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2019年1月14日

“絶対王者”と“挑戦者”の位置―「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018」雑感



「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018」の表彰式が13日に開催されました。今回は結婚式や新居への引っ越しの準備などが忙しく参加できませんでしたが、参加者によるTwitter実況などで大いに楽しんだ次第です。すでに結果も公式ページにアップされています。

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018」公式ページ

今回の投票の結果にも、いろいろと考えさせられました。ラインクインしたファンドはいずれも良質な素晴らしいファンドばかりですが、とくに上位入賞ファンドに対する受益者の“想い”には、微妙な色合いの違いが感じられ、非常に興味深かったのです。また、日本の個人投資家を取り巻く環境の変化もランキングに大きな影響を与えていることも無視できません。

今回の「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018」の結果は以下のようになりました。

第1位 eMAXIS Slim先進国株式インデックス
第2位 <購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド
第3位 eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
第4位 楽天・全米株式インデックス・ファンド
第5位 eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)
第6位 セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
第7位 Vanguard Total World Stock ETF(VT)
第8位 eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
第9位 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
第10位 eMAXIS Slim全世界株式(除く日本)

下馬評でも最大の注目点だった「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」と「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」の頂上決戦は「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」が制しました。また、上位10ファンド中、「eMAXIS Slim」シリーズから5本がランクインするなど、シリーズとしての人気も圧倒的です。

これは何を意味するのかというと、やはりインデックスファンドにとって「コストの安さ」というのは“絶対的な正義”であるという厳然たる事実です。インデックスファンドというのは運用精度や経費など若干の品質差を除くと基本的に同じ指数に連動するファンドは同じ運用成績となりますから、どうしてもコストの安いファンドが優れたファンドとなるというのは当たり前のことなのです。

加えて「eMAXIS Slim」シリーズの場合、「常にカテゴリー最安値に追随する」というマーケティング戦略があります。そこにはコスト引き下げの「根拠」や「自立性」という面で合理性を欠いた“大人の事情”も垣間見え、ゆえに不信感を抱く個人投資家も存在するのですが、それすら跳ね返す力が「コスト最安値」という“絶対的な正義”にはあるのです。FOY2018の結果は、それを証明しました。まさに「eMAXIS Slim」シリーズは、現在の日本のインデックスファンド分野における「絶対王者」の位置に立ったことを証明したのがFOY2018だったのだと思います。

一方、かつてFOYを3連覇しながらも、その後は2年連続で2位に地位に甘んじた「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」も、その立ち位置が明確になったと思います。そのことに気づかされたのは、結果発表のページで紹介されている投票者のコメントからでした。「eMAXIS Slim」のコメントと比べて、明らかにコメントの熱度が高いのです。これはあくまで個人的な印象ですが、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ」シリーズを購入している受益者は、コストの安さに加えて、実際のニッセイAMの戦略とは無関係かもしれないけれども、プラスアルファの“何か”を求めているのではないでしょうか。それは「純資産残高が増加すれば信託報酬も低下する」というインデックスファンドの大原則を阻害ししてきた日本の運用業界の悪しき“大人の事情”に対する「挑戦」だと思う。

そういうことを考えると、「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」が2年連続で2位となり、とくに今回は「絶対王者」となった「eMAXIS Slim」の後塵を拝したということは、かえって「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」の「挑戦者」としての立ち位置を明瞭にしたのではないでしょうか。プロレスで例えるならば、それはジャイアント馬場やジャンボ鶴田に対する天龍源一郎、アントニオ猪木や長州力に対する前田日明の位置です。リング外の力もフル活用する「絶対王者」に「挑戦者」が勝つことは稀ですが、その代わりに「挑戦者」に対してファンが熱くなるのは当然なのです。

インデックスファンドにおける「絶対王者」と「挑戦者」という位置が明確になった今回のFOYですが、こうした構図が生まれること自体が、その分野の活性化につながっていることも強調しておきたいと思います。いまや2強体制となったわけですが、両者の競争が今後も続くことが日本でインデックスファンドが普及するために欠かせないと思います。さらに付け加えると、やはり第三勢力の台頭があれば、さらに盛り上がることになる。その意味で今回はランク外となった「たわらノーロード」シリーズや「iFree」シリーズ、「三井住友・DC」シリーズなどの今後の逆襲にも期待したいと思います。

さて、今回のFOYでもうひとつ印象に残ったことがあります。それは世界株式インデックスファンド(米国株式インデックスファンドも世界株式に占める米国株の比率を考えると一種の世界株式インデックスファンドだと解釈できます)の人気とバランス型インデックスファンドの復権です。この背景には日本の個人投資家を取り巻く環境の変化があると思う。つまり「つみたてNISA」の存在です。「つみたてNISA」は売買で非課税枠を消費してしまうためリバランスが難しい。このため1本で国際分散投資できるファンドが求められることになります。低コストな世界株式インデックスファンドやバランス型インデックスファンドは、まさに「つみたてNISA」によってその存在価値が改めてクローズアップされたのではないでしょうか。

そして、超低コストなバランス型インデックスファンドに混じって、「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」が6位に食い込んだことも特筆すべきです。やはり低コストだけではないファンドの価値というものが厳然と存在していることの証拠です。それが何なのかを研究することが、他の運用会社にとって危急の課題ではないでしょうか。なぜなら、低コスト競争の行き着く先には、必ず低コストを超える価値の提供という新しい競争の地平が待っているからです(米国ではすでにバンガードなどがその領域に入っています)。そのヒントは、11位にランクインした「ひふみ投信」や15位となった「結い2101」にも見出すことができるでしょう。そして、この領域を問題化するためにはファンドだけでなく受益者自身のレベルが問われるようになるはずです(そういった思いを込めて、私は今回のFOYであえて「ひふみ投信」に1票を投じ、コメントを書きました)。

こうした問題系を明らかにしたという点でも、今回のFOYも非常に意義深いものになったと思います。やはりこうしたイベントは尊いのです。最後に、これだけのイベントを手弁当で続けてきた実行委員の皆さんの努力に感謝したいと思います。また、Twitterなどでリアルタイム発信してくれた参加者の皆さん、どうもありがとう。とても楽しめました。次回はぜひ表彰式と懇親会に参加したいと思います。

【補足】
「ところで、お前はどのファンドに投票したのだ」という人がいるかもしれません。今回、私は「<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド」と「eMAXIS Slim新興国株式インデックス」そして「ひふみ投信」に投票しました。投票理由は以前に書いているので、そちらをご覧ください。

「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the Year 2018」に投票しました



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