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2022年9月12日

“0か100か”思考は幼稚―現代的かつ実践的な「財産三分法」を

 

先日、ひろゆきと荻原博子さんの論争に対して「ひどい対談」だとこのブログで書きました。なぜひどいと感じたのかというと、どちらも“0か100か”思考が強すぎて、なんとも幼稚だと思ったからです。その点、昔の人の方がよほど合理的に考えていて、例えば伝統的な資産形成戦略に「財産三分法」というのがあります。改めて思う語は、いまこそ現代的かつ実践的な「財産三分法」を考えるべきでしょう。

ひろゆき・荻原論争にも表れていたように、投資や資産形成について議論する際にいつも紛糾するのが、余剰資金をまずは「現預金」(国債を含む)に回すべきなのか、リスク資産に「投資」すべきなのかという点です。さらにリスク資産の中身に対しても「株式」(株式に投資する投資信託を含む)ではなく、「不動産」の方が良いという指摘がなされます。

こうした議論がモメる理由はいつも同じで、だいたい喧嘩している人は「現預金」「株式」「不動産」のいずれかを過剰に評価し、その他の資産に資金を投じることを「効率的でない」などと言ってクサすわけです。しかし、よくよく考えてみればこれはおかしな話です。「現預金」「株式」「不動産」はいずれも性質が異なります。

例えば現預金は流動性に優れ、価格変動リスクなない代わりにインフレ耐性が弱い。株式は価格変動リスクが大きいが、インフレ耐性と流動性に優れます。「不動産」は株式よりも価格変動リスクが小さいとされ、インフレ耐性も比較的あるのですが、流動性が低い。それぞれ一長一短があるのだから、単純に優劣をつけることができません。

それなのに、特定の資産だけを過剰評価し、それ以外を全否定するのは“0か100か”思考が過ぎる。ようするに幼稚なのです。本来は投資家個人の投資目的や目標にあわせて、これら3資産をバランスよく組み合わせるのが本筋なのです。そして、そうした投資手法は、昔から「財産三分法」といって、資産形成の伝統的な戦略です。いま必要なのは「現預金か、株式か、不動産か」で三者択一することではなく、いずれにも余剰資金を振り分ける現代的かつ実践的な「財産三分法」について考えることでしょう。

例えば、住宅ローンを払っているなら、それは十分に「不動産」への投資です。同時に少額でもいいから株式にも投資し、そして貯金もすればいい。あるいは「一生賃貸で暮らす」と決めて「不動産」への投資はしない人もいるでしょう。その場合は、老後の家賃支払いに備えて、現在の余剰資金を「現預金」と「株式」に多く振り分ける必要が出てきます。また、実家の土地・建物など不動産の相続が予定されている人は、やはり将来の相続税支払いに備えて現在の余剰資金から多く「現預金」で用意しておく必要が生じます。

つまり、「財産三分法」というのは、「財産三均等法」ではないということがポイントです。「現預金」「株式」「不動産」のそれぞれにどれだけのウエートを置くのかは、個人の経済状況やライフスタイルによって様々だからです。場合によっては「財産二分法」でもいい。しかし“0か100か”思考で資産形成を考えるなということです。

こうした先人の知恵と比べると、「現預金か、株式か、不動産か」などという議論は幼稚です。そして現実は、多くの人々が自分なりの「財産三分法」を実践しているはず。例えば住宅ローンを払いながら、勤務先で企業型確定拠出年金に拠出していたり、個人でiDeCoに加入したり、つみたてNISAを使うなどで少額から「株式」に投資し、そして現預金も持っています。それが現代的かつ実践的な「財産三分法」なのです。




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