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2017年8月12日
個人にとって不動産投資が危険な理由―投資が悪いのではなく環境が“ヤバイ”のです
どこで個人情報を入手したのか分かりませんが、最近になってマンション開発業者から盛んにワンルームマンション投資などの勧誘電話がかかってきます。もちろん、ソッコーで断ってます。だって表面利回りを聞いたら、だいたいが4%台。はっきり言って不動産投資をなめてますね。でも、べつに私は不動産投資を否定していません。逆に実物不動産は預貯金・債券、株式と並んで重要な資産クラスだと思っています。にもかかわらず、やっぱり個人投資家レベルでは実物の不動産投資は危険だと思う。なぜかというと、不動産や投資が悪いのではなく、投資を巡る環境が“ヤバイ”からです。
私は投資や資産運用についてはコンサバティブな考え方の持ち主ですから、いまでも昔ながらの「財産三分法」が最強の資産保全策だと思っています。つまり財産を現預金(国債を含む)、株式、そして実物不動産という3つの異なる資産クラスで保有するというやり方です。現預金・国債はローリスク・ローリターン、株式がハイリスク・ハイリターンなら、不動産はミドルリスク・ミドルリターンだとされ、異なる値動きやリスク量の資産クラスに財産を分散させるというのは、今でも十分に理にかなっている。
実際に私の祖父は株式のほか、自宅以外の不動産も取得していました。その土地は現在、父親が月極駐車場にしていくばくかの不動産収入も得ています。私自身は今はまだ不動産を保有していませんが、ある程度の資産ができれば不動産を取得するのも悪くない選択だと思っています。個人投資家の間では昔から不毛な”持ち家・賃貸論争”が盛んですが、あえて言えば、私はどちらかというと持ち家派ですらあります。
そんなふうにどちらかといえば不動産に対して好意的な印象を持っている私が、あえて「個人にとって不動産投資は危険」と言うのはなぜか。それは、不動産投資をあまりに安直に語る人が多いからです。実際に勉強や努力しながら納得も得心もして不動産投資を実践している人はいいのです。そうではなくて、いかにも不動産投資が簡単な投資であり、それをやらない人を情弱扱いするようなバカがいるからどうしようもない。しかも、それを軽々に人に勧めるからなおさら度し難い。
そもそも投資を軽々に人に勧めてはいけませんが、とくに不動産投資はそうです。なぜなら、株式などへの投資は少額から始めることができるので失敗してもダメージを最小限に抑えることができますが、実物不動産は一気に大きな資金が必要ですから、よほど慎重に着手しなければ再起不能になってしまいます。ましてや資金を借り入れての不動産投資などを安直に他人に勧めるなど言語道断。不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンですが、借金はハイリスク・ハイリターンです。
なにが言いたいのかというと、不動産投資が悪いのではなく、不動産投資を巡る環境がヤバイということ。不動産の世界には、他人に安易に借金を勧めて、それで特定の物件を購入させようとする輩が多い。いちばんたちが悪いのが、中立を装いながら特定の業者や物件を紹介し、買い煽りする"投資アドバイザー"。だいたいそういう人が「不動産投資を食わず嫌いしてはいけない」とか「借金=悪ではない」などと調子こく。そういった胡散臭い連中がたむろするから、投資初心者にとって不動産投資は危険なのです。
なぜ不動産投資を巡る環境が悪くなるのか。じつは理由のひとつに法規制の問題があります。株式や投資信託といった金融商品の場合、特定商品を推奨することで手数料や紹介料を取ることは金融商品取引法によって規制されています。具体的には投資助言・代理業をやる場合には金融庁に登録しなければならず、無登録で投資助言・代理業を行った場合、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています。ところが実物不動産の場合、こうした規制のグレーゾーンになる。いちおう国土交通省が「不動産投資顧問業登録制度」を作っていますが、法規制ではなく旧建設省の告示に基づくものにすぎません。
こうした法律のグレーゾーンを狙って、有象無象の自称"アドバイザー"が不動産投資の世界には群がっている。だから投資初心者が軽い気持ちで入り込むと、すぐに悪い人のカモにされる危険性がある。私も含めて「不動産投資はリスクが高い」と言う人がいますが、それは「不動産投資界隈がハイリスク」という意味もあるのです。とくに安易に不動産投資や借金を推奨する人の言葉は、もっとも危険だと考えておくべきでしょう。
結局、不動産投資というのはどこまでも自分の目と耳と足を使って情報を集め、自分の頭で考えぬいた上で実行するものです。物件を探すのに焦ってもいけません。良い出物があるまで何年も待ち続けるような根気のいる作業が必要です。そして、実際に不動産投資を上手く続けることができている人というのは、例外なくそういった人たちです。それはやはり投資上級者向けの投資手法でしょう。間違っても「信頼できる業者からなら物件を見ないで買っても問題ない」といったトチ狂った言葉を信用してはいけない。これは、投資家が物件を見ずに買っても、紹介料を業者からもらっているアドバイザーにとって"問題ない"という意味だと解釈するべきであり、不動産投資を巡る環境がいかに"ヤバイ"かを象徴する言葉にすぎないのです。