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2016年12月18日
特別法人税の廃止に向けて“全国の年金加入者よ、団結せよ!”
庶民の資産形成にとって個人型確定拠出年金(iDeCo)は非常に利点の多い制度ですが、やはりデメリットとして指摘しておかなければならないことがあります。それは、特別法人税の存在です。現在は課税が凍結されていますが、税制自体は生きていますので、いつ復活してもおかしくない。これが心配でiDeCoへの加入をためらってしまう人も少なくありません。そもそも特別法人税は既に存在理由の合理性を失っているともいえるので、本来であれば廃止されてしかるべきものですが、やはり国家というのは税金に関しては狡猾ですから、簡単に「廃止」せずに「凍結」という姑息な手段をとって、期を見て復活を狙っていると考えるべきです。こうした国家の動きに対抗するためには、それこそ特別法人税の課税対象となる年金加入者がもっと政治的に声を上げなければならないと思う。政治において数は力です。だから「全国の年金加入者よ、団結せよ!」と強調したい。
特別法人税は、iDeCoだけでなく企業型確定拠出年金や確定給付型企業年金など年金積立金(拠出金+運用益)に対して年率1.173%(国税1%、地方税0.173%)を課税するものです。利益でなく積立金全体に課税されますので、1.173%と言えども、その負担はかなりのものです。1999年度から課税が凍結されているので、2001年から制度が始まった確定拠出年金に対しては、まだ一度も課税されたことがありません。とはいえ、やはり年金運用にとっては“喉に刺さった小骨”のような存在です。
そもそも、なぜ特別法人税なるものが存在するのでしょうか。年金の掛け金は拠出時に所得控除(拠出者が企業の場合は損金計上)することで課税繰り延べされるわけですが、実はこの課税繰り延べに対する一種の遅延利息として特別法人税が設定されているのです。
そういった特別法人税の成り立ちを考えると、すでに存在理由そのものの合理性が失われているともいえます。なぜなら、特別法人税が創設された当時は日本の長期金利が5%とかあったわけですから、確かに課税繰り延べに対する遅延利息として1.173%程度の課税というのは合理性がありました。しかし現在の日本の長期金利は0%。しかも日銀はマイナス金利さえ実施しています。そのような経済状況下では、そもそも課税繰り延べに対する遅延利息という考え方自体が無理筋なのです(そういったことは税務当局も理解しているので、財務省は課税凍結を受け入れているともいえます)。
しかし、国家というのは税金に関しては狡猾なので、既に存在の合理性が失われたにも拘わらず、「廃止」ではなくあくまで「凍結」という姑息な手段で復活の機会をうかがっている。恐らく日本の長期金利が再び上昇して、課税の合理性が回復するときに備えているのでしょう。そういうやり方が姑息なのです。本来であれば合理性を失った税制は素直に廃止し、その後の状況の変化で再び課税の必要性が生じたのなら、そこで堂々と新たな税制を国民に提示して信を問うべきなのです。
こうしたことを考えると、特別法人税の問題は既に政治の問題です。合理性を失った税制の廃止を国民が政治に働きかけていかなければならない。すでに企業は政治に対して特別法人税の廃止を強く要望しており、そのため2017年1月から施行される改正確定拠出年金法でも参議院の付帯決議に特別法人税の廃止が盛り込まれました。企業、とくに確定給付型企業年金を採用している企業からすれば特別法人税の復活は年金負債の拡大に直結するので必死なのです。
今回、iDeCoの加入対象者が大幅に拡大することで、特別法人税の課税対象者も一気に増えることになります。だからiDeCo加入者も政治に対して特別法人税の廃止に向けて声を上げなければなりません。そして、民主政治において数は力です。特別法人税の課税対象者が増えれば増えるほど、それらが声を上げたときの政治力は大きくなる。だから、iDeCo加入者が増えれば増えるほど、特別法人税廃止に向けた国民運動の可能性が広がるともいえます。そのためにもiDeCoに限らず、特別法人税の課税対象者となる年金加入者は強い政治意識を持たなければなりません。なぜなら、政治問題をバカにして政治を無視している人は、やがて政治から無視されるからです。だからこそ「全国の年金加入者よ、団結せよ!」と言いたいのです。