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2018年8月24日
企業型確定拠出年金にも“日の光を当てる”―商品ラインアップがインターネットで公開へ
金融機関が高コストな商品ばかりをラインアップするケースがあるのではないかといった批判が一部である企業型確定拠出年金(企業型DC)ですが、このほど大きな規則変更がありました。厚生労働省が「確定拠出年金法施行規則の一部を改正する省令」を発令し、2019年7月1日から金融機関に対して企業型DCの商品ラインアップをインターネットで公開することが義務付けられます。これは非常に意味があることでしょう。そもそも企業型DCの商品ラインアップについて様々な疑念が生じる理由の1つが、情報公開がほとんどなされておらず、比較検討による客観的な評価がほとんどできなかったからです。ですから今回の規則改正は、企業型DCのあり方を大きく変える可能性があります。
今回、厚労省が出した省令は、確定拠出年金法における「金融機関等の営業職員における運営管理機関業務の兼務規制の緩和」と「事業主による運営管理機関の評価」についてのものです。既に厚労省のサイトには変更点などの説明と省令が公開されています。
兼務規制の緩和、運営管理機関の評価関係(厚生労働省)
確定拠出年金運営管理機関に関する命令の一部を改正する命令(平成30年内閣府・厚生労働省令第5号)
確定拠出年金法施行規則の一部を改正する省令(平成30年厚生労働省令第89号)
この省令によって金融機関の営業職員が確定拠出年金の運営管理機関業務の一部を兼務することが可能になります。その上で加入者にに対する忠実義務を確保するための措置が強化されました。その1つとして管理機関が加入者などに対して提示している全ての運用商品に係る情報をインターネットを利用して公表することが義務付けられます。これは画期的な動きでしょう。
そもそも企業型DCで高コストな商品が横行している理由の1つが、それぞれのプランの加入者以外は実態が分からず、まったくブラックボックスに包まれていたからです。加入者も他のプランとの比較ができないわけですから、自分が加入しているプランの商品ラインアップのコスト水準が高いのか低いのかすら分からないという異常な状態が放置されてきたわけです。
しかし、今回の省令によって加入者は自分が加入しているDCプランで提供されている商品ラインアップが他のプランと比較・評価できるようになります。そうなれば、例えば特定の資産クラスが貧弱だったり、高コストなアクティブファンドばかりをラインアップしている、あるいはインデックスファンドでも時代遅れなコスト水準のものしか提供されていないといったお粗末なプランも白日の下にさらされるわけです。当然ながら加入者からの不満も表面化するでしょうし、そうなれば運営管理機関である金融機関も対応せざるを得なくなります。
そして、こうした情報公開を基に企業型DCの実施主体である事業主に対しても、少なくとも5年ごとに運営管理機関の業務について評価を行い、委託内容について検討を加え、必要に応じて、委託内容の変更や運営管理機関の変更などを行う努力義務も課されました。ここでは、例えば特定の金融グループがかかわる商品の偏重していないか、同種の商品と比較して明らかに運用成績が劣る商品が提供されいないか、同種の商品と比較して明らかに高コストな商品がランアップされていないかなどの観点についても評価することになっています。
こうした措置によって、企業型DCも大きく変化する可能性があります。バンガードの創業者であるジョン・ボーグルはかつて、運用業界の改善に必要なのは“日の光を当てること”だと指摘しました(関連記事:『インデックス・ファンドの時代』-いま読まれるべきは「第4部 ファンドの運用について」だ)。情報公開こそが受益者の正しい判断の基盤であり、それこそが業界の自浄作用を生むということです。厚労省による「確定拠出年金法施行規則の一部改正」が目指しているのも、そういったことでしょう。いよいよ企業型DCにも“日の光を当てる”ときがきたと言えそうです。
企業型DCというのは加入者にとっては退職金や年金の一部ですから、極めて重要な老後資金です。だからこそ運営管理機関である金融機関や実施主体である事業主には真摯な気持ちで実施・運営にあたらなければなりません。ぜひ今回の規則変更をきっかけに自浄作用を発揮して欲しいものです。
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