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2017年3月26日
SPIVAスコアカードに見るインデックスファンドvsアクティブファンドの実態
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスはこのほど、インデックスファンドとアクティブファンドのリターンを比較するSPIVAスコアカードの最新データを公表しました。
SPIVA Scorecard(S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス)
SPIVA日本スコアカード(同)
これが非常に面白い。1年、3年、5年、10年の各期間でどれだけのアクティブファンドがS&Pの各インデックスを下回るリターンしか上げることができなかったのかを定量的に測定しています。はっきり分かるのは、アクティブファンドが中長期的にインデックスを上回るリターンを上げ続けることは極めて難しいという、これまで何度も確認されてきた実態です。ただ同時に、国別のデータを見ると、また別に側面も見えてくるような気がします。
まず本家のSPIVA Scorecardを見てみると、特に顕著な特徴が出ているのが米国株ファンドの状況。こちらは5年間までのデータが算出されていますが、なんと5年リターンでS&P500をアンダーパフォームしたアクティブファンドの比率は91.91%。つまり、インデックスを上回るリターンを上げることができたアクティブファンドは1割もないわけです。もちろんインデックスはあくまで市場平均ですから、これを上回る成績のアクティブファンドは必ず存在するわけですから、一概にアクティブ運用を全否定してはいけません。とはいえ、その"勝てるアクティブファンド"を投資家が事前に見出すことが至難の技になっています。
さすがにこれだけ酷いデータが出てくると、米国で大規模な“アクティブ運用離れ”が起こっても仕方がない。最近はアクティブファンドから資金が流出し、バンガードなど大手のインデックスファンド・ETFへの資金流入が加速している理由を裏付けています。
一方、米国以外の国の状況を見ると、少し状況が変わってきます。意外とアクティブファンドが健闘している国もあります。例えばインド株ファンドは5年リターンでS&P BSE100をアンダーパフォームしたアクティブファンドの比率は58.62%。つまり4割のアクティブファンドがインデックスを上回りました。ブラジル株ファンドもS&PブラジルBMIを下回ったのは72.00%、そして、日本株は5年リターンでS&P/TOPIX150を下回ったアクティブファンドの比率は73.72%。さらにS&Pジャパン500との比較では69.33%。つまり約3割のアクティブファンドはインデックスを上回っているいるわけで、米国株ほど極端な状態になっていません。
これは日本の投資信託を対象にしたSPIVA日本スコアカードを見るともっと興味深い状況が見えます。こちらは10年リターンまでの比較が算出されていますが、S&P日本500指数をアンダーパフォームした日本株ファンドのパーセンテージは69.06%。やはり約3割のアクティブファンドがインデックスを上回るリターンを上げています。この3割が多いのか少ないのかというのは判断の分かれるところでしょうが、少なくとも米国株ファンドのように圧倒的に"インデックスに勝てない"状況にはなっていないように感じます。
こういうデータは、いろいろと想像力をかきたてられます。なぜ米国株に比べてインド株やブラジル株、日本株の方がインデックスに勝ちやすいのか。もしかしたら市場の効率に差があるのかもしれません。日本株市場は新興国株市場と同様に"市場の歪み"が大きく、そこにアクティブ運用の勝機があるのかもしれません。そして、日本株でアクティブ運用する場合、やはり情報収集などで地の利がある日本のアクティブファンドの方が勝率が高くなっているのかもしれません。なかなか興味深いデータなのです。
今回のデータを見て改めて感じたのは、やはりアクティブファンドがインデックスを上回るリターンを上げ続けることは至難の技だということです。ただし、日本の日本株アクティブファンドには、まだ少しだけインデックスに勝てる可能性が残っているのかなとも感じます(それでも勝率3割に過ぎませんが)。私自身は基本的にインデックスファンドでコアポートフォリオを作りながら、サテライトとして日本株のアクティブファンドも少しだけ持っていますし、個別株も保有しています。そういった日本的コア&サテライト戦略というのは、それほど無意味ではないというのが今回のSPIVA Scorecardを見たときに感じた個人的な印象でした。
【補足】
SPIVA日本スコアカードを見てもうひとつ感じたのは、外国株式(グローバル株式、新興国株式)に投資する日本のアクティブファンドの勝率の酷さです。10年リターンでインデックスを上回ることができたファンドの比率は1ケタ%しかありません。これを見ると、日本で運用されている外国株式アクティブファンドは、ほとんど投資する価値がないとさえ思えてしまう。日本株と異なり、外国株式に投資する場合はインデックスファンドを活用することが極めて合理的な選択だと言わざるを得ません。