こういうのって、時期的なものがあるのでしょうか。今回も安房くんの記事で知ったのですが、三井住友アセットマネジメントが「三井住友・DC日本株式インデックスファンドS」の信託報酬を9月21日から引き下げます。なんと信託報酬(税抜)0.16%と、TOPIX連動のインデックスファンドとしてはコスト最安値を更新しました。さらに名称も「三井住友・DCつみたてNISA日本株インデックスファンド」の変更することに。文字通り確定拠出年金(DC)と「つみたてNISA」を明確にターゲットとした取り組みだということが分かります。やはり「つみたてNISA」に向けてインデックスファンドの低コスト競争が再び熱を帯びてきました。
私はSBI証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)で「三井住友・DC日本株式インデックスファンドS」を積み立てていますが、このファンドは一般販売もされているので通常の課税口座でもネット証券などで誰でも購入できます。TOPIX連動のインデックスファンドというのは先進国株式インデックスファンドと並んで国際分散投資の核となる商品。そこで信託報酬0.16%の商品が登場したことは大きなインパクトがあります。
さらに名称変更が示すように、今回の三井住友AMの動きは、明らかに「つみたてNISA」をターゲットにした動き。しかも、新規にファンドを設定するのではなく、既存ファンドの信託報酬引き下げに踏み切った三井住友AMの決断には最大限の称賛を送りたい。そもそもファンドの新規設定で信託報酬を引き下げるという方法は、受益者よりも販売会社などに配慮したやり方っぽく、セコイのです。やはり既存の受益者も尊重し、既にあるファンドの信託報酬を引き下げるのが本筋のやり方だと強調したい。
しかし、改めて思うのは、やはり「つみたてNISA」のインパクトは絶大だということ。これに向けて三井住友AMだけでなく運用会社が一気に動き出しました。すでに何人ものブロガーさんが報告していますが、りそなアセットマネジメントも低コストインデックスファンドシリーズ「Smart-i」9本を新規設定し、うち4本が各資産カテゴリーでコスト最安値を更新となるとか(ところがTOPIX連動は「三井住友・DC」に再逆転されてしまった)。これに対抗して三菱UFJ国際投信も「eMAXIS Slim」の信託報酬引き下げを検討しているという報道があります。
投信、運用手数料下げ競う りそな「最安」投入(「日本経済新聞」電子版)
ちなみに三菱UFJ国際投信は「つにたてNISA」に向けて「eMAXIS Slim」と事実上同じ商品を「つみたてシリーズ」として新規設定するとか。ことさら批判はしませんが、あいかわらず三菱はセコイな。素直に「eMAXIS Slim」を投入するか、あるいは通常の「eMAXIS」の信託報酬を引き下げればいいのに。ちょっとは三井住友AMを見習って欲しいものです。
いずれにしても「つみたてNISA」に向けてインデックスファンドの低コスト競争が再加速しそうな予感です。特に今回の信託報酬引き下げで三井住友AMは大注目の運用会社に躍り出ました。なぜなら「三井住友・DC」シリーズには、まだ一般販売が開放されていないDC専用ファンドがいくつかあるからです。とくに最終兵器ともいえるのが「三井住友・DC外国株式インデックスファンドS」。なんと信託報酬(税抜)は0.16%。もしこれが一般販売に開放されたら、先進国株式インデックスファンドのコスト水準のレベルを一気に塗り替えてしまいます。
こうなってくると、他の運用会社も黙ってはいられないのでは。「つみたてNISA」に向けて、どういった商品ラインアップを用意できるかが非常に重要になるわけであり、インデックスファンドの場合はコストの安さが最大の差別化ポイントとなりますから。例えば競合する超低コストインデックスファンドシリーズを擁するニッセイAMやアセットマネジメントOne、大和証券投資信託委託などの動きも気になるところです。
さて、最後にちょっとだけ指摘しておきたいこともあります。今回の動きに対して、やはり金融庁の威光は絶大だという印象を持った人も多いかもしれません。実際にそういう面もあると思います。金融庁が低コスト化の旗を振れば、金融機関はあっという間に右に倣えですから。しかし、それでは企業としての自主性はどうなるのかという疑問がわいてもおかしくない。しかし、やはり金融機関は金融機関として自主的に考えて、「つみたてNISA」への対応を進めているのではないでしょうか。なぜなら、金融機関にとって将来の飯の種は、そこにしかないのですから。このことは以前にブログでも指摘しました。
【関連記事】
証券会社が生き残るためには積立投資の普及しかない
つまり、現在の金融機関の取り組みというのは、なにも金融庁が怖いからだけではなない。営利企業として真っ当な戦略に基づいた事業構造改革の一環だと言えるのです。そのことを理解しないと、金融機関関係者だろうが個人投資家だろうが、たぶん事の本質を見誤ると思います。
【ご参考】
「三井住友・DC日本株式インデックスファンドS」はネット証券などで購入できるほか、SBI証券のiDeCoプランにもラインアップされています。SBI証券のiDeCoプランは運営管理手数料が無条件で無料ですから、iDeCoに入るならお薦めプランのひとつ。関心のある方は資料を取り寄せて研究してみてください。
⇒SBI証券確定拠出年金プラン