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2019年12月17日

投資信託の自動取り崩しは今後の必須サービス―楽天証券が定率取り崩しを導入へ



日経新聞によると、楽天証券が2019年12月29日から投資信託の自動取り崩しサービスを開始するそうです。

楽天証券、投信の取り崩しサービス 高齢者向け(「日本経済新聞」電子版)

投信の自動取り崩しサービスは既にSBI証券が導入していますが、楽天証券もこれに続くことになります。さらに注目なのが、楽天証券は定率取り崩しもできるようにするとか。これは定額取り崩ししかできないSBI証券と比べて利便性が大幅に高まります。こうなるとSBI証券はじめ他のネット証券も定額・定率いずれも可能な自動取り崩しサービスを充実させることが予想されます。今後、投資信託の自動取り崩しサービスは日本の金融機関にとって必須のサービスになるのではないでしょうか。
【追記】
楽天証券に続いてセゾン投信、ありがとう投信も自動取り崩しサービスを導入しました。

楽天証券、セゾン投信が投信の「定期売却サービス」を発表、ありがとう投信は拡充(モーニングスター)

現在、日本では「つみたてNISA」の登場などで投資信託の積立による資産形成が少しずつ普及しつつあります。また、すでにある程度の資産を持っているシニア層でも投資信託による運用を行っている人は少なくありません。こうして積み上げられた資産は、いずれ老後資金として取り崩されていくことになります。この時に重要になるのが自動取り崩しサービスです。

なぜ保有している投資信託を少しづつ換金する自動取り崩しサービスが重要なのかといえば、個人投資家は高齢者になっても運用を完全に止めてしまうということは現実問題としてあり得ないからです。ほとんどの人は運用しながら必要な分だけを定期的に取り崩していきたいと思っているだろうし、投資セオリーとしてもその方が合理的。日本人の寿命が延びる中、運用しながら取り崩すことで資産寿命を延ばすことが重要だからです。

そして定期的な取り崩しには定額取り崩しと定率取り崩しがあります。定額取り崩しは定期的に一定額を換金することで老後のキャッシュフローを安定させることができます。これはすでにSBI証券が「投資信託自動売却サービス」として実装していました。

一方、定率取り崩しは資産総額の変動に応じて換金額も変動しますが、より安定的な取り崩しとなるので資産寿命を延ばすことができるとされています。今回、楽天証券は定額取り崩しだけでなく定率取り崩しも導入するそうですから、いよいよサービスの完成度が高まります。

定額取り崩しと定率取り崩しのどちらが良いのかというのは投資家個人の考え方や資産状況、ライフスタイル、キャッシュフローの状況次第ですから一概には言えません。しかし、少なくとも両方の選択肢があることが重要なのです。その意味で楽天証券が両方の取り崩し方式に対応した自動取り崩しサービスを導入するのは極めて大きな進歩です。

投資信託の積立による資産形成が普及すれば、それに合わせて取り崩しサービス充実のニーズが高まるのは必然。実際に早くから投信積立を実践してきた人の中には、アーリーリタイアなどで資産形成段階から資産取り崩し段階に移行する人も出てきました。こうしたことを考えると今後、金融機関にとって自動取り崩しサービスは必須のサービスとなるでしょう。楽天証券などネット証券は、ここでも先陣を切っているいるわけです。

また、投資信託の自動取り崩しサービスの普及にはもうひとつ大きな意味があります。これまで“月々の家計のキャッシュフローを良くしたい高齢者向け”というお題目の下で販売されてきた毎月分配型投資信託は、その歴史的役割を終えることになるでしょう。とくに定率取り崩しが普及すれば、「運用しながら取り崩す」という毎月分配型投信の役割は完全にとってかわられます。なにより毎月分配型投信の信託報酬が比較的高水準であることの理由を合理的に説明できなくなるでしょう。

また、元本口数を減らさずに純粋なインカムゲインだけを分配金として定期的に受け取りたいという投資家に対しては、ETFが最適解となります。ここでも毎月分配型投信の役割は終わりました。今後、日本では無分配の投資信託を自動取り崩しサービスで少しづつ換金する、あるいはETFを保有してインカムゲインだけを分配金として定期的に受け取るというった選択肢が可能になるわけです。それは投資家が自分の投資戦略を換金段階でも主体的に決定できるようになるということです。それは日本人の資産運用が、より成熟した段階に入ることを意味します。

【ご参考】
定率取り崩しの重要性について早くから指摘していた識者の1人がフィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長です。例えば以前にもこのブログで消化敷いた『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』では定率取り崩しとすることで収益率配列リスクを抑えることを解説してます。

『貯蓄ゼロから始める安心投資で安定生活』―生活実態に即した資産形成・運用ノウハウを完全網羅




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