2018年10月18日

日本株に期待してフル・オーバーウェイト―「iTrust世界株式」の2018年9月の運用成績



サテライトポートフォリオで少しだけ積立購入しているピクテ投信投資顧問の低コストアクティブファンド「iTrust世界株式」の2018年9月次運用報告が出たので定例ウオッチです。「iTrust世界株式」の9月の騰落率は+3.22%、参考指数であるMSCIワールド・インデックス(ネット配当込み)の騰落率は+2.77%となり、再び参考指数を大きくアウトパフォームしました。米国の金利上昇や米中貿易戦争、新興国の通貨不安など不透明な市場環境ですが、なかなか見事な運用を見せてくれました。そんなピクテですが、いま一番にフル・オーバーウェイトを推奨しているのが日本株だというのも興味深いものがあります。

9月の株式相場は米中貿易戦争激化への懸念や半導体市況へのと不透明感などから月初に大きく下落してスタートしました。しかし、その後は原油高を背景にエネルギーセクターが大きく上昇し、月央には米国の追加関税と中国の報復関税が予想より緩やかな措置だったとの見方から上昇基調となりました。業種別では、エネルギー、ヘルスケア、資本財・サービスが大きく上昇し、一般消費財・サービスも平均を上回る上昇となります。金融も底堅く推移しました。一方、情報技術は、月初から大きく下落しました。

そうした中、「iTrust世界株式」の9月末段階の組み入れ上位銘柄が興味深い。9位にソニーが登場しています。これまで日本の銘柄がポートフォリオの上位に来ることは少なかったので意外でしたが、「iTrust」の受益者に配信されるピクテの機関投資家向けレポート「Barometer」2018年10月号を読んで納得。ピクテは日本株に大きな期待を寄せていることがわかったからです。

ピクテのバリュエーション分析によると、先進国の中で米国が最も割高であるのに対し、日本は最も割安。しかも中央銀行の金融政策も米国が引き締めに動くのに対して日本は緩和姿勢を継続しています。このためピクテの景気先行指数、債券利回り、円レートに基づいた分析では、日本株が世界の他市場との比較で適正水準から26%も割安だとか。この点を世界の投資家も気づいており、それが9月の大幅な上昇の背景にあるとのことです。この傾向は依然として続いていることから、ピクテでは、米国株のアンダーウェイトと日本株のフル・オーバーウェイト推奨を維持しています。

また、不安感が増している新興国株式に対しても強気の姿勢。バリュエーションは引き続き魅力的であり、新興国の経済活動と企業業績の先行きを示唆する指標も総じて強い回復力を示しています。新興国通貨に対するドル高(対ドルの新興国通貨安)の進行も限定的だというのがピクテの見立て。このため新興国株式もオーバーウェイト推奨を維持しました。

一方、セクター別ではテクノロジー・セクターが年初来のパフォーマンスで他のセクターを圧倒していますが、過去3カ月を見ると割高感が際立つ。このためテクノロジー・セクターが牽引している米国株についてはアンダーウェイトが継続となります。ただ、テクノロジー・セクターもテクニカル指標は良好。現在、S&PとMSCIが算出する株価指数でフェイスブックやアルファベットなどを新設のコミュニケーションサービス・セクターに移す作業が進めらており、これが完了すれば状況も変わることになりそうです。

最近は日本の個人投資家の間でも米国株が人気。逆に日本株については“オワコン論”さえ囁かれることが少なくありません。また、新興国株式については非常に低い評価が下されがちです。しかし、ピクテなど海外の運用会社からすれば、どうもそれほど事態は単純ではなさそう。“人の行く裏に道あり花の山”で、いまこそ案外と日本株や新興国株式に投資妙味があるのかもしれません。やはりこの辺りが投資の面白さと言えそうです。

【ご参考】
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