2017年8月8日

「たわらノーロード<ラップ向け>」をどうするつもりだろう?



アセットマネジメントOneのインデックスファンド「たわらノーロード」は、極めて低コストな信託報酬とマザーファンドの規模を生かした安定した運用で、まさにお薦めのインデックスファンドシリーズのひとつ。私も「たわらノーロード新興国株式」を積み立て購入しています。そんな素晴らしいシリーズなのですが、前々から気になっていることがあります。シリーズには一般販売や個人型確定拠出年金(iDeCo)にラインアップされている商品のほかに、楽天証券のラップ口座「楽ラップ」向けファンド「たわらノーロード<ラップ向け>」があるのですが、これが驚くほど売れていない。いったいAMOneは、「たわらノーロード<ラップ向け>」をどうするつもりだろう。

一時は鳴り物入りで登場した楽天証券の「楽ラップ」ですが、最近はあまり話題になっていないようです。やはりネット証券でインデックスファンドを購入する層とラップ口座という仕組みには、ややニーズに乖離があるのかもしれません。その楽ラップで販売されているのが「たわらノーロード<ラップ向け>」なのですが、純資産残高を見て驚きます。国内REITインデックスファンドと先進国REITインデックスファンドを除いては、ほとんどが設定時の100万円のまま。つまり、まったく売れていない。ちなみに楽ラップの商品ラインアップは以下のようになっています。



競合するステート・ストリートGAの低コストインデックスファンドシリーズ「MA(マルチアセット)ファンドシリーズ」は、それなりに純資産残高が増えていますから、ようするに「たわらノーロード<ラップ向け>」は完全に売り負けているわけです。コスト的には「たわらノーロード<ラップ向け>」の方が低コストなのですから不思議。楽ラップは投資一任サービスですから、受益者がファンドを選択しているのではなく、ロボ・アドバイザーが決めているのでは? すると「たわらノーロード<ラップ向け>」はロボアドバイザーにまったく好かれていないということになります。これはちょっと気の毒。

しかし、販売がこれだけ低迷しているとAMOneにとっても困った問題では。ファンドを維持するには当然ながら経費が掛かりますから。「たわらノーロード」というシリーズ全体での収益性の観点からも好ましいこととは思えません。そして、「たわらノーロード」シリーズ全体のコスト戦略に影響を及ぼすのではないかということをシリーズの受益者の1人として心配しているのです。

「たわらノーロード<ラップ向け>」は、投資一任契約による手数料が発生するラップ口座向け商品であるからこそ、一般販売する「たわらノーロード」よりも信託報酬が低く抑えられています。だから、例えば「たわらノーロード」の信託報酬を引き下げる場合には、同じように「たわらノーロード<ラップ向け>」の信託報酬も引き下げる必要があるということ。そうでなければ、ラップ口座専用ファンドとして意味をなしませんから。ところが「たわらノーロード<ラップ向け>」の純資産残高がこれだけ少ないと、はたしてそういうことができるのかという問題が発生するのです。

AMOneは「たわらノーロード<ラップ向け>」をどうするつもりなのだろうと思ってしまう。考えられる方法はふたつあると思う。ひとつは潔く諦めて繰上償還し、ラップ専用ファンドから撤退することでシリーズ全体のコストダウンを図ることでしょう。これは普通の考え方です。もうひとつは、さらに思い切って信託報酬を引き下げて、ステート・ストリートMAシリーズをコスト面で突き放して挽回を図ることです。ただ、そうすると<ラップ向け>の収益性は一時的に低下します。それが通常の「たわらノーロード」シリーズのコスト戦略にどのように影響するのか気になるのです。

いずれにしてもAMOneと「たわらノーロード」シリーズにとって、<ラップ向け>のあり方やシリーズにおける位置づけをもう一度考え直すべきなのは間違いなさそうです。

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