2017年1月16日

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016」が決定―運用会社に“できること”と“できない”こと



「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016」の表彰式が14日に開催されました。ついに私も参加してきました。表彰式後の懇親会も含めて、非常に楽しいイベントでした。当日の様子は、今回もすぱいくさんが素晴らしい速記録をアップしています。

【速報】投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016 結果発表【第一部 投資信託 これまでの10年、これからの10年】 #foy2016(1億円を貯めてみよう!chapter2 )
【速報】投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016 結果発表【第二部 結果発表】 #foy2016(同)

今回も1位から10位までのランキングを見て、いろいろと感心してしまいました。1位と2位のファンドに対する投信ブロガーの評価の差は、かなり高度な評価基準に基づくものだったのでは。それは、運用会社にとって“できること”と“できないこと”を峻別した上で、“できること”を実現するために努力し、結果を出していることへの評価のように感じるのです。

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016」の結果は次のようになりました。

1位  <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
2位  たわらノーロード先進国株式
3位  バンガード・トータル・ワールド・ストックETF
4位  iFree8資産バランス
5位  セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
6位  ひふみ投信
7位  ひふみプラス
8位  世界経済インデックスファンド
9位  <購入・換金手数料なし>ニッセイTOPIXインデックスファンド
10位 セゾン資産形成の達人ファンド

やはり注目は下馬評でもFOY2016の最有力候補と見られていた2ファンド、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」と「たわらノーロード先進国株式」のどちらが1位を獲るのかという点でしょう。<購入・換金手数料なし>シリーズは昨年11月に信託報酬を再度引き下げる一方、大きなトラッキングエラーが発生したことで運用の安定性への懸念が出ていました。これに対し、「たわらノーロード」シリーズはコストの安さこそ<購入・換金手数料なし>にわずかに劣りますが、マザーファンドの圧倒的な規模を生かして運用の安定性では明らかに他のファンドに勝ります。コストの安さと運用の安定性、どちらが投信ブロガーから評価されるのか非常に興味を持っていました。

ところが蓋を開けると、圧倒的な大差で<購入・換金手数料なし>が票を集めました。トラッキングエラーの事実が判明したのが投票期間中だったということもあり、早めに投票を済ませていた人は、この問題を知らずに<購入・換金手数料なし>に票を投じたことが影響したともいえるのですが、それでも意外なほどの大差がついてしまった。この現象をどのように理解すればいいのでしょうか。私は、やはり多くのブロガーが、意識的かそうでないかは別にして、極めて重要な評価基準を持っていたからだと思います。それは、運用会社が“できること”と“できないこと”の違いを峻別した上で、“できること”を実現するために努力し、結果を出したファンドを評価したということです。

インデックスファンドの運用においてトラッキングエラーというのは重大な問題です。しかし、マザーファンドの規模、資金流入の量とタイミング、為替や株式相場の変動など様々な不確実要素がありますから、トラッキングエラーが発生する可能性をゼロにすることは原理的に“できないこと”です。もちろん、どのインデックスファンドも、その可能性をできるだけゼロに近づけようと努力しているのですが、<購入・換金手数料なし>の場合、大口資金の流入と急激な為替変動のタイミングが不運にも重なってしまい、今回のトラッキングエラーが発生した。残念なことですが、運用会社に過失があったわけではありません。テールリスクが顕在化しただけです。

では、運用会社に“できること”とは何でしょうか。それは信託報酬を引き下げることです。特にインデックスファンドの場合、純資産残高が成長すればそれに合わせて信託報酬を引き下げていくのが本来の姿のはずです。しかし不思議なことに、本来なら運用会社が“できること”であるはずの信託報酬の引き下げが、日本の投信業界ではほとんど行われていないという悲しい現実があります。日本の投資信託のほとんどは“できること”さえ実行してこなかった。そんな中、<購入・換金手数料なし>シリーズは、それを断続的に実行した。日本の投信業界の中で、この動きは特筆すべきです。

