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2019年6月17日
公的年金に不安を感じるなら「ねんきんネット」で受給見込額を試算しよう
年金デモが実施されるなど、ここにきて公的年金への不安が再び高まっています。なぜ、これほどまで公的年金に対して不安を感じるのか。その最大の要因は、自分がリタイアした時、いったいどれだけの金額を受給できるのか分からないからでしょう。そこで、公的年金に不安を感じるならば、まずは日本年金機構が運営している「ねんきんネット」を使って自分の年金受給額を概算することをお勧めします。おおよそでもいいから自分の将来の受給額が分かれば、いろいろな対策を立てることもできます。そうすれば少しでも不安が解消されるはずです。
「ねんきんネット」は、インターネットを通じて自分の年金の情報を手軽に確認できるサービスです。IDを取得すれば「年金記録の確認」「将来の年金見込額の確認」「電子版「ねんきん定期便」の閲覧」「日本年金機構から郵送された各種通知書の確認」を24時間いつでも行えます。とくに役に立つのが「将来の年金見込額の確認」。これを使えば、ある程度は将来の年金受給額を概算できます。
試算でいちばん簡単なのは「かんたん試算」というコーナー。いまの保険料で60歳まで払い込んだ場合、65歳からの受給額がいくらなのかを試算できます。もちろん若い人なら将来的に収入が増えて保険料も上昇し、受給額も増加しますから、あくまで参考値となります。しかし中高年以上の人なら、いまからそれほど収入は増えないという保守的な条件で試算することになるので、最低限の受給額レベルがどの程度になるのか明確になります。さらに保険料の支払い年齢や受給開始年齢など試算条件を変更することで、様々なケースでの受給見込額を算出することもできます。
そこで私も実際に試算してみました。まず60歳まで現在の収入と保険料で加入し、65歳から受給したケース。この場合、私の受給見込額は月額12万7110円、年額152万5330円でした。厚生年金加入者としては非常に少ないです。なぜかというと、私は29歳までフリーター生活を送っていたので厚生年金の加入期間が短いからです。また、国民年金も3カ月の未納期間があります。これは大学生だったころにうっかり払い忘れていて、そのまま追納可能期間を過ぎてしまったからです(私も20代の頃はいい加減だったのです)。
これでは60歳でリタイアするのは、なかなかしんどそうです。ただ、私の勤務先は60歳定年後も嘱託契約で65歳まで働くことができます。この場合、厚生年金の加入期間は65歳までとなります。そこで厚生年金の保険料を65歳まで払うとして試算し直しました。すると受給見込額は月額14万6482円、年額175万7797円となりました。5年長く働くだけで、年金受給額がかなり増えました。
さらに今度は受給開始年齢を遅らせて、70歳から年金を受け取るケースを試算してみました。この場合の受取額は月額20万8005円、年額249万6072円となりました。これならかなり余裕を持った老後生活ができそうです。それにしても受給開始を繰り下げると受給額が大幅に増えることがよくわかります。しかも公的年金は終身年金ですから、長生きリスクに対する威力は抜群です。また、結婚している人なら世帯収入としては妻の年金受給額も加わります。日本の公的年金制度というのは結婚している世帯を前提に作られているのです(逆に単身者には厳しい制度であることが問題だといえるでしょう)。
もちろん、こうした試算はあくまで参考にすぎません。今後の収入・保険料は変化するからです。実際に私の場合も60歳までは定期昇給によって収入・保険料は増加しますし、逆に60歳以降の雇用延長では収入が大幅減となり保険料も減少するので受給額を下振れさせます。また、受給水準自体もマクロ経済スライドによって引き下げられる可能性があります。それでも、大まかな年金受給額の水準をイメージすることは可能です。そして、具体的にイメージできることが非常に大切。なぜなら、それをもとに対策を考えることができるからです。
例えば受給見込額を見て、自分が望む老後の生活水準に対して年金の受給額が少ないと感じるなら対策は二つしかありません。ひとつは生活水準を見直して、年金だけで生活できるライフスタイルを築くこと。もう一つは望む生活水準を実現するために必要な金額に不足する部分を自助努力によって用意することです。これはどちらは良い悪いという話ではありません。それぞれの生活観・人生観の問題だからです。
だから、老後に向けた自分の生活観・人生観を見つめなおすためにも公的年金の受給額を具体的にイメージしておくということが重要になります。そして、具体的な金額をイメージすることができれば不安も和らぐはずです。だから、年金に対して不安を感じている人は、ぜひ「ねんきんネット」で自分の受給見込額を試算してください。そして、それをベースに自分に合った年金戦略を立てて欲しいと思います。それは、自分がどういった生活・人生を送りたいのかということを具体的に考える機会になるでしょう。それは不安を解消すること以上に意味あることです。
【ご参考】
公的年金は加入・受給ともに様々な“戦略”を駆使することで受給額を増やすことが可能です。こうした年金戦略を網羅的に解説し、さらに個人型確定拠出年金(iDeCo)など自助努力としての私的年金の活用方法まで紹介しているのが田村正之さんの『人生100年時代の年金戦略』です。年金について関心のある方は一読をお勧めします。
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