2017年1月29日

考えを改めました。やっぱりiDeCoは、ほとんどの人におススメです



今年1月から個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象者が大幅に拡大されたことで、その注目度が高まっています。私も老後に向けた資産形成のツールとして極めて有利な制度だと考え、自分でも加入し、さらにブログでも推してきたわけです。ただし、iDeCoの利点である課税繰り延べによる優遇税制というのは、あくまで給付時に退職所得控除や公的年金等控除の枠内でこそ具現化するものですから、高額の退職金や年金がもらえる大企業のサラリーマンや公務員には、それほどメリットはないということも早くから指摘してきました。
【関連記事】
個人型確定拠出年金は加入者全員に大きな節税メリットがあるわけではない―高額の退職金を受け取る人は受け取り時の課税コストに注意
個人型確定拠出年金は格差是正のための制度でもある

しかし、ここにきて考えを改めました。やっぱりiDeCoは、ほとんどの人におススメの制度です。そう思ったきっかけは、相互リンクいただいているいっさんのエントリーを読んだことです。

iDeCo(イデコ)へ対応しない方がいい人はいるのか?(資産形成は時の流れにまかせて。)

まったく迂闊な話ですが、私にはこの視点が欠如していました。iDeCoは老後格差を是正する目的のほかに、ある種のリスクヘッジ機能もあるのです。

iDeCoの利点として、掛金全額が所得控除されることによる節税効果がアピールされているわけですが、これはあくまで課税繰り延べですから、実際に節税になるのかは給付時にどれだけ退職所得控除や公的年金等控除の控除枠を使えるかによって変わってきます。高額の退職金や年金を受け取る人は、それだけで控除枠を使い切る可能性が高く、結局はiDeCoで積み上げた資産に対して課税されてしまう場合がある。そうなると、単に税金を後で払うだけですから節税メリットは小さくなります。それどころか、原則60歳まで換金できないという流動性リスクだけが高まるとも考えることができます。

このため私は、高額の退職金や年金がもらえる大企業のサラリーマンや公務員は、無理にiDeCoに加入する必要はないと考えていました。基本的にiDeCoとは、退職金や年金が少ない中小零細企業のサラリーマンや自営業者のための制度であり、一種の老後格差是正のための制度だとも考えていたのです。

しかし、いっさんのエントリーを読んで、はたと気づきました。確かに今の時代、大企業のサラリーマンや公務員でも60歳まで安泰に過ごせる保証はないのです。実際にここ数年を振り返るだけでも、東京電力やシャープといった大企業が経営危機に見舞われ、大量リストラが行われました。今この瞬間も、東芝のような巨大名門企業が倒産の危機の真っただ中です。つまり、大企業のサラリーマンと言えども、退職金や企業年金は安泰ではない。実施に経営破綻したJALでは、退職金や企業年金が大幅に減額されたと聞きます。

公務員だって同じでしょう。将来、財政危機が深刻した際には、退職金や年金の大幅減額があってもおかしくありません。実際に公務員の共済年金(サラリーマンの厚生年金に相当)は、国民年金・厚生年金との一元化の過程で3階部分に相当する職域加算が廃止されたので、すでに減額となっています。さらに公務員にとって怖いのは、もともと雇用保障と引き換えに労働基本権が制限されているので、国がその気になればいくらでも報酬カットができることです。実際に東日本大震災の際には非常事態ということで賃金カットが行われました。将来、国や地方の財政危機が深刻化した際には、それこそ“政治的理由”から退職金の大幅削減があってもおかしくないと思います。

こうしたことを考えると、いっさんが指摘するように大企業のサラリーマンや公務員でも「リストラのリスク」「退職金大幅減額のリスク」を避けることはきないし、そのリスクは年々高まっているともいえる。そして、こうしたリスクに対するヘッジ手段として、うってつけなのがiDeCoなのです。例えば定年間近になって勤務先が倒産したり、リストラされたりで退職金が大幅減額となった場合、iDeCoに資産が積み上がっていれば、課税繰り延べ効果を最大限発揮した資産が手元に残りますから、どんなに助かることでしょう。そういう最悪のケースに備えるリスクヘッジ機能があるのです。

