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2018年8月13日

トルコリラの暴落で焼かれた人は改めて為替や投資について勉強し直した方がいい



トルコリラが急落しています。トルコリラは、もともと脆弱な通貨の代表格でしたが、ここにエルドアン大統領による独裁的な政治・経済運営や米国との対立激化による交易条件悪化が、いっきに“メルトダウン”を引き起こしたと言えそうです。

トルコ・リラ急落続く、トランプ大統領が関税引き上げの一撃加える(ブルームバーグ)
トルコ通貨急落、年初から40%超…対米悪化響く 欧州は警戒強める(産経新聞)

このため日本でもFXでトルコリラをロング(買い)していたり、あるいはトルコリラ建て債券などを保有している個人投資家の間で大きな損失が出ているようです。こういう話を聞くと、いつも不思議な気持ちになります。というのも、日本の個人投資家がトルコリラのような脆弱な通貨をFXでロングしたり、債券を買う合理的な理由がまったく理解できないから。そして改めて思うのは、トルコリラへの投資で焼かれた人は、為替や投資について勉強し直した方がいいのではないかということです。

トルコリラというのは日本ではマイナー通貨です。ところが個人投資家の間では妙に人気があって、今回のような暴落が起こると大変な問題になったりする。例えばTwitterなどを見ていても興味深いツイートが散見されます。


日本人が、やたらとトルコリラをロングしているという状態は、はっきりいって異常です。なぜなら、トルコという国は恒常的に経常収支の赤字が続いている国ですから、何もなくてもトルコリラという通貨は下落傾向になる。これは国際資本循環構造から予測できる傾向ですから、本来であればショート(売り)ポジションを取る日本人投資家がいてもおかしくない。ところが実態はロング一辺倒。結局、目先のスワップ収入に眼がくらんで、不自然な一本足打法になっているわけです。

トルコリラ建て債券でも同様です。債券の利回りというのは、その通貨の信用と将来的な下落予想を織り込んでマーケットで値付けされるものです。だから外国債券の場合、高利回りだからといって別にお得でも何でもない。単に高利回りに見合う通貨下落の可能性が内包されていると理解するべきです。だから本当に債券の仕組みを理解している人は、高利回りの債券ほど警戒する。ところが日本の個人投資家は、そのあたりの認識が実に甘いから、安易に高利回りに飛びつく。だから広瀬隆雄さんなんかも厳しく指摘しているわけです。

やはり、安易にトルコリラのような高金利通貨に投資して大損してしまった人はもう一度、国際資本循環構造や金利平価説、購買力平価説などに基づく為替理論を勉強し直した方がいい。さらに言うと、とくにFXのような通貨取引に関しては、そもそも「投資」ですらないということを強調したいと思う。こうした点については、このブログでも何度も指摘し、参考書なども紹介してきました。

FXなど通貨取引が個人投資家の資産形成に適さない理由(附・参考図書紹介)
FXで資産形成できない理由

もちろん、高金利通貨が多い新興国への投資が全てダメというわけではありません。実際に私個人は新興国投資大好き人間なので、新興国の株式と債券にかなりの金額を投じています。しかし、常に心掛けているのは、絶対に特定の新興国に集中投資してはいけないということ。新興国も内実は様々ですから、経常収支の赤字が減っている国もあります。そういった国の通貨は上昇基調となります。だから、新興国への投資こそ徹底した分散が必要不可欠。この点からもFXのように特定の新興国通貨への集中・レバレッジ投資や、特定の新興国通貨建て債券への集中投資というのは避けなければなりません。そういうことも含めて、トルコリラで焼かれた人は改めて為替や投資について勉強し直した方がいいわけです。

それにしても今回のトルコリラの暴落は、想像以上に世界経済に影響を与える可能性があると思う。トルコという国は日本人が想像する以上に欧州経済に深く組み込まれていますから、まずは欧州経済に飛び火する公算が高い。そうなれば、世界経済も無傷では済まないでしょう。これまで堅調な成長を続けた世界経済に大きな変調をもたらす可能性があります。だから個人投資家はトルコリラ暴落で焼かれた人を見て「ざまー」と笑ってはいられなくなるのでは。改めてシートベルトを締め直すときだと思います。

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