2016年8月18日

まさに「1億総積み立て時代」だね―日経ヴェリタスの取材にちょっとだけ協力しました



「日経ヴェリタス」2016年8月14日~8月20日号に「1億総積み立て時代」という特集記事が出ています(一部の記事は「日経新聞」電子版でも読むことができます)。

1億総積み立て時代 個人型DC、とことん活用(「日本経済新聞」電子版)

2017年1月から確定拠出年金制度が改正され、原則として現役世代のすべてが加入資格を持つことを指摘した記事ですが、なかなか面白かったです。じつは、ちょっとだけ取材に協力したので私のコメントも匿名で紹介されています。

「1億総積み立て時代」とは、なかなか上手い言い方だと思いました。たしかに個人型確定拠出年金(個人型DC)の加入資格者が大幅に拡大されることで、ほとんどの日本人が積立投資にチャレンジするきっかけになる可能性は大です。というのも、個人型DCは運用益が非課税になるだけでなく、掛金が全額所得控除されるなど課税繰り延べ効果が大きいですから、退職所得控除や年金所得控除の枠内で大幅な節税効果を発揮できます。多くの日本人は“税金=年貢”だと思っているので、節税メリットを強調されると弱いです。

なにより個人型DCが普及することで、まだ日本で根強い投資への偏見が少しでも解消されればとも思います。日本では「投資はギャンブル」とか「投資は怖い」という人が多いわけですが、投資はギャンブルではないし、きちんと分散されたアセットアロケーションで投資すれば、怖いことはなにもありません。クレジットカードのリボ払いとかのほうが、よっぽど怖いです。

それと、紙面で私もコメントしていますが、個人型DCは年間拠出額に制限があるので、現実問題として積み立てでしか拠出できません。積立投資は投資効率に優れるわけではないし、リスクも低下しませんが、少なくとも投資対象の価格変動に対する心理的負担は小さくなる。あくまで気休めの問題ですが、こういった気休めがないと、庶民には受け入れられないのです。

また、無理にリスク資産に投資しなくても構わないという記事の指摘は重要です。
NISAと違い、DCは定期預金など元本保証型の金融商品を積み立てることもできる。投資に抵抗のある人は、まずは入り口部分の掛け金の所得控除メリットだけを狙ってもいい。
現在、所得税+住民税の最低税率は15%ですから、掛金全額を元本保障商品で積み立てても毎年確実に拠出額の15%の税金が繰り延べされます。換金時に適用される退職所得控除や年金所得控除の中身はひとそれぞれなので断言はできませんが、少なくとも個人が買うことのできる金融商品のなかで“もっともお得”となる可能性は高いです。

なにより今回の制度改正が意味するところを認識しておくことも重要でしょう。記事でも次のように書いています。
公的年金の目減りが今後避けられないなか、各自が「自助努力」で老後資金を上乗せしてほしい──。節税メリットが大きい個人型DCの門戸拡大は、国からの意思表示と映る。
あまり公的年金制度に対する不安を煽るのはどうかとも思いますが、やはり国が税収減となる制度の拡大をあえて進めたという事実が意味するところは大きい。そのことを考えると、個人型DCの場合は掛金の年間限度額が27万6000円ですから、その程度の金額を老後に備えて蓄えておくのは最低限の自助努力ともいえるわけです。

そんなわけで、今週の日経ヴェリタスの特集はタイムリーだったと思います。7月に開催された「インデックス投資ナイト」の写真まで載っているのも興味深いかったです。関心のある方は読んでみてはいかがでしょうか(自分のコメントが載っているので、ちょっとだけポジショントークも含んでいます・笑)。⇒日経ヴェリタス 2016年8月14日号

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