さらに強調しておきたいのが、iDeCoの隠れたメリットです。iDeCoの資産は、あくまで「公的年金制度」の一部ですから、給付されるまでは厳密な意味で個人の財産権がありません。このため、例えば自己破産した際に資産として差し押さえられないということです。言い方は悪いですが、合法的に“財産隠し”できる機能もあるのです。例えば高額のローンを抱えたサラリーマンがリストラされて、結果的に任意整理や自己破産しなければならなくなった場合でも、iDeCoの資産は債権回収の対象とはならないのです。

こうしたことを考えると、iDeCoはリスクヘッジの手段としても最強ではないでしょうか。ちなみにiDeCoの資産が債権回収の対象に成らないという点は、サラリーマンよりも自営業者にとって巨大なメリットです。だから自営業者は、どんなに収入が多くてもiDeCoには満額拠出した方がいい。収入の多い人ほど掛金が所得控除されることによる節税効果も高いですから。

給付時に課税されても"損した"と考えるべきではない


では、iDeCoに加入していた大企業のサラリーマンや公務員が無事に高額の退職金を手に入れ、結果的にiDeCoの資産に対して課税された場合はどのように考えればいいのでしょうか。これを“損した”と考えるべきではないのです。

そもそもiDeCoに対する優遇税制というのは課税繰り延べですから、もともと払わなければならなかった税金を後で払ったということにすぎないからです。それは"得した"ことにはなりませんが、"損した"ことにもなりません。あくまで中立です。それよりも円満なサラリーマン人生を全うでき、"勝ち組"として高額の退職金や年金を得ることができたことを喜ぶべきなのです。ここにiDeCoもまた"保険"の一種だということの真理があります(死亡保険に入った人が、保障期間中に死ねなかったことを嘆かないのとおなじ理屈です)。

だから、やっぱりiDeCoは、ほとんどの人におススメの制度です。フリーランス・自営業者や中小零細企業のサラリーマンにとっては老後に向けた資産形成と格差是正のための有力な武器となる。そして、大企業のサラリーマンや公務員にとっては、老後に向けた最強のリスクヘッジ手段として活用できるからです。

【蛇足】
いっさんの記事を読むまで、こんな簡単な理屈に気付かなかったのかという自分の迂闊さに驚きました。なぜ私がこの理屈に気付かなかったのかというと、それは私が中小零細企業のサラリーマンだからでしょう。無意識のうちに「大企業のサラリーマンや公務員はリストラや倒産とは無縁で、高額の退職金を貰うのが当たり前」と思い込んでいたのです。恐ろしいもので、やはり人間は自分の経験を基にしか想像力を働かすことができないということです。

【ご参考】
個人型確定拠出年金は金融機関によって手数料、商品ラインアップがまったく異なりますので、どの金融機関のプランに加入するのかが重要になります。現在、もっともお得なプランの金融機関はSBI証券と楽天証券です。SBI証券は資産残高50万円以上で、楽天証券は同10万円以上で運営管理手数料が無料になり、商品ラインアップも低コストなインデックスファンドが揃っています。
【関連記事】
SBI証券と楽天証券の個人型確定拠出年金(iDeCo)を徹底比較―加入者の属性や考え方によってそれぞれに優位性がある

個人型確定拠出年金への加入を検討している人は資料を取り寄せて、じっくりと研究してみてください。SBI証券と楽天証券の確定拠出年金プランの資料請求はネットから無料でできます。⇒SBI証券確定拠出年金積立プラン楽天証券確定拠出年金プラン

また、研究のために解説書を読むことも大事です。最新の情報を盛り込んだ解説書としては大江英樹さんの『はじめての確定拠出年金投資』山崎元さんの『確定拠出年金の教科書』竹川美奈子さんの『一番やさしい! 一番くわしい! 個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)活用入門』田村正之さんの『はじめての確定拠出年金』を挙げておきます。



スポンサードリンク