2022年5月20日

投資家の質の違い―下げ相場におけるアクティブファンドとパッシブファンド

 

世界的なインフレ傾向が鮮明となり、米国の利上げも加速していることから株式市場は完全に下げ相場に突入したようです。そんな中、アクティブファンドとパッシブファンドの資金フローが対照的な動きとなっています。なんとなくですが、投資家の質の違いというもを感じます。

モーニングスターによると、2022年4月の国内ファンド(ETFを除く)の資金フローは、アクティブファンドとパッシブファンドでまったく異なる動きとなったそうです。


アクティブファンドは531億円の純資金流入ながら、流入額は前月比で2741億円(83.8%減)と大幅減少となりました。一方、パッシプファンドは3112億円の純資金流入です。こちらも高水準だった前月からは減少ですが、引き続き旺盛な資金流入が続いています。

ようするに、現在のような下げ相場になると、アクティブファンドの売れ行きが目に見えて鈍るのに対して、パッシブファンドは相場動向に関わらず安定して推移していることがうかがえます。やはりパッシブファンドはNISAなどを通じて購入されているものが多く、積立投資によって安定的に売れているということでしょう。

これを見て、アクティブファンドを購入している投資家と、パッシブファンドを購入している投資家では、質がかなり異なるのだという印象を強く持ちました。端的に言うと、アクティブファンドを購入する投資家は、相場が高値になるとファンドを購入し、安くなると買わなくということです。逆にパッシブファンドを購入している投資家は、相場の動向に関わらず淡々と購入している人が多いのでしょう。

こうした投資家の行動の違いは、意外とファンドのリターンにも影響するような気がします。アクティブ運用は“安く買って、高く売る”が基本ですから、本来であればアクティブファンドにとって下げ相場の時こそポートフォリオを仕込む好機です。ところが、せっかくの仕込みの好機に肝心の資金流入が細る。場合によっては資金流出にすらなります。そうなると、どんなに優れたアクティブファンドでも、なかなか思うような運用ができなくなります。

一方、パッシブファンドは下げ相場になっても安定的に資金が流にしていますから、インデックスに従って下落した株式を淡々と積み上げていくことになります。少なくとも資金フローの面では、ファンドとしての運用体制は盤石でしょう。そして、ふたたび相場が上昇に転じた際には、市場全体を割安で仕込んだ効果が一気に出てくるということです。

アクティブファンドがパッシブファンドを上回るリターンを上げるのは難しいという指摘がありますが、その要因の一端は下げ相場における資金フローの差にあるのでは。もっと言うと、アクティブファンドを購入する投資家と、パッシブファンドを購入する投資家の質の違いが、リターンの差になるということです。

5月に入って、株式市場はもう一段の下げ局面に突入しました。はたしてアクティブファンドとパッシブファンドの資金フローはどうなってるのか。そして、その差が今後、リターンにどういった影響を与えるのか。なかなか興味が尽きません。

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