2017年3月11日

セゾン投信が2ファンドの信託報酬を引き下げ―これは運用会社と受益者の共同作業の成果だ



先日、セゾン投信を高く評価する記事を書いたところなのですが、素晴らしいニュースが入ってきました。セゾン投信が運用する「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」と「セゾン資産形成の達人ファンド」の信託報酬が引き下げられるとのことです。

セゾン投信2本のファンド 運用管理費用(信託報酬)引き下げのお知らせ(セゾン投信)

素晴らしいとしか言いようがありません。なにが素晴らしいのかというと、今回の信託報酬の引き下げは、まさに運用会社と受益者の共同作業の成果だと言えるからです。

今回の信託報酬改定で、セゾン投信の2ファンドは3月11日から信託報酬がそれぞれ0.01%引き下げられ以下のようになります。



「セゾン資産形成の達人ファンド」は改定後の実質的な信託報酬に変化がありませんが、これはファンド・オブ・ファンズ形式で投資する対象ファンドが大きく変化する可能性があり、0.01%の信託報酬の差は実質的な信託報酬の上では誤差の範囲に含まれてしまうということらしいです。

わずか1ベーシスポイント(0.01%)の引き下げですが、これは歴史的な意義の大きい引き下げです。それはプレスリリースに記された次の文面を読めば理解できるでしょう。
この改訂は、「お客さまのため」にのみ資産運用業務に従事し、専ら長期投資に努めることを公約したフィデューシャリー宣言の一環としての行動でもあり、また当社のファンド 純資産残高の規模が拡大したことで事業に安定が生まれ、実現できたものとなります。
当社のファンド純資産残高の成長は、投資家からの継続した支持と共感に支えられた賜物であり、「投資家の皆さまとともにファンドを成長させる」という好循環が起き、運用管 理費用の引き下げの第一歩を踏み出すことができました。
セゾン投信は、ファンドの純資産残高が成長し、運用会社としての収益が増えてくれば、それを信託報酬の引き下げという形で受益者に還元するのが「フィデューシャリー・デューティー」であると明言し、実行しました。

そもそもセゾン投信は今回信託報酬を引き下げた2ファンドしか運用・販売していません。その2ファンドの信託報酬を引き下げることは、一時的にでも営利企業としての利益を放棄することです(これがどれほど大きなものかというのは、セゾン投信の決算公告を見てください)。それでもセゾン投信は信託報酬を引き下げた。営利企業としての自社の利益よりも、受益者の利益を優先したのです。これこそが「フィデューシャリー・デューティー」ということです。

それがわずか0.01%だとしても、既存の受益者を無視したボッタクリファンドが跋扈し、低コスト化もほとんどがファンドの新規設定でしか実現できなかった日本の投信業界にとっては、燦然と輝く偉大な行為です。ある意味で、本当に「フィデューシャリー・デューティー」を真摯に実行した日本で最初の運用会社であるともいえます。

そして何より信託報酬の引き下げは、受益者からの「継続した支持と共感に支えられた賜物」であると明言していることが重要。まさに運用会社の努力と受益者の信頼がもたらした信託報酬の引き下げとなるわけで、これは運用会社と受益者が10年に渡って続けてきた共同作業の成果と言えます。だから、セゾン投信の受益者は、今回の信託報酬引き下げを大いに誇るべきです。

今回、セゾン投信は投資信託のあるべき姿を示しました。近年、日本ではインデックスファンドを中心に低コスト競争が加速し、投資家にとっては素晴らしい環境が整備され始めています。しかし、一部では現在の低コスト競争も"金融庁や投資家に対する売名行為"といった批判も出てきました。たしかにそういった側面もあるのでしょう。だとすると問題は、売名行為を目的とした低コスト化は持続性がないということです。今後、日本の投資信託に求められるのは、持続性のある低コスト化です。それは、運用会社と受益者のリレーションシップを基にして純資産残高が成長し、それに応じて運用コストが低下していくという米国などでは当たり前になっている仕組みが日本でも普及することにほかなりません。

セゾン投信は、それを実現しました。0.01%というのは小さな一歩ですが、やはり大きな第一歩なのです。そして、フィデューシャリー・デューティーを全うしようとするセゾン投信が今後も成長を続けていくことは、日本の投信業界にとって計り知れない好影響を与えることでしょう。他の運用会社も、受益者が本当に求めていることは何なのかを知る契機になるからです。そのことに他の運用会社が気づき、行動に移したときに、今度は日本の投資・運用業界全体での好循環が始まるのではないでしょうか。

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【ご参考】
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