2016年6月15日

楽天証券のラップ口座「楽ラップ」は、まずは合格点かな



予告通り楽天証券がラップ口座「楽ラップ」ののサービスを7月2日から開始すると発表しました。すでに特設サイトも開設されています。



予想通り、DIAMアセットマネジメントの超低コストインデックスファンドシリーズ「たわらノーロード<ラップ向け>」が運用商品にラインアップされています。さらに、謎に包まれていたステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)の超低コストインデックスファンドも楽ラップで取り扱うことに。なるほど。おそらくラップ専用ファンドだとは思っていましたが、「楽ラップ」でしたか。それで肝心の総コストですが、ラップ手数料(投資一任手数料+運用管理手数料)を合わせても年1%未満(税抜)に収まるように設計されています。ラップ口座についてはいろいろと意見があるのですが、総コスト1%未満なら、まずは合格点だと思います。ようやくまともなコスト体系のラップ口座が登場したという点では評価できるといえるでしょう。

楽天証券のプレスリリースによると、楽ラップの特徴は「業界最低水準の手数料(最大年率0.990%(税込))」「最低投資額10万円から」「低コストファンドへの投資」「グローバル・トップ・ププレーヤーとの協業」「ロボ・アドバイザーによるポートフォリオ選定」ということになります。実際にラップ手数料は比較的低廉ですし、商品ラインアップも極めて低コストな商品で構成されています(以下は、プレスリリースからの引用)。





やはり信託報酬+ラップ手数料が年1%未満というのは評価できます。信託報酬が年2%近いようなボッタクリのアクティブファンドが幅を利かせる日本の運用業界にとって、いろいろとインパクトがあるのではないでしょうか。ネット証券の強みであるコスト競争力に加え、ロボ・アドバイザーなど最新のフィンテックを導入することでコストを抑えるという方法は分かりやすい。あと、内容はよくわかりませんがSSGAがマルチ・アセット・ポートフォリオサービスなるものを楽ラップに提供してくれるそうです。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ、楽天証券へのマルチ・アセット・ポートフォリオ・サービス提供開始(楽天証券)

SSGAのサイトを見ると目標ボラティリティに合わせて株式の投資比率を調整してくれるサービスだとか。ロボ・アドバイザーと合わせて実力のほどは未知数ですが、マーケティング的にはウケそうです。

基本的にラップ口座というのは運用を金融機関に丸投げするので無駄なコストもかかるし、「自分で選択・決断する」という投資の大原則から外れるサービスですから、投資の本筋とは言えません。しかし、すべての人が自分で投資について勉強できるかといえば、現実問題として難しい。そもそも勉強したくない人もいるわけです。そんな人でも投資をしたいとなったときに、合理的な手数料で投資を金融機関に一任するというのは、それはそれで意義のあることです。

ただ問題は、大手証券会社や銀行が提供しているラップ口座は、あまりにラップ手数料が高すぎる。運用商品も不誠実なものが多い。結局、大手証券会社社員や銀行員の高い給料の原資が受益者に転嫁されているとしか思えない。だから手数料が不合理だというのです。その点、楽ラップの手数料水準はまだ合理的に思えますし、運用商品も良心的です。投資はしたいけれども、投資の勉強なんか一切したくないという人にとっては、ひとつの選択肢かもしれません。私も年をとって脳の機能が低下してきたら、低コストなラップ口座を使ってみようかな。

でも、ネット証券を使える人に需要があるのかな


そんなわけで、まずまず良心的なサービスの楽ラップですが、ちょっと疑問点も。楽ラップを契約するためには楽天証券に口座を開かないといけません。でも、そもそもネット証券に口座を開くような人が、はたしてラップ口座を必要としているのかな。ネット証券でインデックス投資をするような人なら、普通に自分で「たわらノーロード」を使ってポートフォリオを組みそうな気がします。それなら楽ラップよりもはるかに低コストで投資できます。また、ポートフォリオの構成比率を市場環境に合わせて調整するという方法についても、それなりに投資リテラシーのある人は懐疑的な場合が多い。

結局、ラップ口座が必要なのはネット証券も使えないような高齢者や投資に何の関心も持たない(でも投資したい)人などでしょう。こういった層に楽天証券としてどのようにアプローチするつもりなのでしょうか。そのあたりの工夫が、楽ラップの今後を決定するような気がします。

ただ、楽ラップの登場でラップ口座でも低コスト化の波が起こることは良いことです。楽ラップに刺激されて、それこそ大手証券や銀行が対面型ラップ口座でも手数料を引き下げるような動きがあれば、それこそ本当にラップ口座を必要としている層の人にとっては有益なことです。その意味では、楽ラップのコスト水準というのは、やはり評価するべきと思えるのです。

【蛇足】
7月30日に“楽ラップ”リリース記念セミナーが東京で開催されます。

楽天証券のファンドラップ "楽ラップ" リリース記念セミナー(東京)

ゲストスピーカーには、森永卓郎さん、竹川美奈子さん、山崎元さんなどが登場します。普段、「ラップ口座はクソだ」とあちこちで公言している山崎元さんを呼ぶあたりに楽天証券の自信がうかがえるのですが、対する山崎さんが楽ラップに対してどのように評価するかは大いに気になるところ。もしセミナーに参加するブロガーさんがいれば、レポよろしくお願いします。

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