しかも、信託報酬の引き下げというのは運用会社単独では実現しません。信託報酬を分け合う受託会社(信託銀行)と販売会社(銀行、証券)の協力が必要です。協力を取り付けるために、運用会社は彼らを説得しなければならない。“できること”と言えども、そのハードルは極めて高いのです。投資家の利益よりも金融機関の利益が重視されがちな日本の投資・運用業界において、それは並大抵の努力では実現しない。だから多くの場合、既存ファンドの信託報酬を引き下げるのではなく、より低コストなファンドを新規設定するという歪なことが繰り返されてきました。そういた歪な状態に事実上、初めて「ノー」を突きつけ、“できること”を実行するために努力し、実現させてしまったのが<購入・換金手数料なし>シリーズだったのです。その功績とトラッキングエラーを発生させてしまったことを比較すれば、私は歴史的意義としては前者のプラス面の方が後者のマイナス面よりも大きいと思う。どの運用会社にとっても信託報酬を引き下げることは“できること”だけれども、トラッキングエラーが発生する可能性をゼロにすることは“できない”ことだからです。

そういった観点から考えれば、今回のFOY2016で<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドが1位となり、たわらノーロード先進国株式が2位だったということは非常に納得のいく結果でした。あえて言うなら、たわらノーロードはチャンスを逃したのかもしれません。もし投票期間に間に合うタイミングで信託報酬を引き下げていれば、トップに立てたのでは。だから、たわらノーロードシリーズとアセットマネジメントOneには今後、ぜひ運用会社として“できること”を実行する努力を続けて欲しいと思います。それができれば、<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドの4連覇を阻止する最有力候補として一段と存在感を高めることができるでしょう。

そのほかの順位を見ると、やはりコストの安さに加えてユニークなコンセプトや運用哲学を持っているファンドが高く評価されていることが印象的でした。とくに「ひふみ投信」「ひふみプラス」そして「ひふみ年金」は事実上、同じファンドといえるわけですが、3ファンドの合計得票は2位の得票を上回っていたとか。そこで「ひふみシリーズ」として「特別賞」を与えるという試みが素晴らしい。また、「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」「世界経済インデックスファンド」「セゾン資産形成の達人ファンド」が根強い支持を集めていることは、ファンドのにとって独自のコンセプトや受益者への情報開示がいかに重要かということを裏付けています。

ちなみに私自身は今回、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」「ひふみ投信」「世界経済インデックスファンド」に投票しました。「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンドに投票した理由は、前述の通りです。「ひふみ投信」は、ある種の社会性を持った運用哲学を評価しました。「世界経済インデックスファンド」も、そのコンセプトがいまだに色あせていないことが投票の理由です。

また、FOY2016では、金融庁の森信親長官からメッセージが贈られるというサプライズもありました。これは信じられないくらい凄いことです。しかも、日本の投資・運用業界に対する極めて厳しい評価を表明した内容でした。

金融庁長官からのメッセージ(「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2016」公式サイト)

表彰式後の懇親会でカン・チュンドさんともちょっと話したのですが、金融庁長官が個人投資家の自主的な取り組みにこうした内容のメッセージを寄せるというのは、日本の投資・運用業界にとってエポックメーキングとなるかもしれないインパクトがあります。これが極めて重大な意味を持っていると考えているので、稿を改めて私の考えを書きたいと思います。

最後になにより、これだけのイベントを10年も手弁当で続けてきた実行委員の皆さんの努力には本当に頭が下がります。そうした努力が、それこそ金融庁長官がメッセージを寄せるほどの存在感へとつながっていったのです。本当にご苦労様でした。来年もぜひ投票したいと思います。また、表彰式後の懇親会では多くの投信ブロガーの皆さんと出会うことができ、素晴らしい体験になりました。こちらの主催者とスタッフの皆さんにも心からお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。
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