2017年6月4日

後輩には投資で儲かった経験よりも損した体験を話してあげよう



日経平均株価が2万円を超え、米国の株価も過去最高値で推移しています。これだけ相場環境が良くなってくると、投資をしている人の多くが含み益となり、気分上々ですね。でも、ちょっと心配なのが少し浮かれ気味な人もいること。私の身の周りもいますよ。そういうのって、他人事ながらやっぱり心配ですよね。相場というのは常に浮き沈みがあるものですから。そこで最近では、投資について話をするときに、儲かった経験よりも損した体験を積極的に話すようにしています。

私はけっこう職場とかで自分が投資していることを話すことが多いのですが、その影響もあってかインデックス投資をやっている後輩が2人ほどいます。1人は通常の課税口座で国際分散投資できるバランス型インデックスファンドの積立を、もう1人はiDeCo(個人型確定拠出年金)でインデックスファンドの積立を行っています。2人が投資を始めるにあたっていろいろと相談されたので、自分の体験を話したり、お薦めの参考書を貸したりしていました。その際にも、「投資は損をする可能性があるから、本当に自分で納得も得心もしてから始めるように」ということを口が酸っぱくなるほど言って聞かせたものです。

それで2人は実際に投資を始めたわけですが、最初の頃はなかなか思ったようにリターンが上がらず、半信半疑の状態だったようです。何しろ2015年から16年にかけては冴えない相場環境が続いていましたから。ところが昨年終盤からの「トランプ相場」で状況が一変します。米国株は過去最高値を更新し、日経平均株価も久しぶりに2万円台を回復しました。見る見るうちに含み益が増えてきました。そうなると2人とも「投資を始めて良かった!」となるわけです。

でも投資を始めったばかりの人は、こういう状態がいちばん危ない。相場というのは常に浮き沈みがありますし、好調な時でも必ず調整局面というものが存在します。そして不思議なことに投資初心者にとっては、投資した直後に評価額が元本を下回ることよりも、いったん上昇相場を経験した上で、その後の下落で含み益を失うことの方が心理的ダメージが大きい。含み益はしょせん含み益に過ぎず、実態ではないということが実感として分からないから、それを失うとつい「あのとき利確してればよかった」「時間を無駄にした」といった後悔の念が生じるからです。そして投資から退場しちゃう人もでてくるわけです。

そこで最近では後輩2人と投資の話をするときに「心配せんでもそのうち損するから」と言っています。そして例えばリーマン・ショックの時に私の保有株式の評価額がマイナス78%にまで達したことなんかを話すと、なかなか良い毒消しになります。その上で、積立投資というのは積立を継続する過程のどこかで大きな相場の低迷と含み損を経験した方が最終的なリターンは大きくなりやすいということも話すと、ようやく安心するわけです。

投資で儲けた話というのは世の中にたくさんあって、そういう情報は相場環境が良くなると自然と多くの人の耳に入るようになります。するとついつい「もっと投資しなければ」と思う人も出てくる。でも、これが危ない。だからこそ投資を続けてきた先輩として後輩には、投資で儲かった経験よりも損した体験を話してあげるべきではないでしょうか。投資にはリスクがつきものだから、そのリスクの存在を常に可視化してあげるのは大切なことだと思う。それは先行者の義務と言えるかもしれません。だから今後も相場の調子がいい時ほど、後輩たちには「心配せんでもそのうち損するから」と言い続けようと思っています。

関連コンテンツ