久しぶりにスニーカーを買いました。アディダスの「スタンスミス」です。定番中の定番商品ですから「いまさら、なぜ?」と思うかもしれませんが、もちろん理由があります。スタンスミスはアッパーの素材が本革というのが基本でしたが、2021年から合成皮革に変更されてしまいました。そこで、まだ本革のスタンスミスが流通在庫として存在している間に、慌てて入手したわけです。本革のスタンスミスを手に入れるのは、いまがラストチャンスかもしれません。
スタンスミスはアディダスを代表するクラシックスタイルのスニーカー(もともとはテニスシューズ)として非常に人気があります。カジュアルスタイルだけでなく、最近ではビジネスシーンでもジャケパンやセットアップスタイルの際のカジュアルダウン(いわゆる“はずし”)アイテムとして便利なので、以前から1足は欲しいと思っていました。ただ、あまりに定番過ぎて、ついつい購入を後回しにしていたわけです。
ところが今回、あわてて購入することに。理由は、2021年から仕様が大幅に変更されたからです。スタンスミスには通常ライン品と廉価版(主にABCマートが販売しています)があり、アッパーの素材は通常ライン品は本革、廉価版は合皮が基本でした。ところが2021年から通常ライン品も素材が合皮に変更されたのです。理由は“サステイナビリティー”と“ヴィーガン仕様”です。素材を再生ポリエステルを使った合皮に変更することで、リサイクル素材の比率を高め、さらに動物由来原料を使わないようにしたそうです。
これにはどうも釈然としません。そもそも天然皮革がサステイナブルでないというのが納得できない。天然皮革は食肉の生産過程で発生する廃棄物を再利用したものですから、それこそサステイナブルな素材です。なめし工程の環境負荷が大きいとも言われますが、それならリサイクルポリエステルを使った合皮だって、ポリエステルのリサイクル工程で大量のエネルギーを消費します。また、天然皮革は生分解性がありますから、廃棄後も自然界で自然に分解されるのに対し、ポリエステルはマイクロプラスチックとなって海洋汚染を引き起こす可能性がささやかれています。
シューズとしての品質面でも本革と合皮では大きな差があります。本革は徐々に伸びるのでだんだんと着用者の足型にフィットしていきます。いわゆる“足に馴染む”という状態になることが優れた履き心地を生むのです。一方、合皮は基本的に伸びません。また、本革はしっかりと手入れすれば経年変化によって風格が増すのに対し、合皮は加水分解による経年劣化が避けられません。それこそ合皮のメリットは、雨など水に強いので手入れが楽なこと、そして安価なことぐらいでしょう。
さらに納得がいかないのが、素材を本革から合皮に変更したにもかかわらず、価格はほとんど据え置きになっていることです。これでは“サステイナビリティー”を隠れ蓑に、原料のレベルを下げることで利益率を高めているといううがった見方をされても仕方がないのでは。そもそも新型コロナウイルス禍でファッション関連企業はどこも収益が低下していますから、大義名分の下に原料を安価なものに切り替えたのではと勘繰りたくなります。
こうしたことを考えると、まだ本革のスタンスミスが流通在庫として残っているうちに、なんとか手に入れたいと思いました。そこでネットショップなどを探したところ、ちょうど2020年のシーズン企画物の流通在庫がセール販売されているのを発見(ちょっとクセのあるカラーリングだったのでショップによっては売れ残っていたのでしょう)。すぐさまポチッたわけです。
実際に商品を手にすると、やはり本革製は良い。合皮とは品位がまったく異なります。履き心地も柔らかく、これがさらに足に馴染んでいくのが楽しみ。大人が履くスニーカーは、これぐらいの上質感がないと、どうしても貧乏くさく見えてしまうのです。手入れをしっかりとして、可能な限り長く使っていこうと思います。
もしスタンスミスを買おうと思っている人は、本革製を探してみてはいかがでしょう。まだ今なら一部店頭やネットショップに流通在庫品が残っているので、手に入れることができます。そして、本革のスタンスミスを手に入れるのは、いまがラストチャンスかもしれないのですから(Amazonなどでも、まだ本革製のスタンスミスが見つかります)。
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