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2022年11月7日

GPIFの2022年7~9月の運用成績は-0.88%―市場環境悪化の中でも防御力発揮

 

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の2022年度第2四半期(7~9月)運用状況が発表されたので定例ウオッチです。2022年7~9月の期間収益率は-0.88%、帳簿上の運用損益はマイナス1兆7220億円でした。市場運用開始来の収益率は年率+3.47%となり、運用資産額は192兆968億円となっています。


世界的な金利上昇と株価下落の影響を受けています。ただ、市場環境が悪化する中で-0.88%の下落にとどまったのは健闘と言えるでしょう。やはり国際分散投資による防御力を発揮しています。

7~9月は依然として世界的なインフレ高進と、それを抑えるために各国中央銀行が利上げに動いたことで債券価格が下落しました。金利上昇は株式市場にも逆風ですから、当然ながら株価も下落しています。

実際にGPIFのポートフォリオの資産カテゴリー別騰落率を見ると、外国株式-0.49%、国内株式-0.84%、外国債券-1.54%、国内債券-0.79%となり、軒並み下落しています。こういった厳しい市況下で、全体では-0.88%の下落で済んだというのは、それなりに健闘したと見るべきです。

こうしたことは、年金運用や長期投資について理解している人ならほとんど納得できると思うのですが、やはり日本ではあいかわら短期的にマイナスになっただけでマスメディアが騒ぐという毎度の光景が散見されました。例えば次のような報道があります。


たしかにGPIFの運用がマイナスとなるのは3四半期連続です。しかし、そのこと自体にほとんど意味はありません。なぜなら年金運用というのは超長期運用が基本となるので、四半期ベースの騰落率は、ほとんどノイズに過ぎないからです(それをあえて開示しているのはGPIFの情報公開に対する誠実さの表れです)。

さらに、3四半期連続のマイナスだとしても、その内実は1~3月が-1.10%、4~6月が-1.91%、そして7~9月が-0.88%です。たしかに3四半期連続のマイナスですが、リーマンショックの時とは下落のレベルがまったく異なる。ところがテレ朝NEWSの記事は騰落率を伝えずにマイナス金額だけ報じている。それで“リーマンショック以来”と見出しを打つのですが、それは表層的な現象が共通しているというだけで、ほとんど意味がありません。

つまり、「3四半期連続の赤字 リーマンショック以来」という見出しは、ニュースとしてまるで意味のない内容を取り上げるだけのつまらない煽り見出しです。はっきりいって、日本のマスメディア(とくにテレビ)お得意の“年金ポルノ”といっていいでしょう。

ただ、最近はこういった“年金ポルノ”もだいぶ飽きられてきたようです。かつてのようにセンセーショナルに取り上げられる頻度が下がっているように感じます。それは、徐々にですが国民の多くに年金運用とはどういったものなのかが理解され始めたからかもしれません。それもまた、GPIFの地道な情報公開活動の成果でしょう。

結局、バカなな大衆をだまそうとしているメディアが、だんだんと大衆からバカにされるという状況が生まれているのかもしれません。そういう不健全な状況を避けるためにも、メディアには、ぜひ短期的な期間収益額のプラス・マイナスを言い立てるだけでなく、そもそも年金運用とは何なのかという本質的な認識に立つ報道をしてもらいたいものです。




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