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2019年7月13日

マルキール先生は勉強をやめない―『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 』の翻訳が出ます



インデックス投資について研究するなら、必ず読んでおかなければならない基本文献の1冊がバートン・マルキール博士の『ウォール街のランダムウォーカー』です。その最新版である第12版の翻訳『ウォール街のランダム・ウォーカー<原著第12版> 株式投資の不滅の真理』がこのほど刊行されます。第1版が出たのが1973年ですから、40年以上も世界中のインデックス投資家の間で読まれ続けているというのは凄いことです。まさに基本文献と呼ぶにふさわしい本ですが、それ以上に驚くのが、常に内容のアップデートが続けられてきたことでしょう。マルキール先生は勉強をやめない。これこそ学者の正しい姿です。最新の第12版でも博士の新たな知見が盛り込まれています。

今回翻訳が出る第12版の原書『A Random Walk Down Wall Street: The Time-Tested Strategy for Successful Investing』は2019年1月に刊行されています。



2019年の1月といえば、世界的にビットコインなど暗号通貨(仮想通貨)が大きな話題となっていた頃です。日本でも連日のように暗号通貨の交換所のテレビCMが流れ、「寝ているだけで朝起きたらお金が増えている」といった名言(迷言)も登場しました。その後、暗号通貨は不正流出事件などもあって大暴落し、まさに現代の“チューリップ・バブル”を目の当たりにしたわけです。

こうした最新情勢をマルキール博士は見逃していません。第12版では改定内容として第4章「21世紀の歴史」に仮想通貨の話題を3項ほど追加しているそうです。本書はインデックス投資研究であると同時に、優れた「投機ブームとその崩壊史」の研究でもあるので、今回の暗号通貨ブームに対してマルキール博士がそのような評価を下しているのかは興味深いものがあります。そのほかのアップデートとしては、第11版から追加された第11章「「スマート・ベータ」は本当に役立つか」が拡充されました。

私は既に第10版と第11版の翻訳を持っているのですが、やはりこうした増補改正があるとついつい最新版を読みたくなります。なにより年を重ねても研究の歩みを止めないマルキール先生の学問の姿勢に感心する。また、日本では投資についての学術的な研究が個人投資家の投資行動に大きな影響を与えるケースが少ないだけに、なおさら米国における投資文化の懐の深さについても考えさせられるのです。

日本でも確定拠出年金の加入者増加や「つみたてNISA」の登場で少しづつですがインデックス投資が必要になる土壌が整備され始めました。なので、これから確定拠出年金や「つみたてNISA」などで資産形成に取り組もうとしている人は、やはり本書のような学術的な裏付けのある基本文献を読んでおいた方がいいのです。いまさら言うのもなんですが、やはり本書はお勧めの1冊です。



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