豊島逸夫さんがブログで自分の相場人生を回顧しているのですが、これが非常に面白い。ハードなトレーディングの中に身を置いた人が、最後に到達した境地というのは、非常に参考になります。
私の相場人生(豊島逸夫の手帖)
とくに最後に指摘している次の言葉は、個人投資家の全員がよく噛みしめる必要があるでしょう。
自分が儲けているときは、誰かが損している、いわゆるゼロサム・ゲームの虚しさを痛感したものだ。最後の「儲かるのは業者だけだ」という言葉は、非常に重い。なにしろ、その“業者”に長年籍を置いた人の言葉だからです。
そんな体験があればこそ、今、独立して自由な身になり、素人がレバレッジ投機することが、どれほど無謀な試みであるか、を説いている。それで儲かるのは業者だけだ。
株式投資もだんだんと慣れてくると、手数料の高さが気になるものです。とくに個別株投資の場合は、保有コストがほとんどかからないだけに売買手数料の負担感は相当なものがあります。しかし、この感覚は大事なのでしょう。最近では手数料の安いネット証券が普及したのでかなりマシになりましたが、それでも店頭営業が中心の大手証券会社では、いまでもびっくりするような水準の手数料を取っていますから、知らないでいると少しばかり儲けたとしても、実際は手数料負けという事態に陥らないとも限りません。
よく株の短期売買は儲からないといわれる根拠のひとつが、この売買手数料の高さ。「トレードが成功していれば手数料など問題にならない」という意見もあるのですが、なかなかそうは問屋が卸してくれません。ちなみに投資信託の場合、インデックスファンドとアクティブファンドを比較して、なかなかアクティブファンドがインデックスファンドをリターンで上回れないのは、ポートフォリオの回転率の高さに起因する売買手数料負担がバカにならず、結局はその分だけリターンでインデックスに劣後してしまう場合が少なくないから。実際に運用報告書の実質コストを比較すれば、それは一目瞭然です。
プロのファンドマネージャー同士の競争でもこうなのですから、いわんや個人投資家をやということでしょう。実際に株式投資で資産形成に成功したベテラン投資家の多くが短期売買の不利を指摘しているのには理由があるわけです。その意味でも、豊島さんのもうひとつのエントリーも、納得も得心もできるものでした。
郵政株、いつ売るか?(豊島逸夫の手帖)
豊島さんの次の言葉も個人投資家はよく噛みしめるべきでしょう。
筆者は、株式投資について、buy and forget 買ったら忘れろ、目先の材料に一喜一憂して、余計な売買しても、儲かるのは業者だけだ、と説く。この「buy and forget」という感覚が、株式投資ではとても大切な感覚だということをしみじみと感じます。