SBI証券がネット証券として初めて600万口座を達成したことを記念し、大胆な施策に打って出ました。株式売買の際の手数料を実質ゼロ化する「ネオ証券化」を推進するとのことです。
SBI証券は既に2020年10月から1日の約定合計額に対して手数料を課す「アクティブプラン」で現物取引、信用取引(制度信用)、信用取引(一般信用)それぞれ100万円の合計300万円までを手数料無料としていました。
これに加えて2021年4月10日からは未成年口座の売買手数料を月間1万円を上限にキャッシュバックし、20~25歳の契約者の売買手数料もキャッシュバックによって実質無料化することになります。そのほか口座開設後3カ月間の手数料無料化や単元未満株の売買手数料をキャッシュバックするキャンペーンも実施します。
証券会社は、売買の際に取引所に「場口銭」と呼ばれる手数料を支払う必要があるので、投資からの売買手数料を無料化してしまうと、場口銭の負担がまるまる持ち出しになります。ですから、売買手数料無料化というのは、極めて思い切ったサービスなのです。
今回、SBI証券がこうした思い切った施策に踏み切った目的は非常は明白でしょう。手数料ゼロ化の中心が未成年口座と20~25歳の契約者ですから、未成年口座や若年層の投資家をいっきに取り込んでしまおうというのが狙いだと考えられます。
そもそも証券口座というのはいちど開設してしまうと、なかなか変更されません。口座閉鎖に手間がかかる上に、保有している株式や投資信託を別の証券会社に移管する手続きが面倒だからです(複数の証券口座を使い分けるような人は、一部の投資マニアだけです)。
そう考えると、手数料ゼロ化で未成年口座と若年層の投資家の囲い込みが成功すれば、SBI証券にとって極めて大きな意味があるでしょう。店頭営業が主体の大手証券の口座保有者の高齢化が進んでいることとは対照的に、将来に向けた大きな布石になります。
こうした手法で若年層を囲い込むというのは営業手法としては極めてオーソドックス。例えばクレジットカードの業界では昔から「ヤングゴールドカード」というものがあり、29歳以下の契約者に格安の年会費でゴールドカードを発行し、30歳以降にゴールドカードへと更新して通常のゴールドカード会費を取るという手法があります。SBI証券の「ネオ証券化」というのも同様の手法と言えるでしょう。
いずれにしてもSBI証券は手数料の安さやサービスの充実度から見てもネット専業証券の中ではトップクラスですから、未成年口座や若年層の投資家は素直にネオ証券化の恩恵を目当てに口座開設しても、ほとんどデメリットがありません。
SBI証券がこうした大胆な施策に打って出たことで、追いかける楽天証券など他のネット専業証券も黙ってはいないでしょう。今後、「ネオ証券化」がネット証券全体に波及する可能性があります。その意味でも、今回のSBI証券の試みは大いに評価できます。そして、若い投資家にとっては、なんとも恵まれた時代になったものです。
【ご参考】
SBI証券はネットから無料で簡単に口座開設できます。⇒SBI証券
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