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2015年2月3日

毎月分配型投信の正しさと愚かさ 1

投資信託について意見が分かれるのが毎月分配型投信の評価でしょう。投資効率の悪さから長期投資には不向きという見方がある一方で、出口戦略が明確な商品として評価する人もいます。私は毎月分配型投信について、ある種の正しさがあると認めながらも、実際に日本で販売されている毎月分配型投信には大きな問題があると考えています。

毎月分配型投信を考える際に、とくに注意するべき点は分配金が“運用益”ではないということです。普通分配金はファンドの運用益から支出されますが、特別分配金は、たんなる元本の取り崩しでしかありません。運用益と元本ともに取り崩してしまえば、単なる部分解約と同じです(このあたりは有名ブロガー「吊られた男」さんのこの記事が分かりやすくまとめてくれています)。また、普通分配金が出るだけでも複利効果を大きく放棄することになり、現在なら20%課税されますので税制面でも不利であり、長期投資には不向きです。

しかし、これだけ“不利だ、不利だ”と指摘されながらも、投資信託市場において圧倒的な人気を維持していることをどう考えるべきでしょうか。たんに大多数の一般投資家が“情弱だ”といって切って捨てるわけにはいかないような気がします。ひとつ考えられるのは、“解約”せずに資産を取り崩せることに魅力があるのではないでしょうか。例えば私の父親はすでに定年退職した年金生活者です。彼とお金の話をすると、いつも結論は「とにかく俺にはもう収入がない。いまある資産を取り崩して、どっやってしのぐかだ」と言います。そして、資産を“解約”することに一種の恐怖感を持っているようです。その点、毎月分配型なら、“解約”という主体的行為を行わずに資産の取り崩しができるので、高齢者にとっては“心理的メリット”があるのかもしれません。そういった人にいくら「自動解約サービスがあるよ」とアドバイスしても「余計なことは言わないでくれ。俺は“解約”なんかしたくない。解約すれば、それを増やす収入が俺には無いんだ」と反論されるのがオチです。その意味で毎月分配型投信は、リタイア層の心理的不安感に訴求するイノベーティブな商品だったのでしょう。

また、毎月分配型投信の数少ないメリットに、暴落が起こった時のダメージがトータルリターン面で少ないということがあります。運用益だけでなく元本まで分配金として出資者に返還しているのですから、これは当然のこと。暴落が起こっても若者なら相場の回復を気長に待てますが、高齢者は残された運用期間が少ないので複利効果を放棄してでも暴落時のリスクを低減するメリットはあるといえるでしょう。

税制面の不利についても、あまり批判はできません。無分配型でも解約時には課税されるわけで、あくまで課税繰り延べ効果があるだけです。複利効果で運用益が大きくなればその分、課税額も大きくなります。なにより税金は国民の義務ですから、あまり節税効果を声高に主張するのは下品であり、投資家に対する庶民の反感を増大させる理由でもあります。本当のお金持ちなら、税金は堂々と払うべきです(ですから私も節税効果を強く指摘するのは確定拠出年金など政府が社会保障政策として正統に用意している制度に限るように心がけています。節税効果ばかり主張するのでは、オフショア投資を勧めるのと思想的に違いがありませんから)。

そういう意味で、毎月分配型投信には一定の“正しさ”があると考えます。しかし、毎月分配型投信の正しさも、ここまでです。というのも実際に日本で販売されている毎月分配型投信には、極めて愚かで不誠実な商品があまりに多いからです。

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