三井住友トラスト・アセットマネジメントが3月29日付で新たに超低コストインデックスファンドシリーズ「My SMT」7ファンドを設定しました。
My SMT インデックスシリーズ7ファンドの新規設定(2022年3月29日)が決定しました。(三井住友トラスト・セットマネジメント)
いずれも“業界最低水準”をうたう低コストとなっています。ただ、紆余曲折もあったようです。どうやら「My SMT」シリーズ当初、11ファンドの新規設定を予定していたようですが、なぜか4ファンドは設定中止となりました。
三井住友トラストAMはかつて、低コストインデックスファンドの草分け的存在である「SMT」(旧STAM)シリーズで人気を博していたのですが、ニッセイアセットマネジメントの「<購入・換金手数料なし>」シリーズや、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim」シリーズなどが登場したことによるインデックスファンドの低コスト競争で後れをとり、最近では存在感が低下しています。
その後、「SMT」シリーズよりも低コストな「i‐SMT」シリーズを新規設定することで巻き返しを図りましたが、やはり「<購入・換金手数料なし>」シリーズと「eMAXIS Slim」シリーズによる断続的な信託報酬引き下げにまったく追随できず、すぐにコスト水準も陳腐化したことで純資産残高も低迷を続けています。
そこで今回、さらに低コストな「My SMT」シリーズの設定に踏み切ったわけですが、なかなか先行きは厳しいものがあると思います。そもそも、ファンドの新規設定で低コスト化を図るという方法が、既に周回遅れになっています。現在のインデックスファンドの低コスト競争の主要課題は、既存ファンドの信託報酬引き下げだからです。
なぜなら、ファンドの新規設定による低コスト化は既存ファンドの受益者の利益を軽視するやり方だからです。だから、「eMAXIS Slim」シリーズでインデックスファンドの低コスト化をリードしてきた三菱UFJ国際投信ですら、信託報酬が相対的に割高となった「eMAXIS」シリーズの併売を続けていることを「一物二価」問題としてインデックス投資家から批判されているわけです。
こうしたことを考えると、三井住友トラストAMによる今回の「My SMT」シリーズが抱える問題がはっきりします。当初予定されていた11ファンドが設定されていれば、日経225、TOPIX、先進国株式、新興国株式に投資する事実上同じインデックスファンドが「SMT」「i‐SMT」そして「My SMT」それぞれに異なる信託報酬で存在することになります。「一物二価」どころか「一物三価」です。さすがにこれは既存ファンドの受益者を軽視しすぎでしょう。案の定、これら4資産カテゴリーに投資するファンドは設定中止となったわけです。
ここにきてインデックスファンドの「一物二価」問題を金融庁も問題視し始めました。このため是正に向けた動きもあり、運用会社も事実上同じファンドの信託報酬を同一水準に近づけるケースが増えています。そんな中での「My SMT」新規設定というのは、なんとも周回遅れ。おまけに4ファンドが設定中止になるという迷走です。それこそ金融庁あたりから“天の声”があったのではないと勘繰りたくなる。
低コストなファンドが登場することは投資家にとって歓迎すべきことですから、三井住友トラストAMの意気込みは大いに評価できます。ただ、もっと他のやり方があったのでは。正直な話、せっかくの「My SMT」シリーズも出鼻をくじかれたことで先行きはなかなか厳しそうです。三井住友トラストAMは実績も豊富で、個人的にも好きな運用会社なので頑張って欲しい。そのためにも、もっと別の方法で踏み込んだ取り組みを期待したいものです。