カテゴリー

2016年5月17日

三井住友FG、りそなグループ、MUFGがフィデューシャリー・デューティー宣言を発表―これからは実績で競争する時代に



前回のエントリーで、ニッセイアセットマネジメントがフィデューシャリー・デューティー宣言を行う予定だということを紹介したのですが、まったくうかつなことに、さらに大きな動きがすでにあったことを見逃していました。なんと三井住友フィナンシャルグループが3月29日にグループとしてフィデューシャリー・デューティー宣言を発表していました。

「フィデューシャリー・デューティー宣言」の公表について(三井住友フィナンシャルグループ)

さらに3月23日には、りそなグループも実質的なフィデューシャリー・デューティー宣言である「お客さまの資産形成サポートの更なる強化に向けた取組みについて」を発表しています。

お客さまの資産形成サポートの更なる強化に向けた取組みについて(りそなホールディングス)

そして5月16日、三菱UFJフィナンシャルグループがフィデューシャリー・デューティー宣言を発表しました。

「資産運用分野におけるMUFGフィデューシャリー・デューティー基本方針」について(三菱UFJフィナンシャルグループ)

いずれもグループとしての宣言ですから、傘下の銀行、証券会社、運用会社すべての行動規範となる宣言です。すでに2月に宣言を発表したみずほフィナンシャルグループと合わせると、日本のメガバンク系金融機関・運用会社の大部分がフィデューシャリー・デューティーに則った事業運営を行うことを正式に宣言したことになります。これはスゴイことです。そして、宣言を発表した以上は、今後は実績で競争する時代に突入しました。宣言に則ってどんな行動を見せてくれるのか大いに期待したいところです。

今回のフィデューシャリー・デューティー宣言のどこがスゴイのかというと、先行していたみずほFGと同様に、たんに事業会社単独ではなくグループ全体での宣言だということです。これによって、各金融グループ傘下の金融機関も宣言に基づく行動規範を遵守する義務(努力義務ではなく実行義務)が課せられるのです。ちなみにMUFG、三井住友FG、りそなグループそれぞれ宣言の対象となる金融機関・運用会社は次のようになっています。

【MUFG】
三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券、カブドットコム証券、三菱UFJ国際投信、日本マスタートラスト信託銀行、エム・ユー投資顧問

【三井住友FG】
三井住友銀行・SMBC信託銀行、SMBC日興証券、SMBCフレンド証券、みなと銀行、関西アーバン銀行(このほか、三井住友アセットマネジメントはずでに単独で宣言済)

【りそなグループ】
りそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行、りそなアセットマネジメント

じつに壮観です。これにみずほFGの各社(みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、みずほ投信投資顧問、新光投信、DIAMアセットマネジメント)を加えると、メガバンク系の銀行、信託銀行、証券、運用会社のほとんどを網羅することになります。

各社ともそれぞれの言葉でフィデューシャリー・デューティーの遵守を宣言しているわけですが、フィデューシャリー・デューティーの実践においてキモになるのは「手数料の合理性」「利益相反の排除」「ベストを尽くす義務」です。そのあたりについて今回の3グループの宣言には次のような言葉が記載されています。
「系列関係にとらわれることなく、お客さまの資産形成に資する商品を選定するよう努めます。」
「リスクを抑えた商品や手数料の低い商品等も多く取り揃え、投資のご経験の少ないお客さまを含めたより多くのお客さまにご利用いただきやすい商品ラインアップのご提供に努めています。」(MUFG)
「これから投資を始めるお客さまや、リスクを抑えた投資を行いたいお客さまのニーズにお応えするため、比較的手数料率の低い商品や、低リスクの商品、積立型の商品等のラインナップを拡充しております。」
「系列に関係なく、幅広い投資運用会社・保険会社から質の高い商品を取り揃えております。」(三井住友FG)
「銀行都合や系列にとらわれず、全てのお客さまに満足いただけるお客さま本位の商品の品揃えに努めます」
「販売手数料設定に係る社内基準の見直し」(りそなグループ)
こういったことを宣言した以上は、かならず実行しなければなりません。フィデューシャリー・デューティーというのは、それほど強い拘束力を持つ行動規範だということを各社とも理解して欲しいものです。そして、私たち受益者・消費者はフィデューシャリー・デューティーを宣言した金融機関が、それを実行できているかどうかをウオッチすることも大事です。もし実行できていないと判断すれば批判するべきなのです。

とはいえ、ますはメガバンクがそろってフィデューシャリー・デューティー宣言を発表したことを賀するべきでしょう。今後の実行に大いに期待したい。そして、これからはフィデューシャリー・デューティーに基づいた行動の実績で日本の金融機関が競争し、勝負する時代になって欲しいものです。現在、金融リテラシーの高い人は銀行や証券会社をバカにする傾向が強いのですが、そういった悪評も少しづつでも払拭されていくはずでです。それは金融機関にとっても受益者・消費者にとっても良いことであり、それこそ金融・運用業界の健全な発展につながる好循環を生み出すことになるのではないでしょうか。

【関連記事】
みずほFGが「フィデューシャリー・デューティーに関する取組方針」を発表ーついにメガ金融グループの一角が動いた!



【スポンサードリンク・関連コンテンツ】