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2018年8月19日
GPIF基本ポートフォリオ型バランスファンド「iFree年金バランス」など3ファンドが新登場
大和証券投資信託委託の低コストインデックスファンドシリーズ「iFree」に8月31日付で新たに3ファンドが設定されます。
新ファンドのお知らせ【iFreeNEXT NASDAQ100 インデックス】(大和証券投資信託委託)
新ファンドのお知らせ【iFree年金バランス】(同)
新ファンドのお知らせ【iFreeレバレッジ S&P500】(同)
とくに興味深いのが「iFree年金バランス」でしょう。資産配分に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオを採用するというアイデアは非常にユニーク。また、細かな点でも工夫の跡が見られるのが非常に興味深いファンドです。
「iFree年金バランス」はGPIFの基本ポートフォリオを基に、国内債券35%、外国債券15%、国内株式25%、外国株式25%の配分で運用するバランスファンドとなります。債券50%・株式50%の配分となり、しかも債券部分は国内債券をオーバーウエートした配分になりますから為替リスクも抑えた穏健な資産配分といえます。信託報酬も税抜0.159%と低廉ですので、非常に良心的なバランスファンドだと感じました。
ただし、GPIFの基本ポートフォリオでは外国株式に新興国株式が含まれているのに対して「iFree年金バランス」は先進国株式のみへの投資となります。また、各資産のマザーファンドは基本的にインデックスファンドなのですが、国内債券の部分のみ「ネオ・ジャパン債券マザーファンド」を通じたアクティブ運用が採用されていることも注意する必要があります。その意味でGPIFの基本ポートフォリオに厳密に一致させるのではなく、あくまで資産配分コンセプトとしてGPIFを参照したというふうに理解すればいいでしょう。
グローバルポートフォリオを組んでの国際分散投資を行う場合、最も難しいのは資産配分の決定です。ポートフォリオは人それぞれなので最適解はありません。だから自分で自分のポートフォリオの配分を決定できるようになれば、その段階で投資初心者は卒業のレベルだと言っても過言ではありません。言い換えると、投資初心者はなかなか自分で資産配分を決定することができないということです。そこでバランス型インデックスファンドを利用するという次善の策があるわけです。
このときに問題になるのは、バランスファンドの資産配分コンセプトにどれだけの説得力があるのかということです。その点で、時価総額加重平均やGDP比率、あるいは均等配分というのは、有効性とは別に「説得力」があったわけです。そういう説得力がないと、バランス型インデックスファンドというのは受け入れられません。そこに今回、GPIF基本ポートフォリオ型が登場しました。この資産配分コンセプトには「説得力」があります。なにしろ“お上”が採用している資産配分ですから。実際に私も初心者からポートフォリオの資産配分について相談された際には、参考例としてGPIFの基本ポートフォリオを紹介することが多い。
ちなみにGPIFは国から「名目賃金上昇率+1.7%」の運用リターンを要請されています。名目賃金上昇率は2%ぐらいが想定されていますから、平均年率3.7%での運用を目標に設定されたのがGPIFの基本ポートフォリオとなります。平均3.7%の運用目標というのは、個人の資産運用としても穏健で妥当な数字です。その点でもGPIF基本ポートフォリオというのは「説得力」がある。
また、国内債券マザーファンドがアクティブファンドであることには細かな工夫を感じました。じつはGPIFも国内債券運用に関してはベンチマークに一般的なNOMURA-BPI総合ではなく、NOMURA-BPI国債、NOMURA-BPI「除くABS」、NOMURA-BPI/GPIF Customized、NOMURA物価連動国債インデックス(フロアあり)、NOMUR‐BPI物価連動国債プラスの複合ベンチマークを採用しています。しかも実際の保有ウエートは許容範囲内ながら基本ポートフォリオからかなり乖離している。これは現在の日銀による量的・質的金融緩和によって生じているマイナス利回りの国債をできるだけ買わないための措置だと推測できます。ある意味で純粋なインデックス運用ではなく、かなりアクティブ運用に近いことを行っているわけです。
こうしたことを考えると「iFree年金バランス」が国内債券マザーファンドにアクティブファンドを選んだことも、そんなに悪い判断ではないかもしれません。ちなみにマザーファンドに選ばれた「ネオ・ジャパン債券マザーファンド」はラップ型ファンド「ラップ・コンシェルジュ」シリーズなどで採用されているものでしょう。そちらの運用報告書を見ると、直近の運用成績は参考指数であるNOMURA-BPI総合を上回るケースも多い。債券投資というのは基本的に金利に対して投資するものですから、マイナス利回りの債券を買わないというアクティブ運用には、それなりの効果がありそうです。
一方、若干の不安点として政治的な理由からGPIFの基本ポートフォリオが変更された場合に、どのように対応するのかという問題があります。そもそもGPIFの基本ポートフォリオはある意味、政治的な要因によって決定されている部分があります。「名目賃金上昇率+1.7%」という目標リターン自体が、かなり政治的要請によってもたらされたものですから。このあたりの問題をどのように評価するかも「iFree年金バランス」の評価に関わってきそうです。
こうしたことも含めて、非常に興味深いバランスファンドです。とくに資産配分をなかなか自分で決定できない投資初心者や、そもそも投資に興味がないのだけれども企業型確定拠出年金(企業型DC)などで商品を選ばなければならない人にとっては、けっこう“刺さる”商品になるのでは。その意味で「つみたてNISA」や企業型DCなどをメーンターゲットにすれば面白いかもしれません。企業型DCのデフォルトファンドの地位を狙うことも可能でしょう。そういう点も含めて、今後の動きが注目のファンドだと思います。
「iFree年金バランス」以外の新商品も悪くありません。とくに「iFreeNEXT NASDAQ100インデックス」(信託報酬税抜0.45%)はインベスコの海外ETF「パワーシェアーズQQQトラストシリーズ1」の投資信託版と言えます。NASDAQ100は情報通信・ハイテク銘柄のウエートが極めて高く、ある意味で近年の米国株式市場の特徴を最も濃厚に反映する指数です。米国株が好きな人にとってはポートフォリオの味付けとして重宝するのではないでしょうか。「iFreeレバレッジ S&P500」(信託報酬税抜0.9%)に関しては、レバレッジ型の投資信託をどのように評価するかで判断が分かれるところでしょう。信託報酬もやや高い。やはりこちらもポートフォリオの味付けに使うといったところでしょうか。