水瀬ケンイチさんの新著『マンガ お金は寝かせて増やしなさい』を献本いただいたのでさっそく読みました。オリジナル版のエッセンスはそのままに、マンガが併載されたことでスラスラ頭に入ってきます。しかも、前著の見所だった「涙と苦労のインデックス投資家15年実践記」は、その後の経緯も加わり「涙と苦労のインデックス投資家20年実践記」に増補されています。これがまったくの御馳走。日本ではなぜか「インデックス投資でお金持ちになった人はいない」となどと言ってインデックス投資を批判する人が定期的に登場するのですが、もうそうは言わせない内容になっています。
前著も含めて、『お金は寝かせて増やしなさい』は実際にインデックスファンドの積立投資を実践してきた個人投資家だからこそ書くことのできた内容に価値があります。だから本書は単なる「インデックス投資概論」ではなく、実に硬派な「インデックス投資原論」となっているということを前著の書評で書きました。
こうした見方は漫画版でも変わりません。それどころか、漫画があることで、より初心者には分かりやすい内容になっています。その意味で本書は、『お金は寝かせて増やしなさい』の優れた梗概本になっているし、それでいて肝心のエッセンスはそのままです。おそらく、まったくの初心者がインデックス投資について知ろうと思えば、漫画版を先に読んだ方が良いかもしれません。ちなみに私の妻は運用についてまったく何も知らないのですが、「漫画なら読めそう」と言っていました。そういう人は世の中に多いと思います。
そんな中で、個人的に注目したのが増補された「涙と苦労のインデックス投資家20年実践記」。ちょっと見逃してしまいそうなのですが、ここでさりげなく水瀬さんの現在の運用成績がグラフ中に記載されていて、よく見ると総資産額が1億円を突破しています。なんと、インデックス投資だけで「億り人」の仲間入りをしていた! そう思っていたら、水瀬さん自身も少し照れ臭そうにブログでカミングアウトしていました。
インデックス投資で億りました(梅屋敷商店街のランダム・ウォーカー(インデックス投資実践記))
これは本当に素晴らしいことだと思う。1億円という金額が素晴らしいのではありません。20年という年月をかけて一定の資産を築いたという「過程」が素晴らしいのです。インデックスファンドの積立投資を、途中にリーマン・ショックのような暴落があったとしても、コツコツと続けていればいずれ一定の資産を形成できることを身をもって証明してくれました。
日本ではなぜか「インデックス投資だけでお金持ちになった人はいない」などと言ってインデックス投資を批判する人が定期的に登場します。こうした批判は、インデックス投資の成果とは20年、あるいは30年といった長期運用の結果だということ、そして日本で個人投資家がインデックス投資を実践できるようになってまだ20年程度しか経っていないという事実を無視しています。つまり、これまで日本で「インデックス投資だけでお金持ちになった人はいない」というのは、まだそういった結果が出るような段階ではなかっただけです。
そして今回、日本でインデックス投資を実践する個人投資家のパイオニア的存在だった水瀬さんが、ひとつの成果を見せてくれました。なんども言いますが、金額が成果ではありません。20年間、積立投資を続けたという「過程」と、その結果として一定の資産を築いているという事実が意味ある成果なのです。これでもう、「インデックス投資でお金持ちになった人はいない」とは言わせないということになります。
インデックス投資を取り巻く環境はここ10年で大きく変わりました。水瀬さんがインデックス投資を始めた20年前と比較して、もっと簡単に、便利に、そして低コストでインデックス投資ができるようになっています。そうした中、新たにインデックス投資を始める人も増えました。水瀬さんたち第一世代のインデックス投資家に続いて、10年超の積立投資歴を持つ第二世代もどんどん増えています。つまり、これからいよいよインデックスファンドの積立投資で一定の資産を築く人たちがどんどんと登場するはずです。
そういった意味でも、水瀬さんに続いてインデックス投資を実践している人、最近になってインデックス投資を始めた人、そしてこれからインデックス投資を始めようと考えている人にとって、本書はとても勇気の出る1冊なのです。
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