2017年7月7日

毎月分配型投信を批判するのに屁のツッパリはいらんですよ



SNSなどを見ていると、いまだに金融機関関係者とおぼしきアカウントが毎月分配型投信を正当化する発言がときおり目につきます。内容はだいたいパターンがあって、「毎月分配を求めるシニア層は長期的なリターンよりも月々の安定したキャッシュフローを求めているのだから、毎月分配型投信にはそれなりの存在意義がある」というもの。このうち、「シニア層は長期的なリターンよりも月々の安定したキャッシュフローを求める」というのは、ある意味で正しい。でも、それが「毎月分配型投資にはそれなりの存在意義がある」という結論に至るところが欺瞞的なのです。そもそも、これまで毎月分配型投信が散々に批判されてきたのは「毎月分配」というコンセプトが悪いからではなく、商品が劣悪だったからです。ここに毎月分配型投信を薦める金融機関の欺瞞とご都合主義がある。その前ではどんな理屈も意味がない。屁のツッパリはいらんですよ。

毎月分配型投信については、これまでも何度か批判的なことを書いてきました。

毎月分配型投信がダメな理由―仕組みが悪いのではなく、商品が不誠実なのだ
毎月分配型投信の衰退は「投信不信」の顕在化ではなく「正常化」への第一歩

ようするに高額の信託報酬を取りながら、元本払い戻し金(特別分配金)まで出して分配金を出すという仕組みが不誠実なのです。なぜ元本を取り崩すために受益者が信託報酬を支払う必要があるのですか? 少し考えれば、これは異常なことだということが分かります。

もちろん、シニア層を中心に定期的に分配金を得て日々のキャッシュフローを良くしたいというニーズがあることは事実です。そして金融機関は、そういったニーズに応える必要もある。しかし、それは別に毎月分配型投信を使わなくても、例えば分配回数の多いETFなどを活用すれば実現可能です。私は全くの素人投資家ですが、「毎月分配金が欲しい!」という人に向けてETFを使ったポートフォリオを例示したこともあります。

毎月分配金を欲しがる人には個人向け国債とETFを薦めなさい―お薦め商品を考えてみました

それでも毎月分配型投信を正当化する金融機関関係者がいるなら、市井の素人個人投資家である私の提案を超えるメリットが毎月分配型投信に存在することを論証してもらいたいものです。しかし、それは寡聞にして知りません。

ここに毎月分配型投信を正当化する金融機関関係者の欺瞞がある。「毎月分配金が欲しい!」という顧客のニーズがあったときに、なぜ金融機関は分配回数の多いETFを薦めずに、毎月分配型投信を薦めるのですか? その提案理由を合理的に説明できるのですか? はっきり書きますが、ETFを売るよりも毎月分配型投信を売った方が金融機関にとって手数料など旨味が大きいからでしょう。それがご都合主義だというのです。そういったご都合主義を取り繕って、毎月分配型投信を正当化するどんな理屈も、しょせんは屁のツッパリです。そして、屁のツッパリはいらんですよ。

もちろん金融機関も営利企業ですから、自己の利潤を最大化しようとするのは当然でしょう。しかし、営利企業が利潤を得る反対側には、必ず獲得した利潤に相当する付加価値を取引相手に提供しなければならない。それが商いの常道のはずです。はたして現在の毎月分配型投信は、コストに見合う付加価値を受益者に提供しているのかということです。

だから、毎月分配型投信の存在を正当化しようとする金融機関関係者は、屁のツッパリみたいな理屈をこねてる暇があったら、他の金融商品では実現できない毎月分配型投信ならではの付加価値を明示することに努力すべきなのです。

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