サテライトポートフォリオで少しだけ積立投資しているピクテ投信投資顧問の低コストアクティブファンド「iTrust世界株式」の2022年9月次運用報告書の定例ウオッチです。「iTrust世界株式」の9月の騰落率は-4.74%、参考指数であるMSCIワールド・インデックス(ネット配当込み)の騰落率は-4.99%でした。9月は大幅な下落相場となったものの参考指数わずかにアウトパフォームしています。世界的なインフレ高進で欧米の中央銀行がさらなる利上げに動いたこともあり、株式市場の先行きは非常に暗くなっています。そうした中、ピクテがポートフォリオへの組み入れでオーバーウェイトを推奨する唯一の地域が日本だという興味深い状況になっています。
8月の米国消費者物価指数の伸びが市場予想を上回ったことから、9 月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で3会合連続となる0.75%の大幅利上げの決定や引き締め姿勢の継続が示されたことや、欧州中央銀行(ECB)をはじめ欧州の主要中銀も積極的な利上げを続けるとの見方を受けて世界的に景気後退懸念が強まりました。このため9月の株式市場は月末にかけて下げ幅を拡大し、月間でも大幅な下落となっています。
世界的な金融引き締めとエネルギー高騰が世界経済の先行きにも大きな影を落とし始めています。「iTrust」シリーズの受益者に配信される機関投資家向けレポート「Barometer」10月号によると、各国とも景気後退の危機に瀕しており、このためもう一段の株価調整リスクがあると指摘。このため引き続き株式をアンダーウェイト推奨としています。地域別では、これまでオーバーウェイト推奨だった英国株がニュートラルに引き下げられました。トラス政権による経済失政による英ポンド安とインフレで大幅な利上げを余儀なくされるとの見方が強まったからです。
この結果、主要地域の株式は米国株とユーロ圏株が別既にアンダーウェイト推奨となっており、英国もスイス、中国、新興国(中国を除く)、太平洋地域(日本を除く)と並んでニュートラル推奨となります。面白いことに主要地域では日本株だけがオーバーウェイト推奨を維持することになりました。
海外の運用会社から見ると、日本に対する評価が意外と高い。ピクテが機関投資家向けに配信しているマクロ経済データ集「マクロ・ウォッチ」最新版を見ても興味深いデータがありました。ピクテが独自に2023年の主要国及び地域のGDP成長率を予想していて、世界が+2.5%、先進国+1.5%、新興国+4.1%となります。とくに興味深いのが先進国の国・地域別予想、米国+1.4%、ユーロ圏+0.2%、英国0%、ドイツにいたっては-0.3%と予想され、いずれも先進国平均を下回ります。これに対して日本はなんと+1.9%。これは主要先進国の中でもっとも高い成長率となります。
どうも日本国内だけを見て、最近の物価指数上昇や円安を理由に「日本オワッタ」と連呼する人が多いのですが、海外から見ると別の景色が見えてきます。米国や欧州では物価上昇率は10%に迫り、エネルギー料金は倍以上になっています。はっきり言って、日本程度の物価上昇率で「オワッタ」ならば、欧米は「既に死んでいる」。結局、自分の身の回りの状況だけを見て世の中全体を判断する姿勢が幼稚なのです。
こういうことに気づくきっかけになるのも、国際分散投資の効能でしょう。投資を通じて海外の経済情勢をウオッチしていると、意外との日本の善戦が浮き彫りになるのでした。