2017年5月24日

SBI証券のiDeCoに「スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド」が追加―2017年5月の個人型確定拠出年金(iDeCo)積立と運用成績



SBI証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)の定期買付が約定しました。私はすでに口座残高が50万円を超えているので運営管理手数料は無料でしたが、5月19日から残高に関わらず全ての加入者の運営管理手数料が無料になりました。楽天証券との競争もあってSBI証券が攻勢をかけています。それでサイトにログインしてビックリ。5月24日からまたまた商品ラインアップが追加されました。新たにラインアップに追加されたのはスパークス・アセット・マネジメントのアクティブファンド「スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド」です。これまた微妙な商品を投入してきたものです。

私はiDeCo口座は他の課税口座とは別個にポートフォリオを管理しているので、基本ポートフォリオと資産配分がほぼ同じになるように各資産クラスのインデックスファンドを組み合わせ、さらに味付けとして少額だけグローバル中小型株ファンドなどを組み入れています(参考記事:これが私の個人型確定拠出年金ポートフォリオ―SBI証券DCプランで選んだファンドとその理由)。今回も以下のファンドを買付けました(カッコ内は税抜信託報酬)。

【個人型確定拠出年金(SBI証券iDeCoプラン)】
三井住友・DC日本株式インデックスファンドS(0.19%)
DCニッセイ外国株式インデックス(0.21%)
EXE-i新興国株式ファンド(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.142%程度)
EXE-iグローバル中小型株式ファンド(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.124%程度)
インデックスファンド海外債券ヘッジあり(DC専用)(0.26%)
三井住友・DC外国債券インデックスファンド(0.21%)
三菱UFJ DC新興国債券インデックスファンド(0.52%)
EXE-iグローバルREITファンド(0.23%+投資対象ETF信託報酬0.138%程度)

拠出開始来の累積リターンは+11.8%となっています(5月23日現在)。ここしばらくは相場も落ち着いているので堅調なリターンとなっていますが、はっきり言ってこれは出来すぎの数字。恐らく今後、大きな下落があってもう少し大人しいリターンに落ち着いていくことでしょう。

さて、そのSBI証券のiDeCoプランですが、さらに商品を追加してきました。将来的にiDeCoの商品数は35本に制限される方向ですから、既に60本以上の商品をラインアップしているSBI証券には新たに商品を追加する余裕はないと思っていたのですが、さすがSBI。お上の意向など全く忖度する気配がありません。あいかわらずやりたい放題です。

それで新たに追加された「スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド」ですが、ある意味で話題のアクティブファンドです。株価と潜在的企業価値が乖離していると考えられる企業に投資し、経営者に対して企業価値向上に向けた対話を仕掛けるという一種のアクティビスト型投資を実践するファンドだからです。最近では帝国繊維の大量保有報告書を出すと同時に、持ち合い株式の売却による資本効率改善を求める意見書をぶち上げるなどでニュースになりました。スパークス・グループは阿部修平社長のキャラクターもあって、知る人ぞ知る運用会社です。

その「スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド」ですが、肝心の運用成績を見ると設定来トータルリターンは+33・76%と、TOPIX(配当込み)の+13.62%を大きくアウトパフォームしています(5月19日現在。出典はモーニングスター)。



成績だけ見ると、なかなか優秀なファンドです。運用コンセプトもユニークです。では「お前はこのファンドを買うの?」と聞かれれば、微妙ですね。というのも、あまりにコストが高すぎるのです。「スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド」のコスト体系は以下のようになっています。

信託報酬:税抜1.7%
実績報酬:ハイ・ウォーター・マーク超過分の税抜20%

とくに厄介なのが成功報酬の部分です。よく固定報酬よりも成功報酬の方が受益者にとって有利だと勘違いしている人がいますが、それは金融リテラシー以前に算数リテラシーが足りません。成功報酬は運用成績が基準を上回った場合には運用会社が報酬を取るけれども、基準を下回った場合は報酬を取りません。一見、運用会社と受益者が対等な関係に見えますが、実はこれはリスクとリターンのバランスが圧倒的に運用会社有利になっています。

なぜなら運用会社が受け取る報酬は上限が理論上は無限であるのに対して下限は0円に制限される。一方、受益者から見るとファンドがどれだけ損をしても支払う成功報酬は0円までしか下がりません。ここが算数リテラシーを働かせるところです。もし運用会社と受益者が平等に実績報酬としてリターンとリスクを分け合うなら、基準を上回ったときに運用会社に成功報酬を支払うのと同じ比率で基準の下回ったときには運用会社が受益者に罰金を支払うべきでしょう。そうすれば両者のリターンとリスクの配分は平等となります。

しかし、運用会社が受益者に対して損失の一部を補填することは法律で禁止されています。なので投資信託などにおいて成功報酬を取ることは、原則的に受益者が損なのです。その上、成功報酬とは別に固定報酬として信託報酬まで取るのですから、どれだけ受益者が不利になるのか想像を絶します。

それで実際に「スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド」の直近の運用報告書(2015年10月16日~2016年10月17日)を見ると、信託報酬とその他コストを合わせた実質コストが税込2.003%。これに成功報酬が税込0.638%かかていますので、合計は税込2.641%でした。はっきり言ってベラボーな高コストファンドです。年間2.6%もコストを支払っていれば、どんなに優秀な運用成績でも長期的には大変な負担です。

とくにiDeCoは長期運用が基本になりますから、これほどの高コストファンドははっきり言ってポートフォリオの味付けとしてもお薦めできません。極めて趣味性の高いファンドだと思うので、どうしても気になる人はそれこそ納得も得心した上で通常の課税口座で購入するなどして阿部社長の手練手管を楽しむべきと言えそうです。

とにかくiDeCoというのは個人勘定といえども立派な年金運用です。年金運用には年金運用の王道ともいえるやり方があります。それは例えばGPIFがやっているようなインデックス運用ということになります。味付けとしてポートフォリオのごく一部にアクティブファンドを組み入れるというのは運用戦略としては大いにありえますが、その場合もコストには細心の注意を払うべきでしょう。その意味で今回のSBI証券の商品ラインアップ追加は、ちょっとやり過ぎの感が無きにしも非ずでした。

【ご参考】
iDeCoプランの選択肢としてお薦めなのは運営管理手数料が無条件無料で低コストインデックスファンドをそろえるSBI証券、楽天証券、マネックス証券、イオン銀行、松井証券です。iDeCoへの加入を検討している人は、これら金融機関のプランも研究することをお勧めします。いずれもネットから無料で資料請求できます。⇒SBI証券確定拠出年金プラン楽天証券確定拠出年金プランイオン銀行確定拠出年金プランマネックス証券確定拠出年金プラン松井証券確定拠出年金プラン

また、研究のために解説書を読むことも大事です。最新の情報を盛り込んだ解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』竹川美奈子さんの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』を挙げておきます。



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