2024年から始まる「新NISA」に向けてインデックスファンドの低コスト競争が再び過熱してきました。既に多くのブロガーさんが紹介しているように、野村アセットマネジメントが7月10日付で「はじめてのNISA」シリーズ(愛称:Funds-i Basic)5本を新規設定します。
低コストインデックスファンド「はじめてのNISA」シリーズ(愛称:Funds-i Basic)を新規設定(野村アセットマネジメント)
とくに注目は全世界株式インデックスファンドでしょう。大幅な低コストを実現しており、現在のところカテゴリー最安値を更新します。こうした超低コストファンドの登場は個人投資家にとって喜ばしいことです。ただ、少し気になる点もあるのでした。
今回、野村AMが新規設定するインデックスファンドとその信託報酬は以下のようになります。
とくに注目は全世界株式インデックスファンドである「はじめてのNISA・全世界株式インデックス(オール・カントリー)」でしょう。なんと信託報酬は0.05775%(税抜)。一気にカテゴリー最安値を更新しました。野村AMの「新NISA」に向けた意気込みがよく分かります。
もっとも、野村AMが必死になるのは当然です。新NISAは非課税運用期間が恒久化されたことで、インデックスファンドの主戦場になることが確実だからです。しかもNISA口座はファンドの売買で非課税投資枠を消費するため、スイッチングが事実上できません。つまり、ファンドにとって先行者利益が圧倒的になります。ですから、ここで圧倒的な商品力を持つファンドを投入しなければ、もはや挽回は不可能なわけです(だからこそ、野村AMに限らず、ここにきてインデックスファンドの低コスト競争が再び過熱したわけです)。
こうした超低コストインデックスファンドが次々と登場することは、個人投資家にとって非常に喜ばしいことです。やはりインデックスファンドなどパッシブファンドはコストの低さが最大の付加価値であり、商品力の源泉です。新NISA口座で購入するファンドの有力候補に躍り出たと言えるでしょう。
ただ、少しだけ気になることもあります。それは、日本株と先進国株、新興国株に投資するインデックスファンド4本のも新規設定されたこと。これらは野村AMが既に運用している「Funds-i」シリーズの各ファンドと事実上同一ファンドです。つまり、今回も日本のインデックスファンド業界の通弊である“ファンドの新規設定によって低コストを実現する”という方法が採られており、既存ファンドの受益者を置き去りにするという問題が生じました。そして、金融庁も問題視している事実上同一ファンドの“一物二価問題”が発生しているわけです。
「Funds-i」シリーズの受益者からすれば、やはりファンドの新規設定ではなく、「Funds-i」シリーズの各ファンドの信託報酬を引き下げて欲しかったはず。そういった既存受益者の存在を軽視するように見えてしまったことが、せっかくの超低コストファンドの登場に影を落とすのです。
もっとも、この問題は日本の投資信託が抱える極めて構造的な問題が要因いあるので、野村AMを一方的に攻めることはできません。実際にほとんどの運用会社が同様の問題を抱えています。ただ、新NISAのスタートを前にしてファンド、そして運用会社の競争が一段と激しくなっている今だからこそ、そろそろ構造的問題にメスを入れることを真剣に考える時期にきているように感じます(この構造的問題については稿を改めて論じたいと思います)。
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