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2017年5月28日
クラウドファンディングに参加しました
最近は新しい金融の仕組みが様々に登場し、個人でも簡単に資金を投じることができるようになっています。そんな新しい金融の仕組みとして注目されているひとつが、クラウドファンディングでしょう。ちょっといろいろと思うところがあって、あるプロジェクトのクラウドファンディングに参加してみました。
クラウドファンディングは、不特定多数の人がインターネットなどを経由して他の人々や組織に資金提供や協力などを行う仕組みです。中身は様々ですが、種類としては金銭的リターンのない「寄付型」、金銭的リターンが伴う「投資型」、プロジェクトが提供する物品や権利を購入することで支援を行う「購入型」に大別できます。今回、私が参加したプロジェクトは次の案件です。
大宅壮一文庫を存続させたい。日本で最初に誕生した雑誌の図書館(Readyfor)
大宅壮一文庫と言えば、大宅壮一が収集した明治・大正から平成までの貴重な雑誌を保管している図書館です。通常の書籍と違って雑誌というのは収集・保存が極めて難しいものです。ですから歴史的に価値のある雑誌から、芸能・グラビア雑誌、女性週刊誌まで17万冊に及ぶコレクションが所蔵されている大宅壮一文庫は空前絶後の存在であり、その価値は少しでも文学研究や文化・社会研究、ジャーナリズムについて関心のある人なら言を俟ちません。
しかし、極めて文学・文化的価値が高いにもかかわらず、やはり他の文化施設と同様に最近では財政難から存続が危ぶまれていました。そこで今回、クラウドファンディングで資金を調達し、事務局職員の給与や施設・備品の補修や購入、今年度に改修作業を行なっている雑誌記事索引データベースシステムの改修費・維持運営費に充てることになりました。今回のプロジェクトは「購入型」であり、3000円、1万円、3万円、5万円、10万円の各出資額に応じていくつかのリターンが提供されます。
私は大学院で日本近代文学・思想を専攻し、いちおう修士(文学)の学位も持っています。会社勤めをするようになってからは仕事で文学研究に触れることはほとんどなくなりましたが、それでもまだ日本近代文学会と日本文学協会の会員であり、"市井の文学研究者"の端くれだという意識もあります(実はリタイア後には研究を本格的に再開することを目論んでいます)。
だから今回のプロジェクトの存在を知ったときに、これは参加するしかないと思ったわけです。大宅壮一が収集したコレクションは、なんとしても守らなければならない。それは少しでも文学やジャーナリズムに関係した者からすれば、大切な共有財産ともいえるものだからです。そして、そう感じているのは私だけではない。プロジェクトの目標金額は500万円でしたが、募集締め切り前で目標金額をクリアし、現在も資金が集まり続けています。これも心強く感じました。
今回、クラウドファンディングという仕組みの面白さにも気づきました。私は金銭的なリターンを目的とした「投資型」のクラウドファンディングに対しては慎重な見方をしているのですが、「寄付型」「購入型」のクラウドファンディングというのは面白い。今回のプロジェクトは「購入型」ですが、実態は一種の寄付です。しかし普通に寄付を集めるよりも効率的に資金が集まっているようです。やはりインターネットを通じて資金を投じるという方法の手軽さ、そして「寄付」のようにかしこまった感じをさせずに「購入」という形でお金を払うというやり方が、寄付文化の貧弱な日本には合っているのかもしれません。そう考えると、「寄付型」「購入型」のクラウドファンディングというのは、なかなか興味深いやり方です。
いずれにしても今回のプロジェクトで大宅壮一文庫が存続できるようになれば素晴らしいことです。私個人としても久しぶりに有意義なお金の使い方ができたと大満足しているのです。
ちなみに、大宅壮一については猪瀬直樹さんの実録小説『マガジン青春譜―川端康成と大宅壮一 』が圧倒的に面白い。
大宅壮一と川端康成は同じ大阪・茨木中学の出身。その二人の青春時代を対照的に描きながら、大正時代の文壇・ジャーナリズム界の実相と時代精神を活写しています(菊池寛の巨人ぶりが印象的)。ある意味で猪瀬氏の最高傑作では。関心のある人は、ぜひ一読をお勧めします。
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