低コストなインデックスファンドシリーズ、<購入・換金手数料なし>シリーズを組成するなどでインデックス投資家の間で評価の高いニッセイアセットマネジメントですが、4月に社長が交代していました。新たに就任した赤林冨二社長のインタビューがモーニングスターに掲載されています。
<トップインタビュー>「長期の運用を通じてお客さまの信頼に応える」=ニッセイアセット赤林社長(上)(モーニングスター)
<トップインタビュー>「長期の運用を通じてお客さまの信頼に応える」=ニッセイアセット赤林社長(下)(同)
業界紙などで定番の新社長インタビューなので今後の抱負などが語られているのですが、ひとつ興味深い発言がありました。ニッセイAMとして近々、フィデューシャリー・デューティー宣言を行うために準備を進めているそうです。じつに素晴らしいことだと思います。ニッセイAMには、ぜひ宣言を行って、それに基づいた商品開発と運用を続けて欲しいと思います。
インタビューの中でニッセイAMの赤林社長は次のように語っています。
フィデューシャリー・デューティーについても、商品開発、運用、説明責任など各分野において、改めて社内体制や取り組み内容の検証を行っているところです。また、近々にフィデューシャリー・デューティー宣言を行う予定です。お客さまの信頼があってこそ、長期投資も実現でき、長期的に良好なパフォーマンスを提供することによってこそ、お客さまからの信頼も高まるものです。受託者責任を全うするためには、お客さまの信頼をつなぐ取り組みを循環させることが重要であると考えています。その言や良し。これはブログでも何度か書いていますが、現在の金融庁が金融機関に求めているフィデューシャリー・デューティーの遵守という考え方は、たんなる投資家保護の観点ではありません。金融機関が受益者の利益を最大化することで、受益者は金融機関との取引を拡大することになり、それが金融機関の利益最大化につながるという考え方です。だから赤林社長の「お客さまの信頼をつなぐ取り組みを循環させることが重要」(強調は引用者)という理解は正しい。
また、赤林社長の発言に説得力があるのは、近年のニッセイAMの行動が具体性を持っているからでしょう。例えば昨年、<購入・換金手数料なし>シリーズの信託報酬を大幅に引き下げました。DIAMアセットマネジメントの「たわらノーロード」シリーズとの競争という面があるにしろ、信託報酬が高止まりしていた日本において大手運用会社が既存ファンドの信託報酬を大きく引き下げるという行動は、ひとつの事件でもありました。
ニッセイAMのこうした行動は、十分にフィデューシャリー・デューティーに適ったものです。あとはこれを会社全体に広げていけばいい。そのためにも運用会社としてフィデューシャリー・デューティー宣言を行うことは意味のあることです。宣言を行うということは、それを実行できたか、できなかったかを評価されるということであり、実行できなかった場合は批判されるということだからです。
こうやって大手の運用会社がフィデューシャリー・デューティー宣言を行うことで、宣言している運用会社と宣言していない運用会社に対して、投資家の見方も変わってくることでしょう。正式にフィデューシャリー・デューティーを宣言しない金融機関は信用できないというレベルにまでなれば、日本の金融業界もぐっと魅力的になるはずです。だから、ニッセイAMにはぜひ有言実行で頑張って欲しいと思うのです。
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