日興證券やバークレイズで活躍し、現在は投資教育家として知られる岡本和久さんがFacebookで非常に考えさせられる投稿をしていました。今年4月1日で「証券人生50年」を迎えた岡本さんは、「50年のレッスンは『長期投資』と『分散投資』だった」という言うのです。こうした実感は非常に重みのあるものに感じます。
岡本さんが慶応義塾大学を卒業して日興証券に入社したのが1971年4月1日ですから、今年でちょうど50年が経過したことになります。証券人生50年の中で様々な出来事があったとして、Facebookに次のような文章を投稿していました。
今日は2021年4月1日。私が学校を卒業して証券界に入って50周年です。思い起こせば色々とありました。入社した年にニクソンショック、73年のオイルショック、そしてトリレンマから省エネ、省力努力で輸出主導の経済回復、第二次オイルショックも、プ...
岡本 和久さんの投稿 2021年3月31日水曜日
もう一つ注目すべきは、50年間の日米の株価推移を比較した部分でしょう。日経平均は50年で約12倍になりました。一方、ダウ平均は36倍。ただし円ドル為替の変動を考慮すると11倍程度です。つまり、日本株も米国株も50年タームで見れば、ほぼ同じような上昇率となり、年率約5%の成長となります。
このようにほぼ互角の上昇率だった日米の株価ですが、チャートの形は正反対。前半は日本株が圧倒的にリードし、米国株は低迷しています。ところは後半は米国株の時代となり、日本株は失われた30年です。これは何を意味しているのでしょうか。それは50年というタームで見ても、国・地域によって上昇するときもあれば低迷するときもあるという当たり前の事実です。
だから岡本さんは「この50年のレッスンは、色々な悪材料は次から次に発生して相場も乱高下するけどずっと保有すれば年率5%程度のリターンを得られた、そして、日米に分散投資していればそのリターンを安定的に獲得できたということ」と看破しました。これは非常に重みのある言葉です。
例えば、もし50年前に米国株だけに投資していた人がいたとします。きっと最初の25年間で、米国株の低迷に嫌気がさして投資を止めてしまったかもしれません。逆に日本株だけに投資をしていた人は、後半の25年のどこかで、やっぱり日本株の低迷にあきれ果て、投資を止めてしまったかもしれません。そして、日米の株を半分ずつ保有していた人は、安定的に年率5%の成長を享受できたのです。これこそ国際分散投資の効能でしょう。
もっとも、50年前に個人投資家が国際分散投資することは簡単ではありませんでした。しかし現在は、だれもが簡単に全世界に分散投資できるようになっています。それだけ個人投資家にとって恵まれた環境が整備されたわけです。ところが、簡単に国際分散投資ができる時代になったのに、なぜか「日本株はオワコン」「新興国株は不要」「米国株に集中投資でOK」といった発言が個人投資家の間で少なからず登場します。
こうした発言に対して、なんとなく賢しらな印象を持ってしまします。本当に人は次の25年、あるいは50年先を簡単に見通せるのでしょうか。それよりも岡本さんが「証券人生50年」で実感したことの方が、圧倒的に重みがあるのでは。その点でも、岡本さんの投稿は、いろいろと考えさせられました。
ちなみに株価チャートと一緒にアップされている岡本さんの入社時の辞令の写真も面白い。1971年の日興證券の初任給は基本給2万9300円、職務給1万5700円で、計4万5000円だったわけです。サラリーマンの初任給も50年で上昇しました。しかし、株価の上昇と比べればかなり控え目です。サラリーマンの悲しい現実を思い知らされます。
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