2025年の日本の株式市場も明日30日の大納会で終わりとなります。今年も“トランプ関税ショック”など波乱もありながら、全体として株価は好調に推移したと言えそうです。自分の資産状況を見直してみても2025年は資産が順調に増えた1年でした。金融資産総額は安定して5,000万円を超える状態となり、野村総研が定義するところのいわゆる“準富裕層”に定着できました。一方、昨今のインフレの影響も大きく受けており、資産構成に不吉の影も見えています。その意味で、2025年は“生活防衛手段としての資産運用”という考え方が一段とリアルになった年だったと思います。そのあたりも踏まえ、少し早いですが今年1年間で資産がどれだけ増えたのか簡単に計算した上で紹介したいと思います。
例年と同様、資産管理に活用している「マネーフォワードME」を使って確認しました。あくまで簡便な計算なので厳密な数字ではありません。また、例によって具体的な金額は書きません。まず、リスク資産(個別株、投資信託、年金<iDeCo+個人年金保険>)と無リスク資産(普通預金、定期預金)を合わせた金融総資産は2024年12月末との比較で9.9%増となりました。今年は収入がそれほど増えていないのですが、リスク資産が前年比16.5%増となったこと全体を押し上げています。もちろん積立投資や個別株の新規購入による追加資金投入がありますから、それを考慮したディーツ簡便法による年間パフォーマンスは13.5%増となりました。グラフで見ると次のようになります。
グラフでは株式(現物)が大きなウエートを占めますが、ここには自分が買った日米の個別株のほかに祖父から受け継いだ関西電力株と、インデックス投資をスタートさせたときに一括投資したETFが含まれています。目を引くの3月の大幅下落ですが、これは“トランプ関税ショック”。しかし、その後は右肩上がりで上昇しており、紆余曲折がありながらも総じて堅調な市場環境の恩恵を享受したことがよく分かります。
また、今年は海外株と日本株の両方が素晴らしいパフォーマンスを発揮しています。私は、海外株式はインデックスファンドといくつかの米国個別株、日本株は個別株を中心に保有していますが、どちらも大きく上昇しています。海外かb水鬼は円安効果による上昇が大きく、日本株に関しては日経平均株価が5万円を超えるなど昨今の株価好調の恩恵を受けているわけです。
このため無リスク資産を含めた資産総額は5000万円を大きく超える水準となり、野村総研が規定するところの“準富裕層”に定着できました。私のような氷河期世代の零細企業サラリーマンで、小さな子供を抱えているような家庭でも適切な家計管理と無理のない範囲での投資を粘り強く続けていれば、それなりの資産形成が可能だということです。
一方、資産構成を詳細に見ると不吉な影も見えています。資産全体の増加率が、リスク資産の増加率を下回っているのです。つまり、この1年間で無リスク資産すなわち現預金が減少しました。理由は簡単です。今年、次女が生まれて扶養家族が増えたこともあるのですが、やはり最近のインフレによって支出が大幅に増加しているからです。
つまり、もしきちんとリスク資産による運用をしていなかったら、今年の資産総額はマイナスに転じていたということです。これは重大なことを示唆しています。それは、現在のようなインフレ経済の下ではインフレ耐性のあるリスク資産による運用が無ければ、ほぼ間違いなく資産は減少し、購買力を失っていくということです。つまり、インフレ経済の下での資産運用というのは、もはや儲けることが目的ではありません。購買力を維持するための、いわば生活防衛手段なのです。
日本は長らくデフレ経済が続きました。そうした環境下では、株式投資といえば“儲ける”ことが目的だと思われがちで、どこかチャラチャラしたイメージが付きまとったものです。しかし、いまから考えれば、投資が軽く見られていたのは牧歌的な時代だったのですが。現在のようなインフレ経済の下では、投資というのは実際の生活を守るための真摯な取り組みとならざるを得なくなったわけです。
そして、これは何も日本特有の現象ではありません。それどころか、欧米や新興国はほとんどが基本的にインフレ社会です。そういった社会では、投資は家庭の経済活動としてごく当たり前の物として定着しています。これこそ日本と比べて諸外国は家計に占めるリスク資産の割合が高い理由です。そして日本もいよいよ“投資なんかしなくてもいい”と言っていられる牧歌的な時代から、諸外国のように個人がリスク資産での運用をせざるを得ない時代に突入したのでしょう。
私はいま、自分が準富裕層になった喜びよりも、インフレによる購買力の減退という不吉の影におびえています。その意味で2025年の運用結果と資産状況の振り返りは、いろいろと考えさせられるものとなりました。

