投信コスト2極化 20~40代つかむ超格安型(真相深層)(日本経済新聞電子版)
低コストインデックスファンドシリーズ、購入・換金手数料なしシリーズを設定・運用するニッセイアセットマネジメントが、さらなる信託報酬の引き下げを11月に実施するとの情報が出てきました。まだ正式発表はありませんので、どのファンドが対象になるのかも含めて正確なところは不明ですが、良質な著書もあり、日経新聞の編集委員でもある田村正之さんの署名記事なので、たんなる飛ばし記事とは思えません。これが実現すると、記事にあるように「投信は“コスト革命”といえる時代に突入した」といえるかもしれません。
記事によると、複数のネット証券関係者から田村さんに次のような情報がもたらされたそうです。
「まだ公表されていないが、ニッセイアセットマネジメントから、11月にネット販売向け投信のコストを大きく引き下げると連絡を受けた。投信は“コスト革命”といえる時代に突入した」。複数のネット証券会社幹部が口をそろえる。背景にあるのは競争の激化です。とくに9月に三井住友アセットマネジメントが確定拠出年金(DC)専用ファンドの一般販売を開放したことのインパクトが大きかったようです。なにしろ三井住友AMのDC専用ファンドはケタ違いの低コストですから、これまでインデックスファンドの低コスト競争で存在感を高めてきたニッセイAMとしては放置できなかったということでしょう。ここで運用会社に事態の重大性を気付かせたのがネットの声だというのも面白い。記事には次のように書かれています。
インターネットは若い世代の書き込みですぐに「祭り」状態になった。「グッジョブ!」「最終兵器だ」。三井住友の横山邦男社長は「予想外の反響の大きさに驚いた。低コストで長期で資産形成したい若年層への手ごたえを感じた」と話す。やっぱり、ネットの片隅でも声を上げることが大事なんですよ。ネットの声に促される形で運用会社が真剣に信託報酬のコスト競争に取り組むようになったという意味でも、今回の報道はすごい意味があるのかもしれません。
数年前から「購入・換金手数料なしシリーズ」で低コスト投信を広げてきたのがニッセイ。「若い世代は、ネットを駆使してコストを比較して買う。やがて資産運用の中心的な層に育つ彼らに、いち早く使ってもらいたい」(上原秀信取締役)という狙いだった。
しかし9月の三井住友の投信はニッセイの同種の信報を下回った。「ニッセイは11月に同シリーズの投信の信報を三井住友よりさらに下げるようだ」(ネット証券幹部)。「超低コストはニッセイ」というブランドを、死守する試みだ。
さて、今回の報道の通りだとすると、ニッセイAMは三井住友AMの攻勢に対してガチンコで全面対決を挑むということです。そうなると、気になることがひとつ。低コストインデックスファンドの分野で資産残高を含めてリードしてきた三井住友トラスト・アセットマネジメントのSMTシリーズと、三菱UFJ国際投信のeMAXISシリーズの出方です。私もこの2シリーズをコアに積立投資しているので、個人的にも大変気になる。
ひとつはっきりしているのは、両シリーズともここにきて、コモディティや米国REIT、スマートベータ指数に連動するファンドなどのラインナップを拡大していることです。つまり一種のニッチ戦略でしょう。それはそれで意味があると思うのですが、やはり低コストインデックスファンドシリーズの最大手2社として、コスト競争から逃げるのは受益者としても寂しいものがあります。また、ニッチ戦略だけでは、いずれジリ貧になる危険性もあります。なぜなら、なんと言ってもインデックスファンドによる投資対象は「国内株式」「海外株式」「国内債券」「海外債券」の伝統4資産が中心です。ここで勝負できないようでは、いずれ受益者の信頼をつなぎとめるのが難しくなるのではないでしょうか。
そういうことも含めて、今後のニッセイAMの動きに注目すると同時に、三井住友トラストAMと三菱UFJ国際投信の先行2社の対抗策も気になるところです。