2017年10月31日

「失われた世代」の1人として、"失ったもの"を取り戻したい



私は運転免許証は持っているのですがペーパードライバー歴20年です。もちろん自家用車も所有したことがありません。ところが最近、なんだか車を運転したくなってきた。自家用車を買ってみたくなってきました。40歳を過ぎていまさらと、われながら不思議なものです。でも、その理由が少し整理できました。たぶん私にとって自動車を買ったり、運転したりすることは、「失われた世代」の1人として、"失ったもの"を取り戻したいという欲求の象徴なのでしょう。そして、そうした欲求が顕在化するような経済状態に、ようやく到達できたとも言えそうです。

私は大学卒業が2000年、大学院の修士課程を出たのが2002年ですから、まさに「失われた世代」のど真ん中。いま思い返しても、当時の経済状況は酷かった。空前の就職氷河期で、なかなか就職先が決まらず精神を病んでしまった同級生もいたくらいです。私自身もまともな就職先があるわけもなく(なにしろ文学部卒でしたから)、けっきょく29歳までフリーター生活をしていました。「どうせまともな職に就けないなら、好きなことをしよう」と考えていたのです。青臭い考えだったと思いますが、人間が追い詰められたときの防衛機制だったとも思います。

幸運なことに29歳の時(2006年)に今の勤務先に拾われて、零細企業とはいえ正社員として働くことができました。でも、当時の年収は200万円台。資産は祖父から贈与されていた関西電力の株と預貯金が数十万円だけでした。それでも安定した収入を得られるようになったことを喜び、少しずつ貯金もできるようになったのですが、今度はリーマン・ショックです。勤務先は倒産危機となり、ボーナス無し・給与カットに。収入はほとんど増えなくなります。

それでも何とかやってこれた理由は、給与収入に恵まれなかったがゆえに、真面目に資産形成・運用ということを考えることができたからかもしれません。つまり、無駄な支出を抑え、祖父がやっていたような地道な投資を含めた資産形成・運用というものを実践しようと思ったわけです。この判断は、いまのところ成功しています。最近の相場の好調の影響もありますが、資産総額は同世代の平均を超えるようになりました。たまに同じような境遇だった同級生と会うことがありますが、投資を含む資産形成をやっていない友人は、あいかわらず大した資産もなく、将来への不安だけを募らせている。そんなとき「ほんの少額でいいから、投資に資金を回してみたら」とアドバイスしてしまいます。

その意味で私は「失われた世代」の中では恵まれている方なのです。でも、やはり多くの「失われた世代」の仲間たちと同じく、多くのものを失ってきました。いまだに独身で子供もなく(これは結果的にですが)、実家住まいで親に迷惑をかけ、もちろん自家用車も持っていない。はっきり言って普通の生活をしていないという自覚があります。多くの人が20代や30代に経験するであろう「普通の生活」というものが私にはないのです。「失われた世代」というのは、たんに経済的な機会に恵まれなかっただけでなく、そういった「普通の生活」を喪失してしまった世代のことなのでしょう。

ある意味で私は「普通の生活」を諦めることで投資を含む資産形成・運用に取り組むことができたとも言える。おかげで、ここ5年ほどの景気回復の恩恵を十分に享受することができたわけです。だからこそ、いまになって"失ったもの"を取り返したいという思いが強くなる。

最近、急に自動車を運転したくなったというのも、そういうことです。40代にして若者のように運転の喜びを知りたい。あるいは、だんだんと年老いてきた両親に替わって運転してあげたいと思う。そして、やっぱり結婚もしたいと思う(もっとも、これは相手があっての話ですが)。人より10年遅れたけれども、ようやくそれが可能なだけの経済的基盤ができたと感じるようになったからです。

改めて思うのは、私のような「失われた世代」にとって資産形成・運用というのはチャラチャラしたものではないということ。それこそ絶対に負けることのできない、"失ったもの"を取り戻すための、死ぬまで続く敗者復活戦です。だから、絶対にギャンブルではないし、ギャンブルすることができないのです。

この敗者復活戦は今後も続きます。ただ、私も40代に入ったことで、これからはもう少し「貯める・増やす」ことよりも「使う」ことにウエートを置こうと思うようになりました。そうやって、少しづつでいいから、"失ったもの"を取り戻していきたいと思う。まずは車の運転から始めるように。

※ところでTwitterで「車の運転をしてみたくなった」とつぶやいたら、WATANKOさんと瓢箪鯰さんから勇気づけられるアドバイスが。なるほど、頑張ってみます。




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