4月21日に金融庁主催の「つみたてNISAフェスティバル2018」が東京で開催されました。私は大阪在住なのでさすがに参加できませんでしたが、参加したブロガーさんによるTwitterでの実況で楽しむことができました。どの内容も興味深かったのですが、とくに印象的だったのが「はじめての投資!おススメの一冊ベスト10」です(私も投票しました)。結果を見て一番感じたのは、投資初心者が求めているのは理論だけでなく「実体験のリアリティ」だということです。
イベントの様子は、いつものように安房君がリアルタイムでツイートしてくれました。
⚡️ "つみたてNISAフェスティバル 2018/4/21"https://t.co/2ZqgOQD4tN— 安房 (@an_bow) 2018年4月21日
安房君のツイートにもあるように「はじめての投資!おススメの一冊ベスト10」は以下のような結果になっています。
1位:水瀬ケンイチ『お金は寝かせて増やしなさい』
2位:チャールズ・エリス『敗者のゲーム』
3位:バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー―株式投資の不滅の真理』
4位:藤野英人『投資家が「お金」よりも大切にしていること』
5位:山崎元、水瀬ケンイチ『全面改訂 ほったらかし投資術』
5位:山崎元『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』
5位:竹川美奈子『臆病な人でもうまくいく投資法 お金の悩みから解放された11人の投信投資家の話』
8位:カン・チュンド『忙しいビジネスマンでも続けられる 毎月5万円で7000万円つくる積立て投資術』
8位:山崎元『全面改訂 超簡単 お金の運用術』
8位:山崎元『お金に強くなる! 』
このランキングのどこが印象深かったというと、有名な研究者や評論家、カリスマファンドマネージャーなどの著書を押しのけて、個人投資家である水瀬ケンイチ氏の著書が1位に選ばれたことです。これはなにを表しているのか。それは、やはり投資においても「実体験のリアリティ」というのは何物にも替え難いということです。
水瀬氏の本は、インデックス投資の理論面の解説も極めて高度な内容を丁寧に解説しているのですが、それ以上に注目を集めたのが15年にも及ぶインデックス投資の実践記でした。具体的な投資金額までを明らかにして、何度も相場の大暴落を経験しながら資産を増やしてきた様子が紹介されています。この実体験に基づく記述が異様なリアリティと迫力を生んでいます。
この「実体験のリアリティ」こそ、投資初心者が求めているものでしょう。なぜなら、もし長期投資というものが“生涯にわたって行うもの”だと規定できるなら、人は一生のうち1回しか長期投資を経験できません。つまり、本物の長期投資は「トライ&エラー」ができないのです。これが多くの人を長期投資に踏み出すことを躊躇させてしまう。「もし、生涯にわたっての長期投資で損をしたら、自分の投資人生は失敗ということになる」という感情を起こさせる(投資において「出口戦略」が盛んに話題になる理由でもあります)。
こうした不安を克服するには何が必要か。理論だけでは不十分だと思う。人は理論だけでなく感情にも左右される生き物だかです。このときに参考になるのはが、すでに投資を実践している個人投資家の経験にほかなりません。他人の体験を通じて、投資についてよりリアルに理解することができる。これこそが水瀬氏の本が支持を集める理由でしょう。
そして、これが日本で投資が普及するために必要な「成功体験」のもう一つの意味でもあります。成功体験はなにも自分の体験だけではないはず。自分と同じような個人投資家がどのように投資を実践して現在に至っているのかを知ることもまた「成功体験」をリアルに感じる方法です。「すこしの事にも、先達はあらまほしきことなり」(「徒然草」五十二段)。
投資を実践している人の体験を追体験するのに水瀬氏の本は非常に優れた1冊ですから、これから「つみたてNISA」でインデックス投資を始めようとしている人は、ぜひ読んでみてください。そして、もうひとつ注目したい本があります。それは、今回のランキングでも5位に入っている竹川美奈子さんの『臆病な人でもうまくいく投資法 お金の悩みから解放された11人の投信投資家の話』です。この本もまた、市井の個人投資家がどのように投資を実践しているのかをリアルに伝えている。こういう本がもっと出ればいいと思う。だから竹川さんにはぜひ続編として『臆病な人でもうまくいく投資法part2』を書いて欲しいと思っています。
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