2019年9月27日

独立系運用会社の強さの秘密―哲学を語ることの重要性



モーニングスターで独立系運用会社特集の掲載が始まっています。

独立系運用会社特集 脚光を浴びる独立系運用会社(モーニングスター)

これが非常に面白いです。かつては独立系運用会社と言えば一部の投信マニアの間でだけで熱烈に支持されているという見方が強かったのですが、最近はその存在感が高まってきたということでしょう。なぜ独立系運用会社が支持されるのか。その強さに秘密がよくわかる特集です。

独立系運用会社の先駆けとなる「さわかみファンド」が登場したのが1999年。それから20年を経て主な独立系10社の運用ファンドは19本を数えます。純資産残高も約6000億円に達する「ひふみプラス」を筆頭に、1000億円を超えるファンドが4本になるなど、その存在感が徐々に高まってきました。記事で紹介されている独立系ファンドの歴史を見ると、いろいろとターニングポイントがあるのですが、やはり未開の荒野を開いたさわかみ投信の意義はどれほど強調しても、しすぎることはないでしょう。もし誰かが「戦後日本投資信託発達史」を書くなら、澤上篤人さんの挑戦は1つの章をあてて記述するぐらいの意義があるのです。

なぜ独立系運用会社は少しづつ、しかし確実に存在感を高めることができたのでしょうか。これも特集記事が的確に指摘しています。いずれの運用会社も組成・運用するファンドの数を抑え、さらに販売は積立投資を中心にすることで長期投資を実践するという丁寧な運営を続けてきたからです。大手運用会社が多くのファンドを粗製乱造し、短期売買や乗り換え販売に血道を上げる中で、それに対する一種の“アンチテーゼ”として独立系運用会社が登場したということがよくわかります。そうした姿勢が、既存の大手運用会社のやり方に不満を感じていた一部の“本物志向”の個人投資家から支持されたということです。

現在、大手の運用会社や金融機関は投資信託の組成・運用と販売に関して岐路に立たされています。従来のやり方が社会的に批判され、ビジネスモデルの根本的転換を余儀なくされつつあるともいえるでしょう。そうした中、独立系運用会社のこれまでの歩みは大いに研究する価値があるはず。投資商品である以上、リターンが求められるのは当たり前であり、それに加えて受益者にどのような付加価値を提供することができるのかという問題です。比較的高い信託報酬を取っているアクティブファンドは、とくにそうでしょう。

もちろん、受益者に提供する付加価値はファンドによって様々でしょうし、また多様であるべきです。ただ、方法論の原点はひとつだけでしょう。それは受益者としっかりと対話し、自らの運用の哲学を粘り強く語ることです。そして、特集に登場した独立系運用会社のトップは、いずれも明確に自分の言葉で自社の運用哲学を語っていました。これを20年間、受益者に対して直接語り掛け続けたのです。それこそが独立系運用会社の強さの秘密の根幹にあるものだと改めて感じました。

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