2017年4月11日

NISA恒久化への前提条件



現行NISAに続いて2018年から新たに積立NISAがスタートするわけですが、投資家の立場からすると気になるのが、はたしてNISAはいずれ恒久化されるのだろうかということです。この点についていろいろと考えたのですが、やはりそのためにはNISAを通じての投資が国民の間で広く普及しないと難しいだろうと感じています。一時的な優遇税制と異なり、恒久的な減税には政治的ハードルがありますから、それを乗り越えるだけの“民意”が必要だからです。それこそがNISA恒久化への前提条件でしょう。

日本のNISA(少額投資非課税制度)は、英国のISA(個人貯蓄口座)をモデルに創設されました。本家のISAも紆余曲折を経て恒久化がなされていますので、やはり日本のNISAも将来的には恒久化を目指して欲しいというのは個人投資家の共通した思いでしょう。また、国民の資産形成を後押しするという観点でも、投資額上限の多寡は別として、制度の恒久化は望ましいと思います。

NISA恒久化のためには何が必要なのでしょうか。やはりそれは、NISAを通じての投資が国民の間で広く普及することが欠かせないと思う。一方、これは鶏が先か卵が先かという議論になってしまいますが、NISAが恒久化されていないから普及しないという意見もあります。これは一種の形而上学的な問いになるので、なかなか解決が難しいのです。

しかし、NISAに限らず税制というのは具体的な制度論の問題です。その観点から見れば、やはり普及が先に進まないことには、恒久化もありえないような気がします。なぜなら、現在のNISAというのは租税特別措置法に基づく制度ですが、租税特別措置というのは文字通り「特別措置」であり、期限付きが前提となる。もしNISAを恒久化するのなら、現在の租税特別措置法の枠内では不可能ですから、新たな立法が必要です。これは政治的ハードルが極めて高いのです。

なぜ政治的ハードルが高いのかと言うと、それこそ日本で投資が一般化していないから。もしNISA恒久化のための立法を試みた場合、必ず一部の国民の間から「金持ち優遇政策だ」といった批判が出るのは目に見えている。また、それを煽って政局に利用しようとする政治家も登場するでしょう。何しろ現在でも「株式投資の譲渡益・配当への課税を強化しろ」と真面目に唱える政治家が存在するぐらいですから。

ようするに現在の日本では「投資」という行為がまだ一般的でないし、なによりも「投資家」という存在も社会的に真っ当な存在として認められていない。そんな状態でNISA恒久化のための立法が簡単にできるとは思えません。かえって藪蛇で、投資収益に対する課税強化を求める世論を惹起する可能性すらあります。つまり、まだ日本にはNISAを恒久化できるだけの政治的な前提条件が整っていないのです。

しかし、もしNISAを通じての投資が国民の間に広く普及すればどうなるでしょうか。間違いなく国民の間からNISA恒久化を求める世論が生まれます。そうなったとき、初めてNISA恒久化に向けての政治的ハードルが下がる。それが、NISA恒久化への前提条件が整うということです。

そういった観点から考えると、2018年から始まる積立NISAというのは、現行NISAよりも大きな可能性を秘めているのでは。何しろ期限が制度期間20年、非課税期間20年の計40年です。投資は基本的に20歳以上でないとできませんから、40年ということはまるまる1世代。つまり、世代に限っていえば事実上、恒久化に近い施行実態となります。

仮に多くの国民が40年に渡ってNISAで運用を行った場合、40年後に租税特別措置の期限が切れるからといって制度を終了することを許容するでしょうか。間違いなく特別措置の延長、もしくは恒久化を求める声が高まるはずです。それほど租税特別措置期間20年というのは重大な意味がある。だからこそ財務省は当初、「租税特別措置期間20年などありえない」といって強硬に反対したのです。40年も特別措置を続けてしまうと、それは巨大な既得権となりますから、それを終了することへの政治的ハードルが逆に高まってしまうことが目に見えているからです。

だから、NISA恒久化を求めるなら、まずは普及させることがとても大事になる。そう考えると、NISA恒久化を求めている個人投資家は「恒久化されないからダメだ」と言ってクサすのではなく、これまで投資に関心がありながらも一歩踏み出せなかった人に制度の仕組みやメリット・デメリット、そして無理のない投資方法などを教えてあげることが大切になるでしょう。そうやってNISAを通じて投資の裾野を広げていくことが、結局はNISA恒久化への前提条件を整備することになるのだと思います。
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