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2020年4月8日
緊急事態宣言が出された今こそ確認したい新型コロナウイルス感染拡大の現状
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によって、ついに日本も緊急事態宣言が発令される事態となりました。いろいろと不安になることが多いのですが、やはりこういうときこそ客観的なデータを確認することが大切だと思うのです。その点で非常に便利なサイトを見つけました。札幌医科大学のフロンティア医学研究所ゲノム医科学部門が日本と世界各国の新型コロナウイルス感染者数と感染死者数のデータを非常に分かりやすくグラフ化するサイトを公開しています。
人口100万人あたりの新型コロナウイルス感染者数・死者数推移のグラフ化 サイト公開のお知らせ(札幌医科大学フロンティア医学研究所・ゲノム医科学部門)
人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移【国別】(同上)
人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】(同上)
これを見ると、日本における新型コロナウイルス感染拡大の現状がよく分かります。
グラフはWHOが公式に公開しているデータから人口100万以上の159カ国のデータを基に人口100万人あたりの感染者数・死者数の推移を国別にグラフ化したものです。説明にあるように国別の感染者数は人口の大小に影響されるため、単純比較できません。そこで人口100万人あたりの統計で見ることで初めて正確な比較をすることが可能となるわけです。また、グラフは縦軸が対数となっていますから、感染者数や感染死者数の増加が指数関数的増加段階にあるのか、それともピークアウトているのかを視覚的に読み取ることができます。
それでは実際にグラフを見て感じたことをメモしておきます。4月6日段階で主な欧米とアジアの国・地域の人口100万人あたりの感染者数は以下のようになります(中国はちょっと例外的なので除きました)。
スペイン 2796.70人
イタリア 2132.72人
ドイツ 1138.54人
フランス 1079.73人
米国 1020.24人
英国 704.21人
トルコ 320.95人
イラン 693.22人
韓国 200.59人
シンガポール 223.75人
台湾 15.24人
日本 28.89人
全世界 159.65人
これを見ると、欧米が非常にひどい。それに対して日本はかなり感染者数が少ない部類に入ります。また、台湾の優秀さも光ります。ただ問題はグラフの傾きです。日本は感染者数こそ少ないですが、依然として指数関数的増加状態にあることが分かります。一方、感染拡大初期に厳しい状態となった韓国は、ここにきてグラフの傾きが緩やかになっていますから、明らかにピークアウトの兆しを見せていることが読み取れます。そして、日本は今後、欧米のように指数関数的増加が続くのか、韓国や台湾のようにピークアウトに向かうのかの分岐点にも見えますから、ここで緊急事態宣言が発令されるというのはよく分かる話です。
もちろん、感染者数は各国の検査体制や防疫戦略の違いによって大きな差が生じます。なかには「日本は意図的に検査数を抑えることで実態を隠蔽している」という人もいます。そこで今度は感染死者数を確認します。感染者数と違って感染死者数は簡単には隠せません(たとえ隠せたとしても、それによって水面下で新型コロナウイルスによる肺炎死が激増していたら、院内感染も含めていまごろ日本の医療機関はどこもパニック状態になっているはずです)。4月6日段階での主な国の人口100万人あたり感染死者数は以下のようになります。
スペイン 265.60人
イタリア 262.79人
ドイツ 17.12人
フランス 123.76人
米国 29.14人
英国 72.68人
トルコ 6.81人
イラン 42.90人
韓国 3.63人
シンガポール 1.03人
台湾 0.21人
日本 0.58人
全世界 8.85人
やはりスペインとイタリアを筆頭に欧州が非常に厳しい状態にあることが分かります。そんな中、感染者数こそ多いものの感染死者数を抑えることに成功しているドイツがひとり気を吐いています。アジアもイランを除くと全体として健闘しています。そして、やはり日本も感染死者数を抑えることに成功していると言えるでしょう。グラフの傾きも他国と比較して緩やかな方ですから、やはり今のところ爆発的な感染拡大をなんとか抑えることができていると考えるのが妥当です。これは、医療関係者の努力に加え、限りのある医療リソースを感染者を見つける検査ではなく重症者に対する治療に重点的に充てる戦略がいまのところ成功していると考えていいと思います。そして、やはりこのタイミングで緊急事態宣言を出すことで、感染拡大をさらに抑え込もうと決断するのも、やはりひとつの見識に思えます。
もちろん私は医療の専門家ではありませんから、ここで書いたことは素人の印象論にすぎません。現実はもっと厳しいとも感じます。ただ、少なくとも前提となるテータはひとつの“事実”です。現在、テレビやインターネットでは様々な情報が飛び交い、なかには正しいデータに基づかない流言飛語も少なくありません。そんなものに惑わされて必要以上に不安になるぐらいなら、もっと客観的なデータを直に見るべきです。同じ印象論でも、“事実”から導き出される印象は全く変わってくるでしょう。それが科学的認識力ということです。皮肉なことですが、新型コロナウイルスは個々人の科学的認識力の程度をもあぶりだしました。
緊急事態宣言の下、個々人がいままで以上に真剣に感染拡大防止への取り組みを実践しなければなりません。その際にパニックにならないためにも、客観的なデータを虚心坦懐に読んで判断できるような市民の科学的認識力が問われるのです。その一つとして、今回紹介したデータもぜひ眺めてみてはいかがでしょうか。
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