水瀬ケンイチさんの新著『改訂版 お金は寝かせて増やしなさい』を献本いただいたので紹介したいと思います。旧版に最新のデータをアップデートした内容となっており、これからインデックス投資を始めようと考えている人にとっては非常に有益な参考書です。同時に、既にある程度インデックス投資を続けていた人によっても「それって、あるあるだよね」と思わず膝を打つ記述が多く、楽しんで読むことができる1冊です。
水瀬さんの新著は、2017年に刊行された『お金は寝かせて増やしなさい』の改訂版ですが、その後に刊行した『マンガ お金は寝かせて増やしなさい』の内容も盛り込まれており、1冊でお得な内容になっています。私は旧版とマンガ版も拝読しており、その際にブログで感想を紹介しました。改訂版でも基本的に同じ感想を持っているので、関心のある方はそちらの記事を読んで欲しいと思います。
その上で、改訂版を読んで新たに印象に残った点を挙げたいと思います。まずひとつは、第3章でNISAやiDeCoなどに関する説明が最新情報にアップデートされていることです。とくにNISAは新制度によって大幅に拡充されており、これをどのように活用するのは非常に気になるところ。ここで水瀬さんは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の使い分けに関して、後者はこれまで積立投資をしていなかった人が早期に投資額を積み上げることができるようにする「つみたてキャッチアップ枠」として金融庁が構想しているとい裏話を紹介していました。これはなかなか興味深かったです。
もうひとつ、第4章で「新しいインデックスファンドが登場したら乗り換えるべきか?」という疑問に対して、積み立てるファンドを変更するだけで、既に保有しているファンドは保有を続ける方が良いと指摘しています。現在はインデックスファンドの低コスト化が進んだため、さらにてコストなファンドが新規設定されたとしても、そのコスト差は僅かしかありません。このため古いファンドをむやみに売却して新しいファンドの乗り換えようとすると、古いファンドの信託財産留保額や課税など乗り換えコストを取り返すのに非常に長い年月がかかってしまい、あまり得にならないと指摘しています。こういうアドバイスは非常に実践的であり、いわゆる“鍛えの入った一手”だと改めて感じました。
そして本書の最大の見所は、やはり第5章「涙と苦労のインデックス投資家20年実践記」(実際は22年実践記でした)でしょう。旧版では15年実践記だったものに、その後の実体験が追加されました。そして、この7年間にも“コロナ・ショック”やロシアによるウクライナ侵攻と世界的なインフレ高進といった経済危機が押し寄せていることです。とくに“コロナ・ショック”の衝撃は大きく、著者もかなり動揺したようです(私自身もこの時、保有しているインデックスファンドがすべてマイナス評価となり驚いたことを思い出しました)。しかし、水瀬さんは“リーマン・ショック”を乗り越えてきた経験を思い出し、冷静に投資を続けます。その結果、株価は急速に回復し、翌年にはついに資産額が1億円の大台を突破します。結局、大きな下落の際にも投資を続けたことがリターンを押し上げたわけです。さらにインフレ対策で世界的な金利が上昇した2022年に海外資産が大きう下落したのですが、同時に円安が進んだことでダメージが緩和されること経験もしています。「通貨の分散」の効果が出たわけです。
水瀬さんが実践していることい特別なことは何もありません。どんなときも冷静さを失わずバイ&ホールドを続ける。そして積立によって国際分散投資を続けているだけです。これらはどんな投資の教科書にも載っている内容であり、いわば投資の常識です。しかし、常識を20年以上続けた個人投資家は意外と少ないのです。だからこそ水瀬さんの20年の実体験の重みが圧倒的な説得力を持つ。マンガ版の紹介で私は「水瀬さんに続いてインデックス投資を実践している人、最近になってインデックス投資を始めた人、そしてこれからインデックス投資を始めようと考えている人にとって、本書はとても勇気の出る1冊」と評しました。今回、改訂版を読んで、その説得力にやっぱり「勇気の出る1冊」だと改めて感じたのでした。